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ヨガと瞑想

2016.9.24

「感情的」に反応しない方法。瞑想で穏やかさを保つ

渡邉 寧 | 株式会社かえる代表取締役

誰しも辛い時はある

辛い感情に打ちのめされそうになることって誰しもありますね。生きている以上、不条理なことというのはどうしてもあります。どんなに誠実に、一生懸命日々の暮らしを営んでいたとしても、不幸な出来事に直面して辛い感情になることはあります。

私は組織で働く人と一緒に仕事をすることが多いのですが、昨今は昔と違い、大きな組織の中で、多少の失敗があったとしても安定して仕事ができる安心感がありません。よって、どうしても毎回の仕事の成果にシビアになり、その分、心理的に不安定で不安を感じやすい環境になっているように思います。

>感情(Feeling)と情動(Emotion)

感情といった時、そこには色々な種類があります。日本人にとってなじみの深い分類は、中国の五情で、

1.喜(よろこび)
2.怒(いかり)
3.哀(かなしみ)
4.楽(たのしみ)
5.怨(うらみ)

という分類。また、ダーウィンは

1.悲しみ
2.幸福
3.怒り
4.軽蔑
5.嫌悪
6.恐怖
7.驚き

という7つの基本的感情が、文化によって異ならず普遍的に共通すると考えました。

ここから、辛い感情を列挙すると、「怒り」「悲しみ/哀しみ」「軽蔑」「嫌悪」「恐れ/恐怖」「恨み/怨み」といったものになるでしょうか。

私たちはあまり意識して区別していませんが、こうした「感情」という名前で呼ばれる心理的状況は、生理学的には「情動(emotion)」と「感情(feeling)」に区別されます

「感情(feeling)」と「情動(emotion)」の差は使う脳の場所の差です。「感情(feeling)」大脳の表面(大脳皮質)を使う高次の機能で、「情動(emotion)」は、より脳の中心(皮質下)を使う低次の機能と考えられています。

速い感情と遅い感情

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」では、「速い思考」と「遅い思考」という概念が出てきます。

いわゆる意思決定とか判断とか、何かを意識的に考えることは「遅い思考」に属するのですが、人はほとんどのことに関して「遅い思考」を使っていない、という話です。そうではなくて「速い思考」、つまり無意識に自動的に動く条件付けの思考で大半のことを行っている。

感情と情動に関しても「ファスト(速い)」「スロー(遅い)」があります。感情は「スロー(遅い)」で、情動は「ファスト(速い)」なシステムでしょう。

もともと恐れや恐怖のような情動システムが人間に備わっているのは、生物的に生き延びるためだと言われています。快・不快、を判断基準として、不快なものを避け、快な状態を追求することが個体としての生存確率を上げる。よって、素早く外界の刺激を快・不快に分類するシステムが必要だったという考えです。

ここでポイントは、「速い情動」はただの刺激反応システムだということです。手を叩かれたら痛いのと一緒で、心の中で条件付けがあって、ある刺激を受けると特定の情動が喚起される。

ガタイの良い怖い顔をしたお兄さんを見たら「怖い」と思うことは、個人の生存確率を上げる為に必要です。しかし、いつまでも「怖い」という感情を引きずり続けたら冷静な判断が出来なくなります。

だから、「「怖い」と感じたんだ」という脳内の情報は受け取ったら、情動のセンサーはオフにして、後は冷静に対処する心の使い方をする必要があります。

「速い」情動から逃れるのは難しい

しかし、「速い」情動のセンサーが一旦起動すると、これを切るのは中々大変です。

怒りや恐れ、不安のような情動は一旦始まると長引きます。その為、それに捉われてしまい冷静な判断と行動が出来なくなることが良くあります。

おそらく、このセンサーが敏感に作動する人の方が、今でも生存確率は高いのではないかと思います。リスクに敏感に気付き、そのリスクが無視できるほど小さくなるまでそのことに意識的である方が生命体としては生き延びられる。

しかし、社会生活を上手く送る上では、この「速い」情動センサーはもっと上手く使いこなす必要があります。なぜなら、人間は文明発達の過程を経て十分に生死リスクをコントロールし、どちらかというと「社会的な生き死に」にどう対応するかの方が重要な課題になっているからです。

しかし、生物の体に埋め込まれた「速い」システムは中々思い通りに動かない。どうすれば「速い」情動センサーを上手くコントロールできるようになるのか。

「速い」情動をコントロールする方法としての瞑想

その具体的な方法論が瞑想です。

瞑想にはいろいろな流派があるのですが、ここではヴィパッサナー瞑想について話します。
(ヴィパッサナー瞑想についてはこちらの記事もご参照ください「実体験:ヴィパッサナー瞑想の効果」「ヴィパッサナー瞑想で得た10のおまけ効果

ヴィパッサナー瞑想は、簡単に言うと体の微細な感覚に意識を向ける瞑想法です。まず、アーナパーナという鼻の下と上唇の間のごく狭い領域に意識を集中させる瞑想を行った後に、ヴィパッサナーという頭のてっぺんからつま先まで体の一部分一部分の微細な感覚に意識を向ける瞑想を行います。

瞑想でやっていることは、これ以上でもこれ以下でもありません。

しかし、この瞑想を行うと情動の流れは自分の意思でコントロールできるということに気づきます。

私は今でも仕事で不安や怒りの情動を感じた時には、直ちに手を止めて短い瞑想の時間を取るようにしています。例えばショックなメールをもらった後には(困ったことに、これが結構良くあるのですが。。。)、静かに目をつぶり、長くて細い呼吸の助けを借りながらアーナパーナを数分、ヴィパッサナーを10分ほど程度行います。

そうすることで、激しい情動の動きは収まり、怒りに任せた敵対的なメール返信を書くこともなくなります。
「速い」怒りの感情に任せて返信をもししたら、売り言葉に買い言葉で状況はもっと悪くなるでしょう。

「不安や恐怖」を「感謝や慈愛」に変える

ヴィパッサナー瞑想でやっていることは、不安や恐怖のような「速い」情動の動きを止めて、そこに出来た心のスペースに感謝や慈愛のような「遅い」感情を流し込むことなんだと思います。

実際、ヴィパッサナー瞑想の最後にはメッターという慈愛の瞑想を行うのですが、思うに、わざわざメッターをしなくても、情動が止まった心には自然と感謝や慈愛の感情が入ってくるような感覚があります。

脳科学的には、ヴィパッサナー瞑想中は呼吸のコントロールをして帯状回を使い、意識を集中させて前頭葉を意識的に使っているので、この領域がつかさどる感情が自然と発現してくる、ということなのかもしれません。

心というのは身体と一緒で、訓練するとよりうまく使えるようになります。身体は訓練による変化が見えやすいのですが、心の変化は見えにくいものです。その為、心を正確に鍛えていくことは難しいのですが、それゆえ太古の昔から、人はその訓練の仕方を長い年月を使って作ってきています。

現代の瞑想やヨガは脳科学での研究結果も取り入れながら、より精緻化されています。非常に効果的なトレーニングだと思います。

関連記事

・「実体験:ヴィパッサナー瞑想の効果
・「ヴィパッサナー瞑想で得た10のおまけ効果
・「効果実感:瞑想で仕事の集中力を高める方法
・「通勤瞑想のススメ:電車の中でヴィパッサナー瞑想をする効果

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。 2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。株式会社かえる代表取締役。

プロフィール詳細

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