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組織の言語を作る組織デザインを考える組織文化の作り方

2016.8.16

「組織の言語」を作りましょう|組織文化の作り方

渡邉 寧 | 株式会社かえる 代表取締役

戦略か組織か

最近、戦略よりも組織について課題感を持つ企業シニアマネジメントに良く会います。

「社内に活力が無い。創造的なアイデアが出てこない。この組織問題の解決なくしてはどうにもならない」など。

「戦略か組織か」という議論があります。「組織は戦略に従う」と言ったチャンドラーと、「戦略は組織に従う」と言ったアンゾフ。

これは振り子のようなもので、時代によってどちらが重視されるかは変わります。今の時代を見渡すと、2000年代の後半になって、組織の方が戦略よりも重要と考える人の数が増えているように思います。理由は色々とあると思いますが、戦略が陳腐化するスピードが速くなったことが一番の理由なのではないかと思います。

時間をかけて調査・分析・議論し、戦略を立てているうちに、その戦略の賞味期限が切れてしまう。であれば、組織能力を上げることに集中した方が良いのではないかという考え方。組織能力を上げることで、実行する組織がどんどん戦略をアップデートすることが可能になるという考え方です。

米国の組織開発の歴史を見ると、2000年代以降は、「素早く変化する戦略を実現する組織を構築する」ということが組織開発の中心テーマになっており、その中でも特にリーダーシップ開発が重要視されています。

組織文化はなぜ重要か

リーダーシップ開発。

確かに重要なんですが、私は、組織開発において、日本の場合はリーダーシップ開発より「組織文化」の開発の方が重要だと思います。
なぜなら、日本文化はアメリカ文化に比べて個人主義の程度が低く、集団の意向を気にする文化だからです。

日本では、「空気を読む」という表現をしますね。組織文化のような「目に見えないけれどそこに漂っているもの」が個人の行動に強い影響を与えます。その為、この組織文化のようなものをどう意識的にデザインしていくかが組織のパフォーマンスには大きく影響すると考えます。

企業の競争力につながる組織的要素を「①基盤的プロセス(コミュニケーションや関係性)」と「②組織能力(専門知識やプロセス能力)」に分けることがあります。

組織文化は、①②の両方に影響を与えます。組織文化は、どのようなコミュニケーションや関係性のあり方を理想とするかの指針となります。同時に、組織文化はどのような専門知識やプロセスを作っていく能力を称賛するかの指針ともなります。

そういう意味で、「どのような組織文化を作るか?」という問いは、目指す組織の姿を作るにあたって最初の一歩であるべきです。

組織文化の作り方

とは言え、組織文化とは抽象的な概念です。
組織文化を作る」とは具体的に何をすることなのでしょうか?

組織文化の作り方には様々な方法がありますが、私は組織文化を作るプロセスは、

①組織文化を立体的に見える化し、設計図を作ること
②その上で、組織の言語を作ること

という2つによって出来ていると考えます。

まず、「①組織文化の設計図」を作る

組織文化は目に見えません。概念的で非常に扱いずらい。

その為、まずはそれを見えるようにすることが必要です。

その為に、文化を軸で図り、数値などで視覚化する方法があります。立体的に文化を可視化し、変化をデザインしていく方法です。(こうしたフレームワークは色々ありますが、私個人としてはホフステードの組織文化モデルを使用しています)

文化の数値化は確かに単純化され過ぎて本質からずれる危険性をはらんでいます。しかし、それにより、自分たちの組織文化を作ろうと考える複数の人々が共通の認識をもって議論できる利点がもたらされます。

組織文化を軸によって可視化することで、組織文化の「設計図」が描きやすくなります。軸でまず組織文化の骨組みを作り、そこに豊かな言葉やイメージで肉付けをしていく感覚です。

そして、「②組織の言語」を作る

組織文化の設計図が出来たら、具体的にどのようにその組織文化を作っていくかを考えます。

組織文化を作る具体的な行動には様々なものがあります。例えば、「より目的志向でイノベーティブな組織文化を作る」のであれば、「社内ベンチャー制度を作って、新規事業数を増やす」という制度設計が出てくるかもしれません。

新しい行動を奨励したり、制度を作ったりすることももちろん組織文化を作ることに貢献します。

しかし、それだけでは十分ではありません。なぜなら、組織文化とは人が共通して持つイメージの総体であり、その共有イメージを作ることなくして、組織文化は完成しないからです。

この時に、大切なのが「組織の言語」に着目することです。なぜなら、イメージの骨格は言語によって作られているからです。

独自の組織文化を持っている企業に行くと、共通して気づくことがあります。それは、「その企業独自の言葉を使っている」こと。

例えば、かつてのリクルートの人からしばしば「ビル倒し」という言葉を聞くことがありました。飛び込み営業でビルの上から下まで訪問することですが、この言葉はかつてのリクルートの組織文化の一端を良く表しているように思いました。

「大変なんだよ~」と言いながらも、どこか誇りを持っているような感覚。こうした言葉を中心としたイメージの総体が組織文化を作っています。

だから、組織文化を作る際には、行動プランや制度設計の前に、どのような「組織の言語」を文化の核に据えるのかを意図的・意識的にデザインしていく必要があるのです。

「方言」にすることがポイント

そしてもう1つ、この「組織の言語」はなるべく「方言」であることが重要です。

他の組織とは違う「言葉」を使うことがポイント。なぜなら、そうすることで、他の組織とは異なる「我々らしさ」の意識が高まるからです。

例えば、「フィジビリ」「アスピ」「オブリ」「ジャストアイデア」「ブレストベース」などいわゆるリクルート用語と言われるものがたくさんあります。

どんどん考えて、どんどん試していく。個人の行動力と当事者意識を問う、という組織文化が、こうしたリクルート用語からは透けて見えます。

こうした「方言」を組織内で使い続けることで、自分達の何が特別なのか、自分達ならではの組織文化とは何なのかということが組織の中で定着していきます。

結局、組織開発コンサルティングとは何なのか

こうしてみると、組織開発のコンサルタントは、「組織言語学者」なんだろうと思います。その組織が作りたい組織文化を一緒に考え、それを定着させるための言語を作るということ。

組織文化開発≒組織言語開発、なんだと思いますね。

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。 株式会社かえる 代表取締役

プロフィール詳細

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