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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える

2025.11.5

サイバー攻撃は「もはや災害」:飲み屋でマルエフが頼めなくなった話からAIエージェント時代のリスクを考える – 歩きながら考える vol.161

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、AIエージェント時代のサイバー攻撃がめちゃ怖いという話。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は朝の通勤時間を使って、最近体験したちょっと驚いた出来事から、サイバー攻撃とAI時代のリスクについて考えたことを話してみようと思います。

飲み屋で実感したサイバー攻撃の影響

この間、ちょっと飲み屋に行ったんですよ。で、アサヒの生ビール、マルエフを頼んだんですね。そしたら店員さんに「すいません、今マルエフなくて、スーパードライでもいいですか?」って言われたんです。

「どうしたんですか?」って聞いたら、「いや、ちょっとアサヒさんが…」と。アサヒのサイバー攻撃って9月下旬だったはず。今10月下旬なのに、まだ復旧してないんだ、とちょっとびっくりしました。

で、その場でアサヒの株価を見たら案の定落ちていて、PBR1倍も切ってる状態。本当に大変なことになってるんだなって実感しました。

日経新聞の10月30日の記事「サイバー攻撃『もはや災害』」によると、アサヒは2025年9月29日にランサムウェア攻撃を受けて、国内20工場の生産を停止したとのこと。東日本大震災でも影響を受けた工場は10カ所だったそうで、今回の被害の方が規模が大きいということみたいですね。

受注も出荷も手作業にせざるを得なくて、処理できる量が激減。DXで全社のシステムが繋がっているからこそ、システムにサイバー攻撃が来るとオペレーションが全部止まっちゃう。

アスクルも同様にランサムウェア攻撃を受けて、無印良品の配送が止まっちゃってたのを思い出しました。

サイバー攻撃って、もう完全に災害レベルなんですよね。

初動の遅れが致命的になるとのことで、これはもう、大震災が来たとか火山が噴火したとか、そのレベルと同じ損害が出る「災害」として捉えないといけない時代になってるんだなって思います。

AIエージェント時代、リスクはさらに深刻化する

で、ここからが本題なんですが、この話が今後さらに悪化するんじゃないかって思うんですよ。

今はDXでネットに繋がって、クラウド化が進んでますよね。で、今後ここにAIエージェントが乗ってくる。自律的に発注をしたり判断をしたりする部分までAIに任せるようになったら、もし侵入されてそのAIの振る舞いを書き換えられたらどうなるか。

大量の誤発注をするとか、会社の資産を勝手に売り飛ばすとか、銀行取引で巨額の資金移動をしちゃうとか。そういうことも十分あり得るんじゃないかと思うんです。

AIエージェントを入れて便利にすればするほど、災害級どころか、事業継続の危機に至るようなリスクを企業は抱えることになる。これは本当にヤバい話だと思います。今は、AIによる業務効率化にまい進している状況ですが、AIをシステムに統合すればするほど、サイバー攻撃を受けた時の被害の規模も甚大なものになるんじゃないかと思いますね。

だからこそ、情報セキュリティの分野のサービスはこれからすごく大きくなるでしょうし、サイバー保険の保険料もかなり上がるんじゃないかなと思います。頭いい人がハッキングするんだから、ディフェンスする側も頭いい人が必要になる。正直、食いっぱぐれないためにはこういう業界もありかな、なんて思いますよね。

マトリックスが描いた世界が現実になる?

こう考えていると、映画『マトリックス』で見たような世界になるんじゃないかって思うんですよ。

マトリックスでは、仮想現実の世界の中をパトロールするエージェントがいて、その中の一人、エージェント・スミスがシステムの拘束から離れてウイルス化するんです。ネオに倒された際に救世主の能力の一部が上書きされ、メインコンピュータの接続から外れて制限がかからなくなった。結果、増殖能力を身につけて、コンピューター・ウイルスのように増殖してシステム全体が機能不全に陥るという展開でした。

AIエージェントがより進化していくっていうのは、もしかしたらマトリックスが描いていたような世界観が現実化するってことなのかもしれません。

一方で、AI化はものすごく生産性を上げてくれる。でももう一方で、本当に大きなリスクを事業も人類も抱えることになる。その第一歩を、今まさに目の前で見ているような気がするんです。

そして厄介なのは、これは完全には防げないってことなんですよね。ハッキングは100%防ぐのは無理だと言われています。特にヒューマンエラーが絡んでくる。間違えてメールをクリックしちゃったとか、そういうことは必ず起きる。だから、100パーセントは防げないという前提で、「いつか必ず起きる」災害として備えるしかない。

なかなか怖い世界に入っていくなという気がします。

まとめ

というわけで、今日は飲み屋でマルエフが頼めなかった話から始まって、サイバー攻撃が「もはや災害」になっている現状と、AIエージェント時代に向けてさらに深刻化するかもしれないリスクについて、歩きながら考えてみました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。もしこの記事が面白いと思ったら、ぜひSNSでシェアしてくれると嬉しいです。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

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