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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える

2026.1.15

AIがちょっとエッチな例文を作ってくる件と、その学習効果について – 歩きながら考える vol.208

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、AIを使った英語学習について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は短めに、最近試してみてすごく良かったことをシェアしようと思います。テーマは「AIを使った英単語の暗記法」。ちょっと意外な発見があったので、歩きながら話してみますね。

AIで落ちた英語力を、AIで鍛え直す

実は今年に入ってから、英語力を鍛え直すプロジェクトを始めています。きっかけは、AIを使いすぎて英語力が落ちたこと。翻訳も要約もAIがやってくれるから、つい楽しちゃって、自分で英文を読む機会が減っちゃったんですよね。いわゆる認知的オフローディングってやつです。

で、これはまずいと思って、BBCのニュースを毎日読みながら、馴染みのない単語やイディオムをAIと確認する、という学習を始めました。以前のブログで書いたように、アメリカ式やフランス式のコミュニケーションスタイルを意識しながら英作文して、議論の練習もしています。

で、やっているうちに思いついたことがあって。BBCの記事で出てきた単語の意味を確認するのはいいんですけど、記事をクリッピングしているわけではないので、そのうちまた忘れちゃうよなと。繰り返し練習することを前提とした教材で、似たようなこと(AIを使った学習)ができないかなと思ったんです。

そうだ、単語帳があるじゃないか、と。

僕、昔から単語帳を使った暗記がすごく苦手で、大学受験のとき「英単語ターゲット1900」っていう有名な単語帳があったんですけど、1500語くらいしか覚えられなかったんですよ絵。暗記がつまらなくて。で、そでもなんとかなっちゃったんですよね。わからない単語は文脈から推測すればいいや、って。

でも、今読んでいる論文とか世界情勢の記事って、それじゃ困るんですよ。わからない単語やイディオムを推測する方に認知的リソースを使っちゃうので、肝心の内容の理解が浅くなる。どうにかして単語量を増やせないかな、というのはずっと思い続けていたことでした。

Grokがちょっとエッチな例文を作ってくる

で、最近試してみたのが、単語帳の暗記をAIと一緒にやるというやり方。これが結構効果的なように感じてます。

なぜ効果的かというと、単語やイディオムを覚えるときって、例文やイメージを付随させると記憶の定着が強くなるじゃないですか。感情的に強い刺激、たとえば笑いとか驚きとか、ちょっとした背徳感みたいなものは、記憶に残りやすいことが心理学でも知られています。で、AIはその「記憶に残りやすいイメージ」を、いくらでもカスタマイズして作ってくれる。

ここでちょっと変な話になるんですけど、僕が使っているGrokというAI、イーロン・マスクのxAIが作ってるやつなんですが、これがなかなか不真面目なんですよ。

単語を覚えるときに「記憶に残りやすいイメージで例文作って」って頼むと、ちょっとエッチなシーンで例文を作ってくるんですね。私が中年の男性ということがバレてるんですかね?(笑)

これ、市販の参考書では絶対に見ない例文ですよね。参考書って万人向けに作られているから、誰にとっても無難な例文しか載せられない。でもAIは、その人の興味や感性に合わせて、強烈なインパクトのある例文をいくらでも作れる。

良いのか悪いのかはちょっと置いといて、確実に記憶に残るんですよ。人生で一度も単語帳を覚えきったことがない僕が、「これならできるかも」と思い始めている。これはちょっとした革命かもしれません。

こんな覚え方で大丈夫なのか問題

とはいえ、こんなエッチな文脈でばっかり単語を覚えていったら、ちょっとまずいんじゃないかと思いますよね?(笑)

実際、気をつけなきゃいけないこともあると思っています。

まず、そういうイメージが単語にくっついちゃう可能性がある。真面目なビジネスの場面で使おうとしたときに、変な連想が浮かんできたら困りますよね。また、特定の文脈でばかり覚えていると、他の場面での応用力が実はついていなかった、なんて事態にもなりかねません。

それから、今は「こんな例文で覚えやすい!」と思っているかもしれないけど、それは最初にびっくりしたからであって、一時的なことかもしれない。心理学でいう「ヘドニック・アダプテーション(快楽適応)」の問題ですね。刺激に慣れてしまうと、同じ効果が得られなくなる可能性もあります。

さらに言えば、自分の興味に合わせた例文ばかりで覚えていくと、結局、自分が関心を引かれるような文脈でしか単語を学ばないことになる。学習って本来、自分の興味がないことでも学んでいくうちに興味が湧いてくる、ということもあるじゃないですか。AIが完全にパーソナライズしてくれる学習環境では、この「学びのセレンディピティ」が失われる可能性がある。

まとめ:入口は狭く、出口は広く

というわけで、僕が今考えている戦略はこうです。

単語を覚える段階では、不真面目なパーソナライズを存分に活用する。どうせ覚えられないなら、記憶に残るやり方で覚えた方がいい。

でも、覚えた単語を実際に使う段階では、自分の興味外のテーマにも意識的に挑んでいく。獲得した英語力を使って、好き嫌いせずにいろんな分野の文章を読んでいく。

つまり、「入口は狭く深く、出口は広く」という二段階戦略。

AIで落ちた英語力をAIで鍛え直す。でも、AIに依存しすぎて視野が狭くならないように気をつける。この意識を持てるかどうかで、AIが学習のパートナーになるか、それとも知的な怠惰を加速させるものになるかが分かれるんじゃないかと思っています。

この記事が少しでも面白い・役に立ったと思ったら、ぜひいいねやフォローをしてくれると励みになります。最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

プロフィール詳細

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