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今日のテーマは、中高年の男性の孤独や他者への攻撃性とキャリアの話。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は学会の昼休みを使って、ちょっと考えさせられる話をしようと思います。先日、11月12日の日経新聞で「50代の早期退職、年収半減でも転職困難」という記事を読んだんですよね。50代後半の大手メーカーの会社員の方が、「どうせ転職するなら、もうちょっと早くから動けばよかった」って語ってる内容で、これがなかなか重い。
今日はこの問題について、歩きながら考えてみたいと思います。
ピラミッド構造という残酷なシステム
この問題の根本にあるのは、会社のポジションの数がピラミッド構造になってるってことなんじゃないかと思ってるんですよね。上に行くほど、ポジションの数っていうのは減っていくという仕組み。
新卒一括採用・長期雇用体制でやってるってことは、途中まではみんな上がっていけるかもしれない。でも、上のシニアのマネジメントポジション、例えば事業部長とかになってくると、そこに上がれる人と上がれない人っていうのが明確に出ちゃうわけです。
冷静に考えてみてください。例えば100人新卒で採用したとして、本当に上のポジションって数ポジションしかない。ということは、90人以上の人はどっかのタイミングで行き止まりに直面するってことですよね。
これ、システムに組み込まれた必然です。
そのふるい分けがおそらく40〜50代に入ったところで来る。20〜30年くらいかけて歩んできた道の、ハシゴを外された感っていうのは、想像に難くない。昇給があったり、手取りが増えたりっていう道を歩んできた人からすると、「もうこれであなた行き止まりです」って言われるのは、自尊感情を結構大きく傷つけるんじゃないかなと思います。

50代シンドローム:データが示す厳しい現実
実はこの問題、「50代シンドローム」として議論されてますね。50代で役職定年や不本意な異動を経験した際に、働くモチベーションが急激に低下する現象です。
これ、単なる給料の問題以上のものがありそうです。「あきらめ」「さびしさ・孤独」「喪失感」といったネガティブな感情を抱える人が多いのではなかろうか。それまで積み上げてきたものが、一気に崩れていくような感覚なんだと思います。
ちなみに、今日学会で京産大の高尾先生の発表を聞いてたんですけど、キャリアクラフティング(自分のキャリアを主体的に捉え直す活動)の度合いって、年代別で見ると、50代の人たちが40代以下と比べると、きゅっとやる率が上がってるグラフをスライドで共有されてました。これ、まさに役職定年とか、そういう人事制度と結びついてるんだろうなって。50代になって初めて、キャリアの見直しを迫られるってことですよね。
孤独と怒りの行き先
ここからがちょっと社会問題との関連なんですけど、世の中見てると気になることがあって。男性の中高年で、すごく孤独を感じていたり、社会に対して怒っていたりで、排外主義とか、女性蔑視みたいなこと言う人って、若い男性にはあんま見ないですよね。どっちかっていうと、やっぱり中高年の男性に多い。
これ、因果関係を証明するのは難しいと思いますが、人生における仕事の意味って、男性性が高い日本においてはすごく大きいわけですよね。その重要な仕事において、強制的に挫折させられる仕組みっていうのが日本の雇用システムと考えることもできる。
ある意味、すごい残酷なシステムという風に言えるかもしれません。
そして孤立した人は、他者に対して攻撃的な行動を取る傾向が高まるということが起こっているのではないか、と思うわけです。

30代半ばから始める準備
じゃあ、どうすればいいか。
この仕組みを変えるかどうかっていうのは、個人ではどうにもできない話です。だから個人としては、やっぱりもうちょっと若い時から準備が必要だと思うんですよね。
具体的には、30代半ばぐらいから、まず構造を理解すること。自分も50代になった時に、非常に厳しい、自尊心をえぐられるような経験に直面するかもしれない。そういう危機的な状況になった時に、自分のライフプランであるとか価値観であるとか、寄って立つところを失うっていう感覚に直面するかもしれない。
それに対する対処法としては、いくつかあると思います。
一つは、活躍の場を複数持つっていう選択肢。複数の選択肢を常に持ち続けるっていうやり方ですね。仮に会社で挫折があったとしても、じゃあそこでゆとりが出た時間を別の仕事に使うとか、地域活動に使うとか。自分の意思で自分のリソース配分を変えられる状況にあれば、それは自律性の感覚の高さにつながるので、必要以上に落ち込んだり孤独になったりはしないと思うんです。
もう一つは、逆に、腹を括って、全集中で、必ずこの組織の中で登れるところまで登り切るっていう選択肢。登れるところまで登り切ったら、そこで足るを知る。そういう覚悟を持つっていうやり方もある。
どちらにしても、色々個人としてはできることがあります。この問題は結構男性にとっては深刻で、難しい問題だなという風に思いました。
まとめ
というわけで、今日は50代の危機について、学会の昼休みに歩きながら考えてみました。ピラミッド構造という残酷なシステム、50代シンドローム、そして個人としてできる準備の話まで。ちょっと重いテーマでしたけど、これって30代、40代の方にとっても、決して他人事じゃない話だと思うんですよね。
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著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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