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コラム最近の私組織デザインを考える

2022.5.11

明治維新から学ぶべきはリーダーシップよりフォロワーシップ?

渡邉 寧 | 株式会社かえる 代表取締役

武家屋敷の沢山の夏みかん

先日、旅行で山口県の萩をプラプラしてて、萩城の城下町の武家屋敷跡に夏みかんが沢山なっているのを見ました。調べると、明治初期に武家階級が困窮していった際に、収入を補う手段として柑橘類を武家屋敷の庭に沢山植えたからだそうです。

萩は現在人口5万人。当時も大きな藩というわけではなかったのではと思いますが、なぜ明治維新に名を残す人々がここから出たのだろうというのは誰しも感じることなのではないでしょうか。幕藩体制が倒れれば武士階級は不安定な立場に立たされる。普通に考えれば、自分が依拠している社会システムをガラッと変えてしまうような動きは恐ろしいもので、多くの藩の士族は簡単には社会体制変更の流れに乗れなかっただろうと思います。

萩藩は明治維新に大きく関与しましたが、士族階級はその後経済的に困窮していった様が、武家屋敷の夏みかんから見て取れるわけです。

明治時代の歴史が、今でも街歩きで観察出来る萩は本当に面白いな、と思いました。

なぜ萩藩が維新に影響力を持ったのか

なぜ明治維新に萩藩が大きな影響を及ぼしたのか。もちろん、吉田松陰などの類まれな個人の影響もあると思いますが、同時に様々な環境要因が、人々を変革に向かわせるインセンティブとなっていたのかな、とも思います。

もともと一定の教育水準が確保されていた武家という戦闘集団があったこと。外様であったこと。開国と尊皇攘夷で揺れる中、開国後の経済的混乱で危機意識のスイッチが入ったこと。そして欧米列強の船の往来が目の前にあり、下関戦争で欧州列強と戦闘し直接的な力の差を見せつけられたこと。

社会階層、外界/イノベーションとの接触、土台となる教育、リーダーシップ、、、。要因が揃えば揃うほど、変革に向かう蓋然性は高まりますが、一つの要素だけで変革が進むわけではありません。

萩を見て思うのは、マジョリティではない周縁に存在する一定以上の教育を受けた小規模の同質集団が、極めて現実的な危機を目の前に突きつけられると、改革に向けた非常に強い動機づけがなされるのではないか?ということです。

組織や業界の変革を考える際に明治維新が参考にされることが良くあります。その際、維新に関わった偉人(個人)の影響力にスポットライトが当てられ、教訓を学ぼうとしたり、リーダー待望論が語られるケースが多いように思います。「リーダーが優れていたから社会が変わった。組織が変わった」という説明はわかり易いのでしょう。

しかし、実際のところは数千〜数万人くらいのコミュニティの集団があれば、その中には常に優れたリーダーシップを持つ個人は存在すると思うのです。だから、改革を個人の要因として説明するのであれば、別に萩藩でなくても社会変革を成し遂げる人材は存在していた。

萩藩から明治維新を代表する人材が出たというのは、全体の一部の話でしか無いのではないかと思うのです。つまり、コミュニティとしての改革意思の盛り上がりが有り、その一部の人が改革を代表する個人として歴史に名前を刻まれたということではないかと思うのです。

リーダーシップよりもフォロワーシップに着目する

自分は、個人的に、少なくとも日本の文化的土壌において、リーダーが効果的なリーダーシップを発揮するには、フォロワーシップに着目することが重要だと思っています。そう考える理由は、日本の文化的土壌にあります。社会心理学・文化心理学の言葉で言えば、日本は相互依存的人間観が主流で、やや集団主義の特徴を持つ文化です。こうした文化的土壌で集団の意識と独立して個人がリーダーシップを発揮するという状況は考えにくい。

リーダー個人がリーダーシップをどのように発揮するかということも大事ではありますが、同時に、そのリーダーを取り巻くフォロワーのフォロワーシップによってリーダーシップが「押し出されていく」という環境が無いと、どんなに優れたリーダーシップも上手く働かないのではないかと思うのです。

では、どうすればリーダーシップが発揮されるフォロワーのフォロワーシップが醸成されるかというと、それは、「同じ教養のベースを持つ」「小集団が」「眼の前で現実的なヤバさを目撃する」ということなのではないかと思うのです。

萩は、集団の規模や教養のベース、更に目の前を行き交う欧米列強の船隻との戦闘と敗北という状況を経て、大きな改革に向かうフォロワー環境が整ったということなのではないかと思うわけです。

明治維新から150年経った今。イノベーションや改革が求められており、どういう方向に進まなければならないかは比較的明確なのではないかと思います。それでも、改革に向けて日本という大きな単位の集団が進めないのは、リーダーシップの欠如というより、フォロワーシップの欠如に問題があるのであり、それは150年前の萩藩のようなフォロワーシップ醸成の条件が揃っていないことが問題なのではないかと思います。

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。 株式会社かえる 代表取締役

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