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■MBTIとストレングスファインダー
昨年の夏に、MBTIとストレングスファインダーを立て続けに学びました。どちらもよく使われる性格検査ツール。
性格類型のアセスメントは、個人を決めつけたり、ステレオタイプな理解に陥らないように注意すれば非常に有益な示唆をもたらしてくれます。性格類型の傾向を参考にしながら自己理解を深めていく知的なエクササイズ。
自分はこれらのアセスメントを、チームの中の心理的ダイナミクスの理解を深めるためのツールとして使いたいと思っています。
性格検査ツールは世の中に無数にあります。その中で、何らかの理論との繋がりがあり、手軽に実施できるものとしてはMBTIとストレングスファインダーが良いのではないかと思ってます。MBTIはユング心理学をベースとしており、ストレングスファインダーはポジティブ心理学の文脈で使われます。
■MBTIとストレングスファインダーをどう使い分けるか
個人とチームが生き生きとしなやかに活性化されるのであれば、正直どちらを使っても良いと思います。ただ、受験者が得られるメリットが2つのツールでちょっと違うということが良くわかりました。ツールの成り立ちが全く違うんですよね。
2つのツールを使うことで受験者は、、、
①自分の得意パターンでどのように人生の困難を乗り切るかヒントが得られます
②他人の異なる行動パターンとどのように付き合うかを知ることが出来ます
①②は両方のツールに共通しています。しかし、①に関してはストレングスファインダーの方が強く、②に関してはMBTIの方が強いように思います。なぜなら、SFは受験者の行動特性を詳細に記述することに長けており、MBTIは人間行動の全体像を理論的に説明することに長けているからです。
■MBTIとストレングスファインダーは異なるアプローチで作られている
誤解を恐れずに言うと、「ストレングスファインダーは主成分分析的で、MBTIは因子分析的」というとわかり易いかもしれません。(*あくまで理解の為のイメージ。MBTIはタイプ論で特性論的な得点が高い・低いという見方をしません。対極の2つの機能のうち、一方を他方よりも自然と好む傾向がある、と考えます。例えて言うなら、因子を比率尺度で理解するのではなく、「指向する・しない」と名義尺度化し、対極する2つのものを合わせて扱うイメージかと思います)
多変量解析の手ほどきを受けた人は習うと思いますが、この2つは似ていますが、考え方が全く違います。主成分分析は、似たような質問項目をまとめ上げて共通項を作ります。出てきた結果を見て、適当に名前を付けます。それに対して、因子分析は調査票の裏に因子の存在を想定します。
もうちょっと具体的に言うと、ストレングスファインダーとMBTIは次のように作られています
<ストレングスファインダーの作り方>
・ギャロップ社が世の中の人の行動/考え方のパターンを5000種類収集
・それを34の資質に集約(=主成分分析的アプローチ)
<MBTIの作り方>
・キャサリン・ブリックスとイザベル・マイヤーズがユングの理論を研究/発展
・理論に基づいた16種類のタイプを判別する質問紙を開発(=因子分析的アプローチ)
要は、ストレングスファインダーは力技で世の中の性格を漏れなく調べたわけです。それに対して、MBTIは「人間の心はどのような構造になっているのか」というユングの理論を質問紙に表現したわけです。
■結果、MBTIとストレングスファインダーの使い方に差が出る
その結果、どうなったかというと、ストレングスファインダーの方が「言い当てられる感覚」が強くなります。具体的な行動パターンを要約したのが「資質」なので、その資質が上位に来る人がどういう行動パターンをしがちなのかは詳細に記述することが可能です。
ストレングスファインダーだと検査結果を見て「そうそう、そうなんだよ!!!」と思う人が多いのではないでしょうか。MBTIだとこうは行きません。もともとが理論で一般化された考え方なので、それをどのように解釈するか、ファシリテーター(認定ユーザー)が一緒に考えていかないとなりません。MBTIで自分のタイプがわからずに迷っている人が結構いますが、これが原因だと思います。(*そのため、MBTI認定ユーザーはクライアントがベストフィットタイプを発見するよう、ワークショップの後も責任を持ってフォローすることが義務づけられている)
ストレングスファインダーでは検査結果を見て、すぐに「あなたはこういう考え方をする時に心地よいと思いますよね。だから、今直面している課題もそれを上手く使って克服したらどうですか?具体的には×××」というアドバイスがし易いわけです。(=前述の①が強い)
一方、MBTIは自分のタイプを発見するのに時間がかかりますが、その後が強烈に強いです。というのも、理論がベースにあるので「人間の心の全体構造」がわかるんですね。さらにその構造が2項対立で出来ているのが極めて強い。「自分には世の中はこう見える。でも2項対立の逆側が発現した他人には世の中は別の形で見える」ということが体系立てて理解できます。自分とは異なる認知を持つ他人とどう付き合うかが極めて良くわかるわけです。(=前述の②が強い)
さらに、MBTIは若年~老年までの人間の発達にも示唆をもたらします。ユングの関心の一つが人の個性化(=人生を通じた自己実現)だったため、人が自分の心の主機能を発達させ、さらに中年のミドルライフクライシスを経て人間として完成していく過程が理論化されています。MBTIを使うことで、長期での人生選択に対しても深い示唆を得ることが出来ます。
■結局、どちらが使いやすいか
個人的にはMBTIを使っています。「自分は何者か」を理解しつつ、「他者はどのように感じ、考えるのか」を理解するにはMBTIが最適。チームを率いるリーダーに極めて強力なコミュニケーションのフレームワークをMBTIは提供してくれます。ただ、「個人の強みをどう生かすか」に対してわかり易い示唆が出やすいのはストレングスファインダーの方だと思います。MBTIでも「個人の強み」に関する示唆は出ますが、性格類型を突き止めるのに最低半日かかります。その為、「強み」にフォーカスした示唆を得るならばストレングスファインダーの方が使いやすいと思います。
まとめると、
<MBTIの使用が向いている状況>
・チームを率いるリーダーの「人間に対する理解力」を高めたい(自分を知りつつチームメンバーを理解する)
・他人とのコミュニケーションストレスを減らしたい
・人間の心の仕組みの全体像を知りつつ、自己理解を深めたい
・自分の「強み」と「弱み」を同時に理解したい
・中年の危機(ミッドライフクライシス)など生涯発達を含めて自分を理解したい
<ストレングスファインダーの使用が向いている状況>
・自分の「強み」を明確に理解して日常生活に生かしたい
・「強み」のダイナミクスを知り、自分なりの課題への対処法を考えたい
・自分にとって「強み」の種になりにくい資質も理解したい
・チーム内の個人の「強み」を理解し、協働の仕方を改善したい
・ファシリテーター無しで「強み」の理解をしたい
というのが今のところの個人的な感想です。
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著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。 株式会社かえる 代表取締役。
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