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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える
2025.11.12
AIが変える教育と育児:少子化対策の希望か、それとも新たなリスクか – 歩きながら考える vol.166
渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)
今日のテーマは、AIによって教育や育児の負担が減ることが社会としての少子化対策になり得るか、について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日はちょっと昨日飲みすぎてしまって頭が痛いので、ぶらぶら散歩しながら、最近気になっていることを話してみようと思います。11月10日の日経新聞で、「インフレ下の家計、食費節約は限界? 教育・家賃に注目」という記事を読んで、色々考えちゃったんですよね。歩きながら、ゆるく話してみます。
食費を削っても、教育費は削れない現実
まず、家計がかなり厳しい状況になってるって話から。総務省の家計調査を見てみると、2025年1月から8月の支出を物価変動の影響を除く実質で比べたとき、食費は前年より減ってるんですね。具体的には1.4%減少。家具・家事用品や洋服・靴も減っている。
でも一方で、大きく増えているのが教育費なんです。記事のグラフを見ると、教育費の伸びは相当なもので、実質で7%くらい伸びているように見えます。これ、すごい話だなって思うんですよ。
想像してみてください。子供がいる家庭で、インフレが進んで実質賃金も下がっている中、教育費だけはどんどん増えていく。食費は削れる。洋服も我慢できる。でも、教育費は削れない。じゃあどこでやりくりするのか。貯蓄を取り崩すか、貯蓄額を減らすか。金融資産からの配当とか収益がない家庭だと、なかなか厳しいんじゃないかなっていう気がすごくします。
教育費の高さが少子化を加速させる
ここで考えたいのが、少子化の話なんです。
少子化の原因って色々な要素があると思うんですけども、やっぱり「子供を何人も持つと教育費がものすごく高い」っていうのは、心理的な抵抗になるんだと思うんですよね。今は個人主義の時代で、働いて自分のためにお金を使いたい、旅行にも行きたい、おいしいもの食べたい、っていう欲求がある。そんな中で、子供を持つとそれが制約されるっていうことが目に見えてる。だから「子供を持つのはなかなか…」ってなっちゃう。
これ、おそらく東アジア共通、先進国共通で起こっている話だと思います。このままいくと、東アジアは地域全体で人口の再生産ができなくなるというのが目に見えてる状況になっちゃってます。
で、この教育の話なんですけど、本当にこんなに高い必要があるのか、って思うんですよね。

AIとロボットが変える教育と育児の未来
ここからが希望のある話。というか、希望と同時にちょっと怖さも感じる話なんですけど。
まず教育の面。今はもう、AIが非常に優秀な個人チューターとして機能しうる状態になってるじゃないですか。自分で疑問が湧いて、それをもとに学習を進めていくっていう学習スタイルが得意な子供であれば、もう塾に行く必要ないと思うんですよ。AIに聞いた方が、その場ですぐに情報が出てくる。で、出してくれた情報に基づいて次の疑問が湧いてくれば、どんどん深めていくことができる。
そういう自主的な学び方がそんなに得意じゃない子供も、みんなで学ぶ場、塾みたいな感じの場所で、教えてくれるのはAI、っていう安価な学び方の選択肢ができるんじゃないかと思うんです。
ちょっと前だと、本当に優秀な家庭教師を雇えるかどうかで学力が変わってくるみたいな世界があったと思うんです。それは日本だけじゃなくて、中国とか韓国も同じ話だったはず。でも、それがAIによって民主化されるっていうことのインパクトは、社会的には結構大きいんじゃないでしょうか。
でも、もっと先を考えると、AIとロボットが変えるのは教育だけじゃないんじゃないかって思うんです。育児そのものが変わる可能性がある。
例えば、ベビーベッドの周辺にカメラや様々なセンサーをつけて、物理的なロボットが子供をあやしたり、おむつを替えたり、みたいなことをするようになるかもしれない。親の負担を大幅に軽減するような世界。技術的には、そんなに遠い未来の話じゃないと思うんですよね。
教育費の負担が減って、育児の物理的な負担も減る。そうなれば、「AIを使えば子育てもなんとかなる」という感覚になるかもしれない。少子化対策としてのAIとロボット、っていうのは全然あり得る話だと思います。

期待とリスク、両方を見据える必要性
でも、ここでちょっと考えなきゃいけないことがあります。
人とAIとかロボットとのコミュニケーションや接点が、人の心にどういう影響を及ぼすのか。この点については、やっぱり怖さやリスクを感じるところもあるんですよね。AIをそこまで信頼できるのか、という問題もある。
子供が人間ではなくAIやロボットから学び、AIやロボットにあやされて育つ。それが子供の情緒発達や、人間関係を築く能力にどう影響するのか。まだ誰も答えを持っていない。
もちろん、ポジティブな可能性もあります。AIが24時間疲れずに子供の質問に答え続けることで、知的好奇心が爆発的に伸びるかもしれない。ロボットが夜泣きに対応してくれることで、親が十分な睡眠を取れて、結果的に子供との関係がより良くなるかもしれない。
でも同時に、人間同士の温かみのある交流が減ることのリスクもある。AIやロボットに頼りすぎることで、親子の絆が希薄になるかもしれない。子供が人間の感情を理解する能力が育たないかもしれない。
だからこそ、この領域の研究と実装というのは、多分これから重要になってくると思うんです。リスクと効果を精密に見ていく。何がプラスで、何がマイナスなのか。どこまではAIやロボットに任せて良くて、どこからは人間が関わるべきなのか。そのバランスを科学的に、実証的に明らかにしていく必要があると思います。
というわけで、今日は家計と教育費の話から、AIとロボットによる教育・育児の未来、そしてそのリスクまで、歩きながら考えてみました。技術は確実に進んでいて、少子化対策の一つの答えになるかもしれない。でも、慎重に、丁寧に、進めていかなきゃいけない領域だなって思います。
もし「こういう使い方なら安全じゃない?」とか「この部分のリスクが心配」みたいな意見があったら、ぜひSNSでシェアして、コメントで教えてください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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