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今日のテーマは、AIで会計士や弁護士などの専門サービスが民主化されそうという話。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日も移動時間を使って、ちょっと気になったニュースについて考えてみようと思います。きっかけは、11月18日の日経新聞の記事。会計士の4割が「AIに仕事を奪われる」と感じているという調査結果が出ていて、これがなかなか興味深かったんですよね。
当事者が「危うい」と感じ始めている
日経新聞の記事によると、会計士専門の転職支援会社ピー・シー・ピー(PCP)が2025年に実施した調査で、AIに仕事を奪われる可能性が「あると思う」と回答した比率は43%。「あると思わない」の38%を上回ったそうです。
面白いのは、2019年の同じ調査では「あると思う」が27%、「あると思わない」が52%だったこと。わずか6年で、会計士たちの意識がガラッと変わっているんですよね。しかも年代別に見ると、25歳未満が67%と最も高くて、若い世代ほど危機感が強い。
外部の評論家が「この職業は危ない」と言うのと、当事者自身が「自分たちの仕事は危うい」と認識しているのとでは、重みが全然違うじゃないですか。この数年でAIの実力を肌で感じてきた結果なんだろうなと思います。

文字情報を扱う専門職がAIで「民主化」される
この話、会計士だけじゃなくて弁護士にも当てはまると思うんですよ。どちらも膨大な文字情報を扱って、そこから示唆を出す専門職ですよね。こういう仕事って、AIによって「民主化」される可能性が高いんじゃないかと。
弁護士の領域で言えば、契約書のレビューがわかりやすい例です。どこにどういう落とし穴があるかを見抜くのって、相当トレーニングされた弁護士だからこそできる仕事だと思われてきました。でも最近は、AIが契約書をチェックして、リスクのある条項や抜け漏れを自動で指摘してくれるサービスが出てきていますよね。さらに言えば、民事訴訟の「本人訴訟」もAIのサポートでやりやすくなるかもしれない。書類の作成、法的な論点の整理、過去の判例の調査…こういった作業をAIが手伝ってくれるなら、弁護士に頼まなくても自分で訴訟を進められる時代が来るんじゃないでしょうか。
会計士の領域だと、決算書の作成や税務署への提出なんかがAIエージェントでできるようになりそうです。今って、個人で会社を作ろうと思うと、税理士や会計士との顧問契約がそれなりのコストになるじゃないですか。月額数万円とか、年間で見るとけっこうな金額ですよね。でもこれが自分でできるようになったら、「じゃあ個人会社作ってみようかな」という人が増えるんじゃないかと思うんです。起業のハードルが下がるというか。
専門家の仕事は「なくなる」のではなく「変わる」
もちろん、全部が全部なくなるとは思いません。どういう契約書を作っていくのかという方向付けとか、会計であれば会計情報のどこを深掘りするかとか、意思決めにかかわる部分はしばらく人間が担うでしょう。定型的な業務はAIに任せて、専門家は信頼関係の構築や高度な判断に集中する。そういう棲み分けが進んでいくんだろうなと思います。
結局、戦略的にAIを使いこなして、極めて優れたパフォーマンスを出す一部の会計士や弁護士が台頭してくる。一方で、定型業務だけをやっていた層は厳しくなる。専門職の中でも二極化が進むのかもしれませんね。

まとめ:専門家に頼らなくていい選択肢が増える時代
というわけで、今日は会計士の調査結果から、専門職とAIの関係について歩きながら考えてみました。
契約書のチェック、本人訴訟、決算書の作成、税務申告…これまで専門家に頼むのが当たり前だった領域で、AIによって「自分でもできる」という選択肢が増えていく。それは専門家にとっては脅威かもしれないけど、社会全体で見れば、起業のハードルが下がったり、法的なサポートを受けやすくなったり、良い面もあるんじゃないかなと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。この記事が少しでも面白い・役に立ったと思ったら、ぜひいいねやフォローをしてくれると励みになります。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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