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2019.5.28

組織開発における「ドリルの穴」問題

渡邉 寧 | 株式会社かえる 代表取締役

「ドリルの穴」との距離感

「チームコーチング」ピーター・ホーキンズ著の読書メモ。

ドリルを買う人が欲しいのは、ドリルではなくて「穴」である」は、マーケティングを学ぶと必ず教わるT・レビット博士の著書の一節です。

人と組織の領域で仕事をしていると、次から次へと方法論やアプローチが出てきます。しかし、クライアントが欲しいのは方法論やアプローチではなくて「成果」。どのような成果をクライアントが欲しているのかはケースバイケースですが、クライアントの「ドリルの穴」に注意を払わず、方法論やアプローチから話を始めるのはサプライヤーズロジックだと感じます。

組織の課題は「人」に関わる為、明確な因果関係では捉えられないことが多い。その為、一見すると「何を目的にやっているのかわからない」アプローチが有効に機能することがあります。なぜ効果があったのか綺麗に説明することは難しい。だから、普段明確な因果関係で物事を解きほぐそうとする人は、一旦評価判断を脇において体験的にやってみることは必要だと思います。

と同時に、これらのアプローチがクライアントの「ドリルの穴」から離れすぎると、何をやっているのか本当に良くわからなくなる。外部支援で組織に関わる場合は、このバランスを上手く取るのが難しいな、と思います。

チームコーチングのスタンス

その意味で考えると、ピーター・ホーキンズの「チームコーチング」のスタンスは極めて「穴」ドリブン

彼は自分自身のアプローチを「システミック・チームコーチング」と呼んでおり、このアプローチにおいては、

(システミック・チームコーチングでは)焦点が主として集合体としてのチームやその目的、パフォーマンス、プロセスに合わせられ、チーム内の個人やその人間関係の発展は二次的なものとみなされている

と言います。

外部支援者としての焦点はクライアントにとって必要な「穴」であるべきで、上記のように自らのスタンスを定義することで「継続的に高業績を出す組織」のようなクライアントの本質的ニーズに足並みをそろえて支援を行うことになります。

また、システミック・チームコーチングにおいては、チームの外側に存在する顧客やその他ステークホルダーとチームとの関係も視野に入れます。チームの業績はチーム内ではなく、チームの外の世界との関わりの中でもたらされるものです。

よって、チームがチーム外の利害関係者グループに効果的に関わり、成果を上げる支援を行うとします。

サッカーチームのコーチのスタンス

プロサッカーにもコーチ(監督)と言われる人がいます。英国プレミアリーグで先日(2019年5月)2連覇を果たしたマンチェスター・シティのペップ・グラルディオラ監督や、最後までシティと激戦を繰り広げたリバプールFCのユルゲン・クロップ監督も「コーチ」です。

彼らはフィールドの外でチームに関わります。自身がプレーをすることはありません。しかし、チームの勝利という最終目標の為に、フィールドの外で出来るあらゆる手段を尽くします。クラブは「勝利」という「穴」を欲しており、その「穴」をあけてくれるコーチを必死で探して雇います。

企業に対する外部支援者のスタンスを考える時、私はこうしたプロサッカーチームのコーチのスタンスから学ぶことは多いのではないかと感じます。つまり、見据えるものは常にクライアントの最終目標であるべきで、その最終目標を達成する為に必要な手立てをゼロベースで考えるべきだと思うのです。自分がすでに持っているアプローチが有効であるならば使うし、そうでないのであれば違うアプローチを採用する。

得意なアプローチはその人のスペシャリテだから使えば良いと思いますが、あくまでそれはクライアントの最終目標を達成する為。

そういう意味で言うと、ピーター・ホーキンズのチームコーチは、プロスポーツの「コーチ」とスタンスが似ているのかな、と感じます。プロスポーツのコーチとは違って、明示的な人事等の権限は無いかもしれないけれど、クライアントの最終的な成果(=ドリルの穴)からは目を離さない外部支援者。自分がクライアントだったら、そういう外部支援者に支援を仰ぎたいと思います。

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。 株式会社かえる 代表取締役

プロフィール詳細

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