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ブログ権力格差(PDI)歩きながら考える

2025.8.29

ポピュリズム批判の前に、エリート層は何を成し遂げたのか – 歩きながら考える vol.116

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、トランプ大統領がホワイトハウスで総合格闘技UFCの試合を行うことを発表した件について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は駅から家に向かって歩きながら、ちょっと衝撃的なニュースについて考えたことを話してみようと思います。

日経新聞の8月20日の記事で読んだんですけど、トランプ大統領が2026年のアメリカ建国250周年記念で、ホワイトハウスで総合格闘技UFCの試合を開催するって発表したそうです。

ホワイトハウスに八角形の金網(オクタゴン)を設置して、プロの格闘技ですよ。史上初だそうで。正直、「え、マジで?」って思わず立ち止まっちゃいました。あの荘厳なホワイトハウスに格闘技のリング。すごいミスマッチ感ですよね。

記事によると、イギリスのバース大学のデイビッド・ムーン上級講師は「反エリートのポピュリズムに訴える手段」と分析しているそうです。確かに、MAGAキャップといい、今回の格闘技といい、支持層へのアピールは露骨ですね。

ちょっと待って、ポピュリズム批判だけでいいの?

でも、歩きながらふと思ったんです。これを「またトランプのポピュリズム」って片付けるのは、ちょっと違うんじゃないかって。

だって、なんでこういうパフォーマンスが効くのか。それは一般のワーキングクラスの人たちの中に、エリート層への不信感があるからですよね。で、その不信感って、実は図星かもしれないじゃないですか。

アメリカの格差、どんどん広がってます。エリート層は「我々が社会を良くする」って言いながら、結果として上の人たちだけがリッチになって、普通の人たちとの差は開くばかり。これで「エリートを信じろ」って言われても、そりゃ無理ですよ。

ポピュリズムって「症状」であって断罪すべき「原因」じゃないんじゃないか。ポピュリズム批判をする前に、そもそもエリート層は社会運営をちゃんとできたのか。そっちを問うべきなんじゃないでしょうか。

権力を持つ者の責任:ホフステードの視点から

この現象を、ホフステードの「権力格差(Power Distance)」という概念から考えてみましょう。

権力格差が高い文化では、一部の人が権力を握ることを人々は受け入れます。「その方が集団全体がうまくいく」という前提があるから。でも重要なのは、権力を握った人には、それと表裏一体の責任が生じるということです。

権力者が自分たちだけ豊かになって、集団全体を良くできなかったら?そりゃ、激烈なバックラッシュが起きますよ。今のアメリカで起きているのは、まさにこれじゃないでしょうか。

当たり前の話なんですけど、どうもこれが忘れられがちです。

日本だって他人事じゃない

で、これ、アメリカだけの話じゃないんですよ。

日本でも最近、エリート層やインテリへの風当たり、強くなってきてません?既存政党への不信感は相当の域にまで来ているように思います。これも結局、格差が広がっていることの表れだと思うんです。

政治を評価する時、GDP成長率とか株価とか景気指標を見がちですけど、本当に大事なのは「普通の人たちの家庭の暮らしが良くなっているか」じゃないでしょうか。この視点を忘れたら、日本でも「首相官邸で格闘技」みたいな極端なパフォーマンスが支持される時代が来るかもしれません。

というわけで、今日はトランプ氏のUFC開催から、エリート層の責任について考えてみました。ホワイトハウスの金網リング、2026年にどんな光景になるのか、ちょっと注目してみようと思います。

もしこの話を読んで何か思うところがあったら、ぜひSNSでシェアしてください。エリートの失敗を批判する「ポピュリスト」を批判する前に、エリート自身が果たしてきた責任について、みなさんはどう思いますか?

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。家に着いたので、今日はこの辺で。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

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