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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える

2026.1.16

人生の未完了プロジェクトをAIで完了させる – 歩きながら考える vol.209

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、AIを使って若いときの挫折をもう一度やり直す件について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は夕方の散歩をしながら、最近ずっと考えていることを話してみようと思います。テーマは「中高年男性とAI」。なんだか重そうなテーマに聞こえるかもしれませんが、実は僕自身の体験から始まった話なので、ゆるく聞いてもらえたら嬉しいです。

中高年男性のメンタルはなぜ厳しくなるのか

最近、自分も含めて中高年の男性って、なんかメンタル的にしんどくなりやすいよなって感じることがあるんです。

心理学者のカール・ユングは、40歳前後を「人生の正午」と呼びました。人生の前半は、キャリアを築いたり、家庭を持ったり、社会的な役割を果たすことに集中する。でも正午を過ぎると、それだけでは満たされない何かが出てくる。若い頃に「これは自分じゃない」と切り捨てた部分、諦めた夢、やり残したことが、急に気になり始めるんですよね。

みなさんも心当たりありませんか?「あのとき英語をちゃんとやっておけば」「学生時代にバンドを続けていれば」「もっと本を読んでおけば」みたいな後悔が、ふとした瞬間に顔を出す感じ。ゲシュタルト療法ではこれを「未完了の仕事」と呼んでいるそうで、完了していない欲求や感情は、心の中でずっとくすぶり続けるんだそうです。

しかも、男性は女性と比べて、こういう時期を乗り越えるのが難しいかもしれません。進化人類学者のサラ・ブラファー・ハーディの研究によると、人類の女性は「アロマザー」、つまり母親以外の人と協力して子育てをするネットワークの中で進化してきたとされます。赤ちゃんの世話ってすごく大変だから、一人じゃ無理で、おばあちゃんとか、近所のお姉さんとか、みんなで助け合ってきた。だから女性は、他者と共感し、関係性を築く機会が多かったという話です。

一方、男性はそういうネットワークの「外」にいることが多かった。仕事中心でアイデンティティを築いてきた男性が、中年になってそのアイデンティティが揺らぐと、頼れる人間関係が少ない。友達に「最近しんどいんだよね」って言える相手が、何人いますか?これが、中高年男性のメンタルが厳しくなりやすい構造的な背景なんじゃないかと思うんです。

AI時代は状況を変えられるかもしれない

でも最近、ちょっと希望を感じることがあって。それがAIなんです。

僕自身の体験で昨日のブログでも書いたのですが、若い頃に上手く出来なかった英単語の暗記を、最近Grokと一緒にやり直してみてるんですね。一人でやると続かないんですけど、AIに「この単語、どうやったら覚えられる?」って聞くと、語源を教えてくれたり、例文を作ってくれたりする。なんか、隣に家庭教師がいる感じで、続くんですよね。

心理学者のアルバート・バンデューラによると、「自分はできる」という感覚(自己効力感)を高めるには、実際に何かを成功させる経験が一番効くそうです。AIは、ハードルを下げてくれることで、「やってみたら、できた」という経験を積みやすくしてくれる。

若い頃に諦めた「未完了のプロジェクト」を、AIの力を借りて完了させる。そうすることで、「自分にもできるじゃん」という感覚を取り戻し、過去の自分と和解できる。AIは、いわば「やり残した宿題を終わらせるためのタイムマシン」になり得るんじゃないかと思うんです。

ただしAIに「丸投げ」すると意味がない

ただ、ここで一つ落とし穴があって。AIを使えば全て解決、というわけでもないんですよね。

例えば、英語学習でAIに「この文章を翻訳して」と頼んで、その意味を理解するだけだと、たぶん自分の英語力は全く上がらない。

認知心理学では「認知的オフローディング」という言葉があります。要するに、考えることをAIに丸投げしちゃうと、自分で考える力が衰えていくという話です。

だから、AIの使い方には気をつけた方がいいと思っています。

僕の場合、英語学習では「この単語の意味を教えて」じゃなくて、「この単語の覚え方のヒントをちょうだい」と聞くようにしています。最終的に覚えるのは自分。AIはあくまで「自分の学びをサポートしてくれるファシリテーターみたいなもの」であって、「代わりに覚えておいてくれる人」じゃない。

この違いが、たぶん大事なんです。AIに丸投げしたら、それは「自分がやった」という実感にならない。でも、AIにサポートしてもらいながら、最後は自分で完成させたら、それはちゃんと「自分の達成」になる。この感覚があるかないかで、自己効力感が高まるかどうかが決まるんじゃないかと思います。

これからの問い:中高年はAIとどう付き合うか

今回は「学習」と「創作」という切り口でAIの可能性を考えてみましたが、中高年とAIの関係には、まだまだ探求すべきテーマがあると思っています。

例えば、AIは孤独を癒す話し相手になれるのか。中高年男性の孤独は深刻な問題ですが、AIとの対話で本当に孤独は癒えるのか、それとも人間関係の練習台として使うべきなのか。あるいは、キャリアの再設計を考えるときの壁打ち相手として、AIは役に立つのか。健康管理、家族とのコミュニケーション改善。こういった領域でも、AIは何かできるのか。

正直、僕もまだ答えは持っていません。でも、「中高年男性のメンタルは厳しい」という話で終わるんじゃなくて、「AI時代には新しい可能性があるかもしれない」という視点を持つこと自体が、ちょっとした希望になるんじゃないかと思うんです。

まとめ

というわけで、今日は「人生の未完了プロジェクトをAIで完了させる」というテーマで、歩きながら考えてみました。中高年男性のメンタルの話から始まって、AIの可能性と落とし穴、そしてこれからの問いまで。

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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

プロフィール詳細

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