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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える

2025.8.8

SNS選挙への対抗策:AIは民主主義を救えるか? – 歩きながら考える vol.102

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、SNS時代の民主主義を支える次世代テクノロジーについて。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は駅から家に向かって歩きながら、先日の参院選について考えてたことを話してみようと思います。

8月4日の日経新聞で「参院選総括、SNSに重点」という記事を読んだんですけど、各党がSNSの使い方を振り返ってるっていう話でした。で、これを読んでて、ちょっと日本の選挙の在り方について、歩きながらモヤモヤ考えちゃったんですよね。

政策なんて誰も見てない?という不都合な真実

まず最初に、ちょっと身も蓋もない話から始めたいんですけど、大半の有権者って実は政策なんて見てないですよね。

今回の参院選でも各党が「消費税減税/廃止」とか、「ガソリン税の暫定税率廃止」とか言ってましたけど、結局みんな似たような話になっちゃうんですよね。なんでかっていうと、経済政策って突き詰めると「生活が苦しいから政府がお金を配る」って話になって、給付するか減税するか、方向性はどこも同じで違うのは規模感と期間だけなんです。

しかも有権者の中には「財源は?」って心配する人もいるから、極端な政策を出せばよいというわけでもない。

じゃあ、どうやって投票先を決めてるのかっていうと、結局ヒューリスティクス、つまり直感的な判断で決めてるんじゃないかと。

特に「この人は頼れるリーダーか」という印象で投票先を決めているように見えるんですよね。なぜなら、頼れるリーダーならちゃんとした政策も実行してくれるだろうっていう期待があるから。細かい政策は考えたくないから、頼りになりそうなリーダーにお任せをしたいというのが大半の有権者の本音じゃないかと思います。

15秒の動画と160文字で決まる選挙

ここで問題になってくるのが、SNSを使った選挙運動だと思います。

TikTokなら15秒、Xなら160文字という短い時間と文字数の中で「頼れるリーダー」の印象を作らなきゃいけないっていう、そういう勝負になってしまってますよね。

じゃあ、どんな人が「頼れる」と思われるのかっていうと、エモい演説ができる人論破シーンを作れる人っていうことになってるように思います。

しかもSNSには困った仕組みがあって、いいねや再生回数が増えると投稿した人に広告収入が入ったりするから、一般の人たちがこぞって再生数が稼げる政治家の「切り取り動画」を作るっていう現象が起きています。

デマでも論破に見える恐ろしさ

でも、ここからが本当の問題で、エモい演説や論破シーンってどうやって作るかっていうと、そこにデマや嘘の情報が入り込む余地があるんです。

例えば討論で、相手が確認できないような細かいデータをペラペラ言えば、相手は一瞬「うっ」ってなりますよね。見てる人はそれを見て「すごい!頭いい!」って思っちゃいますよね。でも、それが誤情報かもしれないし、怪しい数字でも自信満々に言えば本当に見えてしまうっていう恐ろしさがあります。

エモい話も同じで、感動的なストーリーを語るけど実は都合の悪い部分を隠してたり、別の解釈があったりしますね。でも、日々の演説や討論はすぐに流れて行ってしまうから、作り話がちょっと入り込んでいたとしても反論なんてできないわけです。

結局、今の選挙は「中身より見栄え」で決まる要素が非常に大きくなっているように思います。これだと民主主義は成り立たないと思いますね。貴族制の方がましなのでは?という議論が出てくるのも時間の問題かもしれません。

AIファクトチェックは希望となるか?

じゃあ、どうすればいいのかって歩きながら考えてたんですけど、やはりテクノロジーを使うしかないんじゃないかと思います。例えば、AIを使ったリアルタイムファクトチェックみたいな技術。

想像してみてください。政治家が演説で数字を出したら即座にAIが「その数字の出典は?」「正確性は?」って確認して、チェックした情報を提示する。感動的なストーリーを語ったら「別の視点もありますよ」って提示する。

こんなシステムがあれば、政治家は誤情報で見栄えをよくすることが難しくなります。見栄えだけの政治から中身のある議論に戻らざるをえなくなるんじゃないでしょうか。技術的にはもう可能だと思います。

問題は、誰がどう実装するかっていうことで、選挙管理委員会がやるのか、メディアがやるのか、それとも市民団体がやるのか。僕はこれは次世代のメディア/ジャーナリストの役割なんじゃないかと思います。

AIは万能じゃないけど、少なくとも「見栄えだけの政治」への対抗策にはなるはずです。

まとめ

というわけで、今日は「SNS政治への対抗策」について、歩きながら考えてみました。

もしこの話に共感したり違う意見があったりしたら、ぜひSNSでシェアして教えてください。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。家に着いたので、今日はこの辺で。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

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