YASUSHI WATANABE.COM

Blog

optimistic thinking

コーチング

2014.10.14

楽観的になる:精神を鍛えるABC思考法とは?

渡邉 寧 | 株式会社かえる代表取締役

■メンタル問題


「また仕事で怒られた。私はこの仕事向いてない」

「夫と/妻と上手く行かない。もう一緒にやっていけない」


人間、誰でも失敗します。失敗して落ち込み、精神的に辛くなることもあります。

世の中を見渡すと、人によって凹む度合いに差があることに気づきます。メンタルが弱く失敗から中々立ち直れない人が居る一方で、失敗してもそこから素早く立ち直るメンタルが強い人がいます。

このメンタルの強さの個人差はどこから生まれるのでしょうか?また、メンタルは精神を鍛えることによって強化することが出来るのでしょうか?

■悲観的思考と楽観的思考

つよい子を育てるこころのワクチン」という本があります。ポジティブ心理学を提唱したアメリカの心理学者マーティン・セリグマンの著書です。もともとは、子供にポジティブ思考を身に着けさせる方法論を説いた本です。ただ、以前の記事(「コーチングおすすめ本:厳選10冊」)でも書きましたが、この本は大人の精神を鍛える方法論を考える上でも役に立ちます。

ある事実を目にした時、それにどのような解釈を加えるか、人は選択することが出来ます。

冒頭の例で言えば、「仕事で怒られた」というのは「事実」ですが、そこから「私はこの仕事向いてない」と考えるのは「解釈」です。解釈の選択肢は無数にあります。例えば、「今回の失敗は悪条件が重なったせいだ」と考えることもできますし、「失敗するごとに成長してるはずだ。次は頑張ろう」と考えることもできます。

にも関わらず、事実を必ず悪いように解釈する人が居ます。例えば、「自分には才能が無い」「回復不能だ」「どう頑張ってもダメだ」というような解釈です。こうした解釈を悲観的な考えと呼びます。

マーティン・セリグマンは、人が悲観的な考えを持つ原因の25%は遺伝によるものだと指摘しています。しかし、別の言い方をすれば残りの75%の原因は遺伝以外なわけです。セリグマンは、悲観的な考えが子供のころからの成長の過程で身に付いた「学習性無気力」に起因していると主張しています。

「学習性無気力」とは、セリグマンが1960年代に犬の実験を元に発表した心理学の概念です。長期にわたって自分ではどうにもならないストレス環境に置かれると、人はその状況から逃れようとする努力すらしなくなる、という現象を説明した概念です。

幼少期には、親の助けを借りながら自分で課題を解決する成功体験を数多く必要とします。「自分で出来た!」という体験が自己効力感を養い、何事も為せば成るという楽観的な考えをはぐくみます。幼少期は精神を鍛える非常に重要な時期です。しかし、この成長プロセスが何らかの原因によって阻害されると、学習性無気力となります。「どうせ自分には出来ない」という悲観的な考えを抱えてしまうことになります。

■ABC思考法で精神を鍛える

幼少から身に着けてしまった悲観的な思考はどうすれば矯正できるのでしょうか?

セリグマンは、この問題に対してABC思考法というアプローチを提案しています。ABC思考法を使ったワークは特別な機材を必要としないシンプルなものですが、効果的です。また、ポジティブ心理学の研究と実践の中で作られたワークの為、科学的な効果実証がなされています。

アメリカの学校への導入事例で効果実証が報告されています。うつ病リスクを持つ生徒が全体の25%程度居る似た環境の学校2校が選ばれ、そのうちの1校にプログラムが導入されました。結果、プログラムが導入された学校ではうつ病リスク割合が13%まで減少したそうです。(導入されなかった学校では変化無し)また、その後2年間の継続効果測定がなされました。結果、導入されなかった学校でのうつ病リスク割合が45%まで上がったのに対し、導入された学校では25%に比率が抑えられたそうです。

悲観的なものの見方をするか、楽観的なものの見方をするかは、本人の意思で選択することが出来ます。どのような「思考の癖」を持っていたとしても、「変えたい」という本人の意思と意識の力があれば変えることが可能です。

■ABC思考法のワーク

実際に、ABC思考法のワークはどのように行うのでしょうか?

ABC思考法は、出来事とそれに対する自分の反応を“A” “B” “C”の3つに分解します。ABCの分解とは、

A:Adversity(=上手く行かない状況)
B:Belief(=考えや思い)
C:Consequence(=結果)

ということです。冒頭の例で言えば、

A:仕事で怒られた
B:自分にはこの仕事は向いていない
C:もう嫌だ。転職を考えよう

という分解になります。

この際、ポイントは「B:Belief(=考えや思い)」です。どのようなBelief(=考えや思い)を持つか、本当は人は選択することが出来ます。しかし、幼少期からの経験の蓄積で、どうしても自動的に頭に浮かんできてしまうBeliefがあります。結果、本当は望まない「C:Consequence(=結果)」を自ら選択してしまっている。この構造に意識の力で気づくことが重要です。

ここはとても重要なポイントなので、一つ簡単なワークをやってみましょう。(「つよい子を育てるこころのワクチン」より抜粋)

 

【ワーク】下記の例①・②を読んでください。「B:Belief」部分が(   )で空欄になっています。AとCをじっくり読んだ上で、(  )の空欄部分をあなたの言葉で埋めてください。

例①
A(上手く行かない状況)→あなたは旦那さんに「週末の夜、二人でレストランで食事をしましょうよ」と言います。すると旦那さんは機嫌の悪い顔をして「忙しいんだよ」と言いました。
B(考えや思い)→あなたは(                   )と思う。
C(結果)→あなたは非難されたような気分になり、旦那さんとの間に心の溝を感じる

例②
A(上手く行かない状況)→あなたは旦那さんに「週末の夜、二人でレストランで食事をしましょうよ」と言います。すると旦那さんは機嫌の悪い顔をして「忙しいんだよ」と言いました。
B(考えや思い)→あなたは(                   )と思う。
C(結果)→あなたはがっかりするが、それならと思って友達を誘って美味しいレストランで食事をする

同じ上手く行かない状況であっても、B(考えや思い)が変わるとC(結果)が変わることがわかりますでしょうか? ここで重要なポイントは、A(現象)とC(結果)の結びつきは、思っているほど強くないということです。人は主体的にB(考えや思い)を選択することでC(結果)を変えることが出来る。

ABC思考法のメッセージはここにあります。

■ABC思考法とコーチングとの相性

ABC思考法はコーチングとの相性が非常に良いワークです。以前の記事(「7種類のコーチング流派」)でも書きましたが、ポジティブ心理学をベースにしたポジティブ心理学コーチングは、現在の主要なコーチング流派の一つです。特に、エビデンストベース(実証されたアプローチ)のコーチングを好む人にとっては、ポジティブ心理学コーチングは向いています。

幼少の頃から身に着けた悲観的な考えは一朝一夕で変わるものではありませんが、継続的にコーチングセッションの中で矯正していくことによって確実に変化が出るものでもあります。悲観的な「思考の癖」を直す精神を鍛える方法論として、ABC思考法は効果的です。

関連記事

 

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。 2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。株式会社かえる代表取締役。

プロフィール詳細

関連ブログRelated Blog

ミッドライフクライシスとは何か?私の場合を例として

MBTIコーチング

2016.8.18

ミッドライフクライシスとは何か?私の場合を例として

■ミッドライフクライシスとは? ミッドライフクライシス(中年の危機)という概念があります。 人は人生の前半は自… more

人生の5つの発達段階とコーチングの効果

コーチング

2014.10.16

人生の5つの発達段階とコーチングの効果

■コーチングの効果と人間の発達段階 コーチングのサポートを得て人生を棚卸し、次の人生のステップを上がっていく人… more

【流派別】コーチングおすすめ本 厳選10冊

コーチング

2014.9.25

【流派別】コーチングおすすめ本 厳選10冊

■コーチングおすすめ本 コーチングに関する本は沢山ありますが、ここでは私が読んだ中でお勧めできる本を10冊ご紹… more

最新ブログをメールでお知らせします。メールアドレスをご登録ください。

個人情報の取り扱いに関して