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ブログ歩きながら考える

2025.11.25

人間ドック、やめてみようかなと思った話 – 歩きながら考える vol.174

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、AI時代だからことのあるべき健康診断・人間ドックのありかたについて。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は大腸の内視鏡検査を受けてきて、その帰り道を歩きながら話をしようと思います。検査の結果は特に何もなかったんですけど、帰り道にふと「人間ドック、もういらないかもな」と思ったんですよね。今日はその話をしてみます。

近所の内視鏡専門医が思いのほか良かった

今回検査を受けたのは、別に何か調子が悪いってわけじゃなくて、ここ4年くらい大腸の内視鏡を入れてなかったから、そろそろやっておこうかなと思っただけなんです。

きっかけは、ちょっと前に胃が痛くて胃カメラを飲もうと思ったこと。胃カメラって、鎮静剤なしで飲むとすごい辛いじゃないですか。だから鎮静剤を使ってくれるところを近所で探して行ってみたら、これがすごく良かったんですよね。検査はスムーズだし、画像を見せながら「ここはこうですね、問題ないですね」と丁寧に説明してくれる。

で、今回の大腸内視鏡も同じところでお願いしたんですけど、結果は何もなくて、検査費用は保険診療で5000円くらいで済みました。人間ドックでオプションつけたら何万円もかかるのに、専門医に直接行けば5000円。この差って何なんだろうなって、帰り道に考えてしまったんですよね。

高層ビルに移転した人間ドック

実は今、人間ドックをどうしようかなってすごい悩んでるんです。

僕がずっと定期的に行ってた人間ドックって、東京の大きな大学病院のところだったんですけど、その施設が最近、森ビルの高層ビルの中に移転したんですよね。あからさまに家賃高そうだなっていうところに。で、案の定、値上げもされていて。

もちろん、今インフレで医療機器コストが上がってるっていうのはよく知ってるんで、値上げ自体はわかるんです。でも、タイミング的に高層ビルに移ったタイミングと重なると、「これ、まさか家賃の増加分とか入ってんじゃないかな」って邪推してしまう。自由診療だから価格転嫁は自由だし、経済学的には当然のことなんですけど、受ける側としてはちょっとモヤモヤしますよね。

総合判定医は本当に「総合」判断できているのか

で、もっと根本的なことを考えちゃったんですよね。人間ドックって、そもそもどうなんだろうって。

人間ドックって、結局は様々な検査の組み合わせじゃないですか。心電図、エコー、MRI、聴力、血液検査、場合によっては内視鏡や脳ドックも入れて。で、最後に総合判定医の先生がまとめて説明してくれるわけですけど、正直なところ、今まで「示唆深いお話」をいただいた記憶がないんですよね。何も問題がないから言うことがないのかもしれないですけど。

ふと思うのは、「この総合判定医の先生は、本当に各分野の検査結果を横断的に理解して、隠れたリスクを見抜けているんだろうか」ということなんです。

現代の医療って、高度に専門分化してますよね。お医者さんって診療科で専門が分かれてるから、たとえば消化器内科の先生が脳神経外科のMRI所見を専門医と同じレベルで判断するのは難しい。画像診断では、放射線科医が読影を行って、主治医はそのレポートを参考にして判断するという分業体制が一般的です。だとすると、総合判定医は各専門医のレポートを「読み上げている」だけなんじゃないか。そこに数十万円を払う価値があるのか。そんなことを考えてしまったんですよね。

AIの方が得意な領域なのでは

で、ここからがちょっと未来の話なんですけど、こういう「多角的なデータから隠れたパターンを見つける」作業って、本来AIがすごく得意な領域だと思うんです。

血液検査の数値、画像所見、生活習慣、家族歴……これらを組み合わせて将来のリスクを予測する。人間の医師が個人の技量でやっていたことを、AIがより正確に、より低コストでできるようになる可能性がある。

もちろん、最終的な判断は医師がしなければいけない。AIが「代替」するというより「補助・協働」する形だと思います。でも、その補助があれば見落としは減るし、医師の負担も軽減される。結果として、より多くの人がより低コストで質の高い予防医療を受けられるようになるかもしれない。

うちの場合は、家系的に循環器系、特に糖尿病のリスクがありそうなんですよね。であれば、全身を漫然と見る「広く浅く」のパッケージより、リスクのある分野を「狭く深く」専門医に診てもらって、一般的な健康診断と組み合わせる。もしかしたら、それで人間ドックはいらないのかもなっていう気が、実はしていたりします。

まとめ

というわけで、今日は大腸内視鏡の帰り道から始まって、人間ドックの意味とか、AIと医療の未来まで、歩きながら考えてみました。「パッケージを買う」のではなく「自分のリスクに合わせて組み立てる」という発想は、これからの健康管理のあり方として悪くないんじゃないかなと思います。

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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

プロフィール詳細

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