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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える
2025.10.14
公明党の連立離脱を見て、我が身の人間関係を反省した話- 歩きながら考える vol.146
渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)
今日のテーマは、公明党の連立離脱で26年ぶりの政局になりそうな状況を見て感じたこと。政治の話じゃないですが。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は昼休みの散歩をしながら、ちょっと大きなニュースについて考えたことを話そうと思います。2025年10月10日、公明党が自民党との連立政権から離脱するって発表されましたよね。26年ぶりのことで、下手したら政権交代にまでつながるかもしれないという大きな局面。でも、これを引き起こしたのって結局「関係性」なんだなって、すごく考えさせられたんです。
公明党の連立離脱:26年ぶりの大転換
まず事実関係から整理すると、公明党の斉藤鉄夫代表が10日の党首会談で、連立政権から離脱することを高市早苗総裁に伝えましたね。理由として挙げられたのは、①政治とカネの問題(企業・団体献金の規制強化)、②靖国神社参拝をめぐる歴史認識、③外国人との共生政策、の3点ということですね。
報道を見ていると、これは突然起きたことじゃないみたいなんですよね。公明党と創価学会の中で、ずっと溜まっていたマグマが爆発したという表現がされています。実際、学会員からは「自民党に煮え湯を飲まされてきた」「これからは胸を張れる」という歓迎の声も上がっているそうです。
何が堪忍袋の緒を切らせたのか。2024年10月の衆議院選挙では、自民党の裏金問題の逆風を公明党も一緒に受けて、議席を大幅に減らしました。特に象徴的だったのが、山口那津男さんの後任として2024年9月に代表に就任したばかりの石井啓一代表が落選してしまったこと。これは本当に大きな打撃だったんじゃないかと思います。
そして高市政権になってから、さらに公明党の不満が爆発する要因が重なったように見えます。萩生田光一さんを幹事長代行という要職に戻したこと、公明党より先に国民民主党と極秘で連立拡大の話をしていたこと。長年のパートナーへの礼を欠いているように見えたということらしいんですよね。

世界を動かすのは「当たり前」の関係性
こういう話を聞いて思い出すのって、「親しき中にも礼儀あり」って、当たり前のことじゃないですか。でも、その当たり前のことが守られていないと判断されたときに、26年続いた連立が解消され、下手したら政権交代にまでつながるかもしれないという、日本の政治を大きく揺るがす事態になったということに見えるんですよね。
これってすごく興味深いことだと思うんです。世の中を大きく動かす話って、結局そういう関係性、特に昔から言われている人と人との関係の適切なあり方が抜けたり雑になったときに起こるんじゃないかと。経済政策とか外交の基本方針の一致とか、そういう政策的な話よりも、「一緒にやってきたパートナーへの感謝や配慮を忘れない」という、極めて基本的な人間関係がこじれた時に大きな変化が起こるという話なんじゃないかなって思うんです。
自民党と公明党の関係を見ていると、1999年から26年間、お互いに支え合ってきたわけですよね。公明党は小選挙区で自民党候補を支援し、自民党は公明党の比例票獲得に協力する。でも、報道によると、自民党候補によって協力度合いに温度差があり、学会内では「こちらが一生懸命自民党候補を支援しているのに比べ、見返りが少ない」という不満が募っていたそうです。
そこに裏金問題が起きて、公明党も一緒に批判を浴びる。それでも我慢してきたのに、新しい総裁になったら、長年のパートナーより先に別の政党と話をする。これ、政治の話というより、人間関係の話に見えますよね。

マクロもミクロも、構造は同じ
で、これを見ていて、僕自身すごく反省したんです。自分も似たようなことをやってきてしまった人生だったなって。
一緒にやってくれている人、協力してくれている人、そういう既存の関係性に対する配慮が足りなくなってしまう。別に悪気があるわけじゃないんです。でも、人に対する配慮ではなく、違うところにエネルギーを使っている。考えることでしか付加価値が出せないから、ひたすら考え続ける、という。
多分、親しい間柄になればなるほど、そういうことって起こるんじゃないでしょうか。家族とか、古い友人とか、長年一緒に働いてきた仲間とか。そこへの感謝を忘れて、気がついたら関係が壊れていた、みたいなこと。
高市さんのことを考えると、僕は政治的な立場としてはほとんど納得できないことが多いんですけど、個人としては非常に謙虚でいい方だという話をよく聞きます。ご主人の介護をされながら総裁選という激戦をやられて、それも並大抵のことじゃない。だけど、そういう人でも、おそらく新しい体制を作ることに意識が向きすぎて、既存のパートナーへの配慮が後回しになってしまったのかもしれません。
これって、マクロの政治の世界でも、ミクロの個人の人間関係でも、構造的には大して変わらないんじゃないかと思うんです。
まとめ:関係性こそが幸福の鍵
今日、歩きながら考えていて思ったのは、結局、人間社会って昔から変わらないんだなってことです。どんなに技術が進歩しても、経済が発展しても、最終的に大事なのは「関係性」なんですよね。
その関係性をどれだけ大事にできるかっていうことが、政治の安定にもつながるし、個人が幸福に生きられるかどうかの最も大きなポイントなんじゃないか。
常に常に感謝し続けるっていうのは、日々忙しい中でなかなか難しいのかもしれません。でも、定期的にそれを思い出すような、日々の生き方の実践が必要なんだと思います。「親しき中にも礼儀あり」っていう格言が今も生きているのは、こういう一件が定期的に起こるからなんだと思いますね。
というわけで、今日は公明党の連立離脱という大きな政治ニュースから、人間関係の本質について考えてみました。自分自身への反省も込めて、もうちょっと、真面目に生きていきたいなという風に日々思っております。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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