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コラム最近の私異文化に対応する

2022.7.8

イエベ・ブルベが流行るわけ

渡邉 寧 | 株式会社かえる 代表取締役

イエベ・ブルベって何?

「イエベ・ブルベ」ってご存知でしょうか?

中年以上の男性は多分殆どの人が知らない(私も知りませんでした)と思いますが、これはパーソナルカラー診断の一つなのだそうです。Wikipediaを見ると、パーソナルカラーとは

パーソナルカラー(英:Color analysis)とは、その人の生まれ持った身体の色(肌の色・髪の色・目の色など)と雰囲気が調和した色(=似合う色)のことであり、人それぞれ個性が違うように似合う色もそれぞれ違うとする視覚心理学的理論に基づく審美感のことである。

出典)wikipedia “パーソナルカラー”

イエベ・ブルベとはそれぞれイエローベース(黄み寄り)とブルーベース(青み寄り)の略なのだそうです。個人に似合う色を診断する方法には様々な手法があるようですが、イエベ・ブルベと呼ばれる診断法は、このイエローベースなのかブルーベースなのかという2分類と色調などその他の分類、更に春夏秋冬の4シーズンで分けて最終的に個人の特徴に即した分類を作成しているようです。

「その人らしさ(個性)」と「分類」という相反する概念

イエベ・ブルベという言葉は、化粧品や洋服のコーディネーションを考える際に、良く話題に出るそうです。私はつい先日(2022年の7月)にはじめて聞いたのですが、私の場合は化粧はしないし、洋服は、出来れば毎日同じ種類のシャツとパンツで過ごしたいと考えているような有様なので、まあ、自分が聞いたこと無くてもしょうがないな、と思いました。

今後も私自身がイエベ・ブルベを使うことは無さそうですが、一方で、イエベ・ブルベの話を見ていて面白いなと思うことがありました。なにが面白いと思ったのかというと、8つのカテゴリー、16のカテゴリーのうち、自分はどのカテゴリーなのかという話が割と盛り上がること。

イエベ・ブルベに限らないのですが、血液型にしろ、星座にしろ、カテゴリーに分けて人の特徴を語るフレームワークというのは、多くの人にとって興味深いものなのだと思います。

「自分らしいもの」「自分に似合うもの」という考え方は、突き詰めていくと一人一人異なるものになっていきます。だから、最終的には「似ているところもあるけれど、私とあなたに合うものはやっぱり(ちょっと)違う」ということになるはずです。しかし、話として盛り上がるのは「私とあなたの細かい違い」というよりは、「カテゴリーとしての共通項と、カテゴリー間の違い」であり、自分と他者との違いもカテゴリー間の違いから説明されます。

どうして人はカテゴリー化すること/されることが面白いと思うのか。イエベ・ブルベという概念を見ていると、そういう人の心の自然な働きが大変興味深いと感じます。

人の心は個人主義と集団主義の間で揺れている

人が自分を含めて人々をカテゴリー化すること/されることを面白がるのは、人が個人主義と集団主義の2つの相反する価値観を心の中に同時に持っているからではないか、という仮説を私は持っています。

「私は私、人は人」という個人主義的な価値観と、「私は誰かと同じ集団の一人」という集団主義的な価値観は、意味的には相反するのかもしれません。しかし、イエベ・ブルベで自分に合うカラーを選び、そのことを他の人と話す時、人は「私に合うものを探す」という個人主義的な感覚と、「私”達”にはこういう特徴がある」もしくは「私”達”は共通したフレームワークで話している」という集団主義的な感覚の双方を味わうことになるのではないかと思うのです。

そして、「私に合うものを探す」と「私”達”の共通した特徴を確認する・共通したフレームワークで話す」の、どちらの要素により強く楽しさを見出すかは、その人が持つ個人主義・集団主義の価値観に依るのではないかと思います。つまり、個人主義的な価値観を持つ人は、「私に合うものを探す」為の絞り込みが出来る便利なフレームワークとしてカテゴリー化を捉えて楽しんでおり、集団主義的な価値観を持つ人は、「私”達”の共通項がある」という事自体に面白さを感じ、他者と共通項があること自体を快く思っているのではないかと思うのです。

国の差もあるかもしれない

日本の場合は、個人主義的な楽しみ方と集団主義的な楽しみ方の双方が混在しているように思います。ホフステード指数でいうと、若干集団主義寄りではあるものの、個人主義・集団主義のスコアはほぼ真ん中で、若年層には個人主義的な価値観も良く見られるからです。

日本の集団主義・個人主義のスコア
ホフステード指標における日本の集団主義・個人主義のスコアは46。やや集団主義寄りの文化

一方で、欧米諸国はもしかしたら、より個人主義的な楽しみ方の方が多いのかもしれないということも思います。というのも、欧米はもともとの文化的な傾向がより個人主義の方向に寄っているからです。

イエベ・ブルベとは違うカテゴリー化の事例の話なのですが、先日、心理学を専攻するオーストラリア人の大学院生と血液型と性格の話をしていました。

彼が言うには、血液型の4つのタイプは性格を説明するには少なすぎるという感覚があるのだそうです。8〜16程度のタイプに分かれているのであれば、個人の話をするのに必要十分に細かく分かれている感覚を持つが、4つというのは個人の話をするには区分けが大きすぎる感覚があるようです。

人をカテゴリー化するフレームワークの中には、そもそも科学的な妥当性・信頼性の検証がなされていないものも多く、血液型で性格を説明するのは無理がありますが、それでも多くの日本人にとっては血液型と性格の関係はリアリティをもって受け入れられているように見受けられます。

このことは、科学的な観点とは別に、個人主義的な観点と集団主義的な観点で、そのフレームワークがどれくらいリアリティをもって受け入れられるか。また、どれくらい「楽しさ」を提供してくれるかが変わってくるということを示しているように思います。

私の心の動きを自分で思い返してみると、個人主義的な感覚と集団主義的な感覚の両方があるように思っています。「他人とは違う独立した存在でありたい」という感覚と、それでも「他人と共通項を共有していたい」という感覚の双方が心地よいと思います。皆さんはいかがでしょうか?

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。 株式会社かえる 代表取締役

プロフィール詳細

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