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Vipassana Meditation

ヨガと瞑想

2014.9.14

ヴィパッサナー瞑想で私が感じた主な効果

渡邉 寧 | 株式会社かえる代表取締役

■ヴィパッサナー瞑想の修行


2014年夏に10日間のヴィパッサナー瞑想合宿に行ってきました。10日間人と話さず、ただ自分の体と心に向き合う10日間でした。

瞑想から帰ってきて1週間経ち、この瞑想法がもたらす優れた効果の実感が日に日に強くなっていることを感じます。

ヴィパッサナー瞑想がもたらす「おまけの効果」については先日別の記事でまとめました。(参考「ヴィパッサナー瞑想で得た10のおまけ効果」) 今回は、私が感じるヴィパッサナー瞑想の主要効果をまとめておこうと思います。


ヴィパッサナー瞑想では10日間で3つの瞑想法を授けられます。

  1. アーナーパーナ
  2. ヴィパッサナー
  3. メッター

「1.アーナーパーナ」は呼吸と鼻の下の狭い部分に意識を集中させる瞑想法です。10日のうち、この修行に最初の3日半使います。集中力と意識の明晰性を鍛えます。「2.ヴィパッサナー」は体全体の感覚に意識を向ける瞑想法です。意識による無意識のコントロールを鍛えます。この修行に後半6日半使います。「3.メッター」はすべての生き物に対する善意を込める瞑想法で、瞑想の最後に数分行うものです。10日目に習います。

瞑想の姿勢は指定されませんが、多くの人が座禅の姿勢で瞑想します。

■ヴィパッサナー瞑想で目指すこと


この瞑想法の目的は2つにわけて考えると方がわかりやすいと思います。


その2つの目的とは、

  1. 死ぬための準備をする
  2. 現世を心穏やかに過ごす

です。

1は仏教の「解脱」の考えです。ヴィパッサナー瞑想は2500年前にゴータマ・ブッダが悟りを開いた瞑想法です。ブッダが悟りを開いた道の歩き方を体系化しています。

ヴィパッサナー瞑想の目的のうち、「1.死ぬための準備をする」はピンとこない人も多いと思います。仏教的世界観なので、人によっては受け入れられないこともあるかもしれません。一方で、「2.現世を心穏やかに過ごす」は大半の人に役立つ瞑想の効果だと思います。ここではこの効果に絞って書いていこうと思います。

そもそも、なぜヴィパッサナー瞑想を行うと心穏やかに過ごすことができるようになるのでしょうか?

それは瞑想のトレーニングを積むと、外界の刺激に対する感情的な「反応」が無くなるからです。これは、たとえ話で説明した方がわかり易いので、コースの法話の中で挙げられる一つのたとえ話を紹介しておきます。

<ヴィパッサナー瞑想の効果:油を買いに行った3人の息子>

インドのある村で、母親が子供に「このツボを持って町の商店で油を買ってきて」と言ってお使いに出しました。この子供は油を買って家に帰りますが、帰り道で転んで油を半分こぼしてしまいました。子供は「油を半分こぼしてしまった」と思い、悲しくて、情けなくて、大泣きしながら家に帰って母親に事の次第を説明しました。

母親は別の日に、また別の子供に「このツボを持って町の商店で油を買ってきて」とお使いを出しました。この子供も帰り道に転んで油を半分こぼしてしまいました。しかし、この子供は「ラッキー、転んだのに半分も油が残ってる。ツボも割れてない」ニコニコしながら家に帰って母親に事の次第を説明しました。

これは、いわゆる物事のポジティブな面を捉えるかネガティブな面を捉えるかという逸話です。ポジティブ思考を勧める啓蒙書などでよく見ます。コップに半分水が入っている時に、「半分しかない」と思うか「半分もある」と思うか、という逸話が有名です。

しかし、実はこの話には続きがあります。

母親はまた別の日に、また別の3人目の子供に「このツボを持って町の商店で油を買ってきて」とお使いを出します。この子供もやはり帰り道に転んで油を半分こぼしてしまいます。この子供はヴィパッサナー瞑想の修行を受けている子供でした。この子は「転んでしまった。ツボは割れず油は半分残っている。全部なくならなかったのは幸運だ。しかし、これだとお母さんは困るだろう。よし、村に帰って仕事をして小遣い稼ぎをし、もう一度油を買いに行こう」と考え、ニコニコしながら家に帰りました。

最初の2人の子供と3人目の子供は根本的に違います。それは、出来事に対して感情的な「反応」をしているかどうかです。この反応は無意識のレベルで起こります。最初の2人の子供はネガティブにしろポジティブにしろ、反射的な「反応」の世界で生きています。それに対して3人目の子供は反射的な「反応」をせず、明晰な意識で物事を「観察」し問題解決に向かっています。

この「明晰な意識」を基礎とした「心の平静」が、ヴィパッサナー瞑想の修行を積むことで手に入れられる効果です。

■感情と体の感覚は繋がっている

感情と体の感覚は繋がっています。びっくりすると体は緊張するし、怒ると体は熱くなります。一般的には「感情が体の感覚を引き起こす」と考えられています。しかし、実はこの因果関係は逆です。要は、「びっくりする→体が緊張する」のではなくて「体が緊張する→びっくりする」のです。そして、この「感覚→感情」の連鎖は無意識の領域で起こります。つまり、感情をコントロールするには、「感覚→感情」の連鎖を無意識に任せないことが必要なのです。

心の感情に伴って体の感覚が現れるのではなく、体の感覚が心に感情を引き起こすという考え方。これは、実験心理学の世界では「ジェームズ・ランゲ説」として知られており、実証研究で支持されています。面白くなくても笑っていると、面白くなってくる、という経験が有る人は居ると思いますが、これを思い出すとわかり易いかもしれません。

ヴィパッサナー瞑想では、ひたすら全身の「感覚」意識で感じ取る訓練を積みます。頭のてっぺんからつま先まで、「今、ここ」で体が感じている「感覚」を感じ取ります。そして、すべての感覚は「生まれ、消え去る」ということを実体験で理解します。

この訓練を積むとどうなるか。

「感覚→感情」の連鎖を断ち切ることが出来るようになります。嫌悪や渇望といったネガティブな感情が沸き起こることがあります。その際、その感情と繋がっている体の感覚を明晰な意識で「観察」することで、短時間で心の平静を取り戻すことが出来るようになります。これは非常に不思議な現象なんですが、「自然の摂理」なんだそうです。

例えば、僕は全体像の見えない長い話をされるとイライラしてくるんですが、こうした感情のコントロールが上手くなりました。イライラしている時には胸の辺りに締め付けられるような感覚があります。この感覚に意識を向けて「観察」すると、短時間で感覚は消え去ります。同時にイライラした感情も消え去っている。

また、瞑想中に座禅の姿勢を取り続けると、30分を超えたあたりから足に激痛が走り始めます。同時に「もう無理だ。。」という逃げ出したくなる感情が沸き起こります。しかし、この足の激痛に意識を向けて「観察」すると、逃げ出したくなるような感情は消え去ります。姿勢を崩さない限り、痛みは痛みとして残るんですが、自分を圧倒するような感覚ではなくなる。

すべての感覚はしょせん「生まれ、消え去る」ものです。よって永久に続くネガティブな感情などありえない。人は人生の中で様々な「心の条件付け」を作ってきています。ある特定の人を目の前にすると気分が悪くなるということもあるかもしれません。これは無意識のレベルで起こる反応ですが、その時の体の感覚に意識を向けることで心の平静を保つことが出来るようになる。

ヴィパッサナーで訓練しているのはそういうことです。

■効果は実体験することがお勧め

今回はヴィパッサナー瞑想の主要な効果について、主に「現世を心穏やかに過ごす」観点に絞って書きました。
ここで書いたことは、あくまで私が2014年夏に10日間のコースを初めて体験して思ったことです。コースではこれに留まらない、より多面的な効果の説明があります。人によって感じるところも違うと思います。

読んでみて「役に立つかも」と参考になれば幸いです。また、こうした効果は自分で体験してみて初めて納得できるものだと思います。ヴィパッサナー瞑想は10日間のコースが基本ですが、3日間のショートコースもあるようなので、興味を持ったら是非自身で体験してみることをお勧めします。

この記事では「死ぬための準備」としてのヴィパッサナー瞑想には触れませんでした。この話は深いので、次回の記事(「寄生獣」田村玲子の名言に見る仏教の世界観」)で、ここに少し触れたいと思います。

  Photo by (c)Tomo.Yun

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。 2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。株式会社かえる代表取締役。

プロフィール詳細

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