Blog
今日のテーマは、AIで恩恵を受けるのはどういう人なのか?という問題について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は移動時間を使って、最近読んだ日経新聞の記事から考えたことを話してみようと思います。11月15日の日経に、「AIが仕分ける日本の雇用 NTT、34万人の業務『5年後に半分代替』」という記事が出てたんですよね。
NTTは世界で34万人の従業員を抱えているんですけど、5年後には5割以上の業務をAIが担えるようになるという見通しを示したそうです。
で、AIと仕事の関係については、これまでも色々な側面から考えてブログにしてきたんですけど、今日はちょっと違う観点でもう一歩思考を進めてみたいなと思いまして。それは、「AIの恩恵は結局、誰が受け取るんだろう?」っていう問いなんです。歩きながら、ゆるく話してみますね。
AI時代の労働者は二極化する
まず、働く人の側から見てみましょう。AIによって仕事そのものが代替されるっていう話と、AIで能力を強化された人に仕事を奪われるっていう話、両方あると思うんですよね。
記事によると、NTTではコールセンター業務で先行していて、NTT東日本とNTT西日本で合計2500人いる担当従業員を2027年度以降に1150人と半分以下にするそうです。AIオペレーターが問い合わせ内容を理解して次の質問を投げかけるまでに3秒もかからない。データベース参照して顧客対応しつつ、クレームが来ても傷つかない。そりゃ人間より向いてますよね。
で、ここで思うのは、AI時代の労働者って完全に二極化するんじゃないかってことです。
一方には、AIを使いこなして生産性を激増させる人たちがいる。AIを部下みたいに使ったり、コンサルや専門家サポートとして活用したりして、自分の能力を数倍に強化できる人。この人たちは確かに恩恵を受けます。
でも大多数の働く人は、AI自体に仕事を代替されるか、AI強化された人に仕事を奪われるか、あるいは「仕事取られないように頑張らなきゃ」っていう防衛線でストレスを抱えることになる。つまり、AIは恩恵というよりも、ストレスの要因になっちゃうんじゃないかと思うんです。
しかも、これ、コールセンターみたいな定型業務だけの話じゃないんですよね。コンサルティングとか、クリエイティブとか、映像制作とか、「今まで難しいだろう」と思ってた仕事も、よく考えると情報をやり取りして、情報を加工する仕事なんで、AI代替のリスクを常に抱える業種になると思います。
逆に言うと、物理的なAI、体を持ったAIがどこまで発展するか次第なんですけど、今のところエッセンシャルワーク——介護とか医療とか小売の現場とか、あと施工とか大工とか——そういう手に技術を持って、全体のプロジェクト管理もできるっていう職種の方が、代替可能性は低いんじゃないかなと。大工なんて今すごい人手不足なんで、結構高給で仕事があるんじゃないでしょうか。

資本家への恩恵がわかりやすい理由
で、ここからが本題なんですけど、労働者の間で競争が激化して、一部が勝って大多数が苦しむっていう話とは別のレイヤーで、資本家・株主は比較的わかりやすく恩恵を受ける構造があるんじゃないかと思うんです。
もちろん、会社のオーナーや経営者だって、AI時代の競争環境の変化に対応するのは大変だと思います。他社もAIを使ってくるわけだし、ビジネスモデル自体が変わっていく可能性もある。だから、資本家と労働者のどっちがAI対応で大変か、っていうのは正直よくわからないんですよね。
でも、一つ確実に言えるのは、資本家側は人員削減にAIを使うという道具を手に入れているってことです。人員を抑制できて、しかも業務はAIが担う。これによって生産性が上がる。生産性っていうのは、つまり付加価値、粗利のことなんで、同じ売上でも人件費が減れば利益は増えるわけです。
そうなると一株あたりの利益が上がって、株価を押し上げる要因になる。つまり、資本家への恩恵がわかりやすい形で現れるんじゃないかと思うんです。
一方で、株を持っていない労働者にとって、AIっていうのは「自分の仕事を守るための防衛線」にしかならないことが多くて、ストレスの方が大きい。ここに、幸福の配分の歪み、というか偏りが生まれるんじゃないかなっていう気がすごくしています。

解決策は「株を持つ」か「再配分」か
じゃあどうすればいいのか。
一つは、労働者が資本家側にも入るってことだと思います。つまり、企業の株を持つことで、労働者として働きつつ資本家側でもあるっていう立ち位置を取る。従業員持株制度とか、そういう仕組みをもっと積極的に活用していくのは重要だと思うんですよね。そうすれば、AIで会社の生産性が上がったとき、その恩恵を株主として受け取ることができる。
でも、それができない人も多いわけです。そもそも株を買う余裕がない人もいれば、非正規雇用等で持株制度みたいな制度なんてないという人も居るでしょう。
だから、政策的な再配分が本当に重要になってくると思うんです。金融所得税の強化とか、社会的な再配分を考えないと、AI化が進めば進むほど格差が広がり社会不安が高まるんじゃないかなと。
まとめ:AI時代の幸福をどう分け合うか
というわけで、今日はNTTのニュースから、AI時代の幸福の配分について歩きながら考えてみました。
AIで仕事が奪われるかどうかっていう話も大事なんですけど、もっと根本的には「その恩恵を誰が受け取るのか」「幸福をどう分け合うのか」っていう問題なんじゃないかと思います。労働者が株を持つこと、そして政策的な再配分。この二つをセットで考えていかないと、AI時代の社会はかなり厳しいものになるかもしれません。
この記事が少しでも面白い、あるいは役に立ったと思ったら、ぜひSNSでシェアしたり、コメントで感想を聞かせてくれると励みになります。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
関連ブログ Related Blog
6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ個人主義(IDV)女性性・男性性(MAS)歩きながら考える
2025.4.3
「静かな退職」は本当に悪者なのか?職場で歩きながら考えてみた – 歩きながら考える vol.15
今日のテーマは「静かな退職」。職場で、必要以上に頑張らない、という働き方を意識的に選ぶケースが見られるそうです。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとした... more
6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ女性性・男性性(MAS)歩きながら考える
2025.11.13
バリキャリも専業主婦も疲れる – 歩きながら考える vol.167
今日のテーマは、アメリカで専業主婦回帰の動きがあるという件について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心を... more
6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ不確実性の回避(UAI)人生の楽しみ方(IVR)個人主義(IDV)女性性・男性性(MAS)権力格差(PDI)歩きながら考える短期・長期志向(LTO)
2025.5.28
定年後の迷いを北欧でリセット:中高年男性に必要なショック療法 – 歩きながら考える vol.51
今日のテーマは「定年後の男性のライフスタイルシフト」について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐ... more