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今日のテーマは、大学生のスキマバイトの評価が就活で使えるようになった件から考える、キャリア構築の未来について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は駅まで歩きながら、ちょっと面白い記事を見つけたので、そこから考えたことを話してみようと思います。
8月29日の日経新聞で、シェアフルとベネッセi-キャリアが、大学生のスキマバイト就業歴を新卒採用の第三者評価として使えるようにするっていう記事を読んだんですよ。要は、学生がスキマバイトで働いた時の評価を、就活で使える「証明書」として発行するってことなんですが、これ、すごく面白いなと思って。
というのも、これって単なる「アルバイトの評価を就活に使う」っていう話じゃなくて、もっと大きな働き方の変化の一端なんじゃないかと思うんですよね。ただ、同時にちょっと心配な部分もあって。歩きながら、ゆるく考えてみます。
スキマバイトアプリに2000万人?日本の働き方が静かに変わってる
まず驚いたのが、スキマバイトアプリの登録者数。シェアフルだけじゃなくて、タイミーとか他のサービスも含めると、日本全体で2000万人くらいが登録してるらしいんです。
日本の就業者数って約6800万人なので、だいたい3人に1人くらいの割合で、少なくともアプリには登録してるってことになります。これ、結構すごくないですか?
ただ、現状のスキマバイトって、実はかなり限定的な仕事に留まってますよね。ピッキングとか、調理の補助、接客の補助みたいな、比較的スキルがなくてもできる仕事が中心。なぜかというと、定型化できない仕事はそもそもスキマバイトと相性が悪くて、未経験の人がスキマバイトではこなせないんですね。
でも、逆に言えば、定型化さえできてしまえば、あらゆる仕事が実はスキマバイトの対象になる可能性があるってことじゃないでしょうか。

仕事を「定型化」すると、職場も働く人も救われる?
その一例がコンビニの仕事だと思うんです。コンビニって、宅配の受け取りから公共料金の支払い、コーヒーマシンの操作まで、めちゃくちゃ複雑になってる。だから未経験の人はスキマバイトではコンビニ仕事は出来ない。でも、それが全国どこでもほぼ同じやり方で標準化されてるから、一度覚えたら別の店舗でも働けるわけです。
で、現状で、「複雑に見えるけれど実は定型化されている仕事」っていうのがあって、例えば経営コンサルタントなんかはそれにあたると思います。コンサルの人って、3ヶ月ごとにクライアントが変わったり、業界が変わったりするけど、「課題分析→仮説構築→検証」みたいな基本的な仕事の進め方は共通してる。だから、1週間くらいキャッチアップすれば、新しいプロジェクトでもパフォーマンスを出せる。
ここで重要なのは、仕事の定型化を社会として進めることのメリットです。
今、どこの職場も人手不足で、ギリギリの人数で回してることが多いじゃないですか。そんな中で、家族の事情で仕事を離れなきゃいけないタイミングって、どうしても出てきますよね。
親の介護とか、子供が急に熱を出したとか。今の時代、専業主婦世帯なんてもう普通じゃないから、夫婦のどちらかが仕事を調整して対応しなきゃいけない。でも、ギリギリの人数で回してる職場で有給取ったり、介護休暇・育児休暇を取ると、残った人にしわ寄せがいく。それが職場全体の幸福感を下げるし、お互いへの不満とか、信頼関係の悪化につながったりする。
もし仕事が定型化されていて、短期的に補完してくれる人が外部市場から流動的に入ってこれたら、働く側も受け入れる側も、お互いにメリットがあるんじゃないでしょうか。「迷惑かけて申し訳ない」とか「なんでいつも私ばっかり」みたいな、職場のギスギスした雰囲気も減るかもしれません。

評価の積み重ねが生む、新しいキャリア形成
そして、今回の記事で一番興味深かったのが、この「評価の蓄積」という考え方です。
スキマバイトで色んな仕事を経験して、その都度評価を受ける。これを積み重ねていくと、「自分はこういう仕事が得意」「この環境なら力を発揮できる」みたいなことが、だんだん見えてくるんじゃないかと。
例えば、事務作業はそこまで得意じゃないかもしれないけど、顧客対応とか人と話す仕事の方が楽しく働けるとか。データ入力よりも、企画提案みたいなクリエイティブな仕事の方が高評価をもらえるとか。マイクロな仕事経験を数多く積み重ねることで、自分の得意領域や働きやすい環境を理解していく。
これに連動して、教育の在り方も変わるかもしれません。例えば、特定のアプリ開発に必要なスキルとか、そういうピンポイントのスキルを大学や専門機関が短期講座で提供する。1年かけて体系的に学ぶんじゃなくて、「この仕事をするために必要な3日間の講座」みたいな。実業界が求めるマイクロな仕事と、教育機関が提供するマイクロな学習経験が、もっと密接に結びついていくようになるんじゃないでしょうか。
もちろん、教育は、実業のニーズに対応したものだけを提供するサービス業と言うわけではないから、従来の教育システムも残ると思いますが、よりマイクロな学びを提供する部分は拡大するのではないかと思います。
評価システムについては、もちろんリスクも考えないとなりません。常に評価され続ける息苦しい社会になるのは嫌ですね。ただ、仕事に関しては、基本的には評価のサンプル数を増やしていけば、落ち着くところに落ち着いていくようにも思います。多面的な評価項目を設定すれば、何が得意で何に伸びしろがあるのかも明確になる。さらに、評価する側の信頼度もオープンにすることで、職場としての信頼性や働きやすさも可視化されていく。そうすれば、自ずと働く人と職場の最適なマッチングに行き着くんじゃないかと思います。

まとめ:流動性と保護のバランスをどう取るか
それから、忘れちゃいけないのは、労働者の立場を守る仕組みの重要性です。
これまで日本では、労働組合を通じて、集団的に労働条件の改善を進めてきた歴史があります。でも、スキマバイトで働く人たちは基本的にバラバラだから、団結して交渉するのが難しい。これは長期的に見ると、労働者の立場を弱める可能性があります。
流動的な働き方のメリットを活かしながら、同時に働く人の権利や安全をどう守るか。新しい形の労働者保護の仕組みを、どう作っていくか。これが、これからの大きな課題になるでしょう。
というわけで、今日はスキマバイトの評価システムから、これからの働き方について歩きながら考えてみました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。駅に着いたので、今日はこの辺で。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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