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組織デザインを考える

2019.5.4

あるべき組織デザインをサッカーの比喩から考える

渡邉 寧 | 株式会社かえる代表取締役

「闘うサッカー理論」湯浅健二著の読書メモです。最近、サッカーを観ていると、「あ、これ会社組織でも一緒だ・・・」と思うことが非常に多く、サッカーと企業経営との接点を考えるために「闘うサッカー理論」を読んで考えをまとめました。

組織を何かに喩えるということ

「私は会社を森にしたいんです」

ヤフーの宮坂会長が社長時代にそんなことを言っているのを聞いたことがあります。「森」と言われると、多様な生き物が居て、四季の流れの中で何かが生まれ・朽ちていく循環する生態系をイメージします。

「会社が森であるとしたら、じゃあ実際の社員の役割はどのようなものだろう?チームの関係性はどうなのだろう?組織形態はどうあるのだろう?どんな思いで人々は働いているのだろう?」といったアナロジー(類推)が次々と引き起こされます。

アメリカの言語学者ジョージ・レイコフは、メタファー(比喩)は人が物事を概念的に捉える際に必須の認知能力であると言いました。

どういう組織を作るのか?を考える際、組織を何かに喩えてみて、そこからアナロジーを使って目指すべき組織の姿を考えることは様々な示唆をもたらします。

会社組織をサッカーチームに喩える

組織開発、組織変革、組織デザイン・・・・
組織をどう作るか?は非常に難しいテーマです。様々なアプローチが存在し、方法論に関してさえ全体像を把握することは容易ではないし、現実的に強い組織/良い組織を作ることは本当に難しい。

こういう時こそ、メタファーを使って「組織はどのように出来ているのか?」「どうすれば組織は機能するのか?」ということを考えることが有効だと思うのです。

サッカーを観るようになって本当に思うのですが、会社組織をサッカーチームに喩えると様々なアナロジーが働き、様々な発見があります。

会社組織もサッカーチームも「ある目的を達成する為に集団で行動するもの」なので、構造的には近いものです。しかし、サッカーの方が活動としてはシンプルです。フィールドやルールの枠組みが有り活動が限定されています。(それでもサッカーは「複雑系」スポーツで何が起こるか予測するのは難しいと言われている)

この限定的な複雑系の環境でいかに強いチームを作るかということをサッカーに関わる人たちは考えており、限定された環境で方法論が作られている分、シンプルで実践的な組織作りの方法論がまとめられています。

会社組織の営みはサッカーの試合より複雑であることが大半ですが、単純化された状況でのサッカーの方法論が「仮に自分の会社組織でも有効であるとしたら自組織はどうあるべきか?」を考えると、様々なアナロジーから有用な示唆が出てきます。

会社組織におけるフリーランニング

例えば、湯浅さんの「闘うサッカー理論」では「フリーランニング」の重要性が述べられています。サッカーの試合は90分ですが、一人の選手がボールを触る時間は2~3分程度で、長くとも5分くらいなものなのだそうです。残りの時間選手は何をしているかというとフリーランニング、つまりボールを持たずに動いているわけです。

選手の大半の活動はフリーランニングであり、このフリーランニングをどのように組織として効果的に行えるかがチームの強さに大きく関わってきます。

「彼がボールを持ったらきっとここにパスを出すから、自分はこちらに走ってスペースを作ろう」というような、状況認識と判断を各選手が行い、かつそれらがチームとして連動している必要があるわけで、それが的確だとチームとしての力は強くなっていきます。よって、練習ではそのような連動したフリーランニングが出来るようになることを目指しトレーニングを組んでいくわけです。

会社組織に関しても似たようなことは言えると思います。すなわち、一人一人は役割を持って仕事をしているわけだけれど、どのように仕事をつないで組織としての成果につなげるかはチームの関係性によって変わってくるわけです。会社組織の中でのフリーランニング、すなわち、直接のアウトプットではないけれど、組織としてのアウトプットに繋がる個々人の動きがどれだけ効果的になされるかは、組織力に大きく影響します。

「やると約束した仕事はやりました」という態度は個人としては大事だけれど、組織力を考えるともう一歩のフリーランニングが必要で、そうした共通認識を持ち、かつ直接のアウトプットではないフリーランニングを認知・評価する仕組みが組織には求められると思います。

組織デザインを考える上でのサッカーの比喩

経営学の領域で、組織の分業と調整の仕組みを考えることを組織デザインと言います。ホロクラシーのような自主管理型組織が良いのか、伝統的な階層型組織が良いのか、色々と議論がなされていますが、こうした最適な組織デザインを考える際にもサッカーの比喩は示唆を示してくれます。

要は、組織デザインの最先端の正解など無いのです。

バルセロナやマンチェスターCのようなチームが強いからと言って、その組織デザインを真似しようとしてもそれは無理な話です。選手やクラブ、文化などの要素が違いすぎます。同じことは会社組織の組織デザインにも言えます。現場の組織デザイナーが出来ることは、目標と環境要因を照らし合わせて、最適解を探索していくことでしかありません。その照らし合わせをせずに「これからの組織はこうあるべきだ」などと組織いじりをするのは得策ではありません。

サッカーは勝敗がすぐにわかるため、組織デザインの変更は本質的に結果に繋がる必要があります。大胆に組織を変えつつ、現実的に考える。そうした組織デザインの態度は会社組織の組織デザインを考える上で参考になると思います。

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。 2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。株式会社かえる代表取締役。

プロフィール詳細

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