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今日のテーマは、街中スタジアムの可能性について。コミュニティのウェル・ビーイングの観点から考えます。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は移動時間を使って、「街なかスタジアムが幸福の増幅装置になる話」をお届けします。8月15日の日経新聞の記事で、清水エスパルスが駅から徒歩2分の場所に新スタジアムを作るという話を読んでたんですけど、そういえば最近、街の中心部にスタジアムを作る動きが増えてるなって。今回はその話から、スポーツとウェルビーイングの関係について、歩きながら考えてみようと思います。
街なかスタジアムという新しいトレンド
記事によると、清水エスパルスの新スタジアムはJR清水駅から徒歩2分のENEOS保有地に作られる予定で、スタジアムだけじゃなくてホテルや商業施設も含む複合開発になるそうです。
実はこれ、最近の明確なトレンドなんですよね。2024年2月に開業した広島のエディオンピースウイング広島は、原爆ドームから徒歩10分くらいの市中心部にあって、試合後すぐに街で飲みに行ける。去年10月にオープンした長崎スタジアムシティは、半年で250万人を集客したそうで、こちらもオフィス、宿泊施設、ショッピングセンターを併設した複合施設になってます。
僕は京都在住なんで、亀岡のサンガスタジアムby KYOCERAによく行くんですけど、こちらは2020年にできて、駅から徒歩3分。厳密には街の中心部ではないけど、駅チカでアクセスがいいっていう意味では素晴らしいスタジアムです。
なんでみんな「街なか」にこだわるのか。ここにすごく大事な理由があると思うんです。

エンターテインメントとしてのスポーツの難しさ
実はサッカーとかラグビーって、毎日試合ができないんですよね。選手の疲労があるし、接触プレーが多いから怪我のリスクも高い。野球みたいに毎日興行できない。だから平日のスタジアムをどう有効活用するかっていうのが、経営的にはすごく重要になってくる。
複合施設化っていうのは、この課題に対する一つの答えなんですけど、実はもう一つ根本的な問題があって。
エンターテインメントとしてのスポーツって、構造的にすごく難しいと思います。だって、引き分けを除けば2回に1回は負けるわけじゃないですか。勝ち負けが最大の楽しみの源泉ではあるけど、よっぽどの強豪チームじゃない限り、観戦の半分はストレスを感じることになる。エンターテインメントとして考えると、これってなかなか厳しい構造ですよね。
でも面白いのは、実際のファンは負けても応援を続けるし、弱小チームにも熱狂的なファンがいる。なぜか。それは、勝ち負けを超えた別の価値を見出してるからなんです。そのキーワードが「推し活」なんじゃないかと思うんです。
推し活がもたらすユーダイモニア的幸福
ここで少し心理学の話をさせてください。ウェルビーイングの研究では、幸福には「ヘドニア」と「ユーダイモニア」という2つの種類があるって言われてます。
ヘドニアは分かりやすくて、ポジティブな感情や満足度のこと。自分のチームが勝った時の「やった!」っていう喜びですね。でも、これだけだと2回に1回しか幸せになれない。
一方で、推し活って違う種類の幸福をもたらすんです。例えば、推している選手の成長を見守る喜び。「大卒で入ってきたあの選手、3年でこんなにプレーが良くなった!」って、勝ち負けじゃないし、しかも自分のことじゃないのに深い満足感がある。あるいは、同じ選手を応援するファン同士でSNSで繋がったり、「あの時のプレー、良かったよね」って共通の思い出を語り合ったり。
こういう、意味や目的、成長、人との繋がりから生まれる幸福感を「ユーダイモニア」的幸福感って言うんです。これは勝ち負けから来る感情に左右されない、より持続的で深い幸福なんですよね。
街なかスタジアムの良さって、このユーダイモニア的な幸福を増幅させる装置として機能することだと思うんです。アクセスがいいから頻繁に通えて、自然とファン同士の交流が生まれる。試合後に街で偶然会って一緒に飲んだり、普段の生活の中でもすれ違ったり。そういう日常的な繋がりが、コミュニティを強くしていく。

ウェルネスと接続する新しい可能性
そして街なかスタジアムには、さらにもう一つ大きな可能性があると思っていて。それは「ウェルネス」、つまり健康づくりとの接続です。
試合がない平日のスタジアムで、地域の人向けにウェルネスプログラムを開催する。例えばフットサル教室とか、ヨガとか、誰でも参加できるような軽い運動イベント。スタジアムという特別な場所で体を動かすって、それだけでちょっとワクワクしませんか?
身体的な健康(ウェルネス)が向上すると、それが総合的な幸福感(ウェルビーイング)に繋がっていくっていうのは、研究でも明らかになってます。つまり、スタジアムがエンターテインメントの場所であると同時に、地域の健康づくりの拠点にもなれるんです。
長崎スタジアムシティは試合がない日もスタジアムの座席を開放してるそうで、これも素晴らしい取り組みだと思います。「今日ちょっとスタジアムでランニングしてくる」とか「スタンドでヨガやってくる」みたいな使い方が当たり前になったら、それは新しい都市のライフスタイルになるんじゃないでしょうか。
清水の新スタジアムも、単なるサッカー観戦の場所じゃなくて、地域のウェルビーイングを高める装置として設計されたら素晴らしいなと思います。勝っても負けても、そこに行けば何か良いことがある。そんな場所になってほしい。
というわけで、今日は「街なかスタジアムが幸福の増幅装置になる話」を歩きながら考えてみました。スポーツって、ただ観るだけじゃなくて、人と繋がったり、健康になったり、いろんな幸せの形を生み出せるんだなって改めて思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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