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ブログ歩きながら考える

2025.11.17

人間よりもAI上司の方がマシ?アルゴリズミックマネジメント研究の話- 歩きながら考える vol.168

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、先日学会で大会優秀賞を頂いたアルゴリズミックマネジメント研究について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は週末に参加した学会の話をしようと思います。経営行動科学学会という、組織や職場での人の行動を研究する学会なんですけど、そこで嬉しいことに大会優秀賞をいただきました。今回の研究テーマは「アルゴリズミックマネジメント」、つまりAIやアルゴリズムが上司になる働き方についてです。

で、この研究、日本の他の研究者の先生方に見ていただき、評価してくださる方がいらっしゃったというのが、僕にとってはすごく心強かったんです。なぜなら、この研究の核心には「日本人はもしかしたら、人間よりAI上司の方がいいと思ってるんじゃないか?」という、もしかしたらあまり共感されないかもしれない、大きな仮説があるからなんです。

今日は移動時間を使って、この研究の話と、これからの働き方について考えてみたいと思います。

すでに始まっている「AI上司」の時代

まず最初に、アルゴリズミックマネジメントって何かという話から。これ、実はもう私たちの身近なところで始まってます。

分かりやすい例がUber EatsやUberの運転手さん。彼らは人間から指示を受けないですね。プラットフォームのアルゴリズムが「この道順で行ってください」「この客をピックアップしてください」って指示を出すじゃないですか。で、仕事が終わったら評価もアルゴリズムがする。わかりやすく言えば、これがアルゴリズミックマネジメント。

今はギグワークが中心ですけど、これ、普通の企業にも入ってくると予想されてます。社内の仕事を細かいタスクに分けて、「この仕事、誰が一番得意そうか」ってアルゴリズムが判断してオファーする。社内の人でも社外のフリーランサーでも関係なく、最適な人にマッチングしていく。そうすると、組織の中と外の境界線がどんどん曖昧になっていくわけですよね。

で、その時に人間の働き方を管理する中心がいつの間にかアルゴリズムになっていたっていうのは、十分考えられる話だと思います。だから、今のうちから、アルゴリズムのもとで働くことが人にとってどういうインパクトを及ぼすのかっていうのは、ちゃんと見ておいた方がいいと思っています。

「ひどい上司」と比べたら、AIの方がマシかも?

ここからが僕の研究の核心なんですけど、これを考えるときに、文化差がすごく重要だと思ってて。特に日本の場合は、もしかしたらアルゴリズムの方が上司として好まれるんじゃないかと思ってます。

なぜか。それは、日本の人にとってAIよりも人間の方がよっぽど怖い(リスクがある)存在なんじゃないかと思うからです。

というのも、ひどい上司っているじゃないですか。指示出しの仕方が理不尽だとか、評価が不透明だとか、えこひいきするとか、パワハラだとかって。しかも、日本は仕事の流動性が低い会社が結構あるから、一度上司が決まると、その上司と数年単位で働かなくてはならない。

で、それと比べた時に、アルゴリズムが上司になるっていうのは、もしかしたら悪い話ではないかもしれない。ドライかもしれないけど、指示は明確で、合理的で、公平で。少なくとも感情的で理不尽なことはしてこない。だったら、なんかアルゴリズムの方がマシかもみたいな感覚って、日本の人は思いそうだなって感じるわけです。

今、アルゴリズミックマネジメントの効果っていうのは諸刃の剣だって言われてて、ポジティブな効果とネガティブな効果、両方があるってことになってるんですけど、これは結構文化差があるんじゃないかと僕は思ってます。

データが示す意外な結果:アルゴリズム管理で幸福に?

で、実際に日本でデータを取ってみたんですよ。そしたら、予想通りというか、面白い結果が出て。

アルゴリズムに管理されるもとで働くということは、すごく仕事の自律性を感じることに繋がってたんです。で、仕事の自律性を感じると、その仕事をやってる意味があるっていう、自分らしく働けているとか、自己実現に繋がるとかっていう「仕事の意味感」の高さと関係する。で、仕事の意味感が高くなれば、全体的な主観的な幸福感、つまり人生の幸福感全体の高さと関係してくるっていう構造になってるんですね。

周り回って、アルゴリズミックマネジメントのもとで働くことが人生の幸福に繋がってるっていう。データはそういう風になってるわけなんです。

これ、納得感あります?普通、AIに管理されるっていうと、監視されてる、自由がない、みたいなイメージを持ちますよね。でもデータでは、アルゴリズムに管理されることと自律性の感覚はポジティブな関係であるという。

もちろん、これは僕のパイロット研究で、サンプル数も限られてるし、日本だけのデータなんで、これだけで確定的なことは言えないんですけど、少なくとも学会で評価してくださる先生方がいらっしゃったっていうのは、「そうそう、その感覚わかる」って思う人が僕だけじゃないっていう証拠なんじゃないかと思うわけです。

なぜ日本でこういう結果が?

じゃあ、なぜ日本でこういう結果が出るのか。文化的な背景として説明されているのは下記のような話です。

西欧では人間中心の世界観があって、人間と人間でないものは明確に区分され、人間が上位に置かれると言われています。だから、AIやロボットみたいな人間ではないが人間に近い、もしくはそれ以上の力を発揮するものに対しては脅威を感じやすい。

対して、日本を始め東アジアではアニミズム的な世界観があり、あらゆるものに意識や魂があって、人間との境界線は曖昧という感覚がありますね。だから、必ずしもAIやロボットが脅威とはならない。むしろ、公平で明確な判断をしてくれるなら、人間の上司より良いかもしれないっていう受け止め方ができるのかもしれません。

まとめ:これからの働き方を考える

というわけで、今日は学会で賞をもらった研究の話から、AI上司と日本人の働き方について考えてみました。アルゴリズミックマネジメントがもたらす変化は、文化によって全然違う意味を持つかもしれないっていう話です。

これ、決して「AIに管理されるのが素晴らしい」って言ってるわけじゃなくて。人間の上司にも良さはあるし、温かさや柔軟性は大事です。また、AIとの関係性は長期的には人間の心にネガティブな影響を及ぼす可能性もあるから、それはきちんと考慮しないとならない。でも、少なくとも日本の職場文化を考えたときに、「公平で透明なアルゴリズム管理」っていうのが、意外と悪くないかもしれないっていう可能性も、ちゃんと考える価値があると思うんですよね。

もしこの記事を少しでも面白いと思ってくださったら、ぜひいいねやSNSでシェアしていただけるととても嬉しいです。これからの働き方について、みんなで考えるきっかけになったらいいなと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

プロフィール詳細

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