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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ個人主義(IDV)歩きながら考える短期・長期志向(LTO)
2025.6.3
AIに「飲み会の精算どうする?」と聞いたら文化差が! – 歩きながら考える vol.55
渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)
今日のテーマは、AIに見られる文化差について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは! 今日も移動時間を使って、ちょっと考えごとをシェアします。内容は「AIと文化」。AIの回答がAIが作られた文化によって全然違うって話、めっちゃ面白いんですよ! 2025年の今、AIが私たちの価値観とどう絡むのか、歩きながら考えてみます。
「おごる?割り勘?」AIの答えが文化で真っ二つ
先日、2025年5月19日の朝日新聞で、「AIに文化的差異、支配されるリスク」という記事を読みました。そこに、ChatGPT(アメリカのAI)とDeepSeek(中国のAI)に同じ質問をしたら、めっちゃ違う答えが返ってきた話が載ってて。どんな質問かというと、「友人飲み会に誘ったら、1人4000円くらいかかった。どうするのがいい?」というもの。
ChatGPTは「事情を説明して、公平に割り勘にしよう」って。対して、DeepSeekは「自分が奢るのがベスト!」というような回答をしてきたそうです。めっちゃ対照的ですよね? 友達とご飯行ったとき、割り勘にするか「ここは私が払います!」となるか。日常の場面で、AIがこんな文化の違いを見せるというのは非常に興味深い現象だと思います。。どうしてこんな差が出るのか、ちょっと掘ってみます。

ホフステードのモデルで紐解く:個人主義 vs 集団主義
この回答の違い、オランダの社会心理学者/経営学者であるヘールト・ホフステードの6次元モデルで考えると見通しが良くなります。ホフステードは、文化的価値観を個人主義や集団主義といった6つの次元で分析し、国の文化スコアを提示した研究者です。このモデルに基づくと、アメリカは「個人主義」な文化。個人は独立してて、公平に扱われるべきという価値観が自然になります。さらに短期志向の文化でもあるから、一回一回、参加した個々人がそれぞれの負担を精算するのが自然。だから、ChatGPTが「割り勘がベスト」って言うのは、アメリカらしいのかもしれません。
一方、中国は「集団主義」の文化。グループの調和や「面子(メンツ)」が非常に大事にされます。面子とは、ここでは経済的な「体面」のことを意味しており、社会的な評判のような位置付け。奢ることで相手の面子を立てたり、自分の経済的な体面(「この人は裕福で気前が良い人」という評判)を高めたりし合うことが重要。飲み会で「私が払います!」「いや、私が!」ってやり取り、覚えありません?
で、今回は奢ってもらったら、次は自分が奢り返す、というような長期的な関係性が前提になっています(長期志向)。DeepSeekが「奢るのが良い」と言うのは、こういう中国文化が反映されてるんだろうな、と感じます。
ホフステードの理論を元にすると、異なる文化圏で学習がなされたAIの「性格」が異なるという理由がよくわかります。ChatGPTは英語圏のデータ、DeepSeekは中国語や中国文化のデータで学習が進められたのだろうと推察されるわけです。興味深い発見じゃないですか?
日本の皆さん、どっち派ですか? 割り勘? それとも奢る場面もある? 日本の文化は、ホフステード指数で見ると、若干集団主義寄りだけど、個人主義と集団主義のほぼ真ん中。最近は割り勘文化も強い気がします。AIに相談したら、どんな答えが返ってくるんでしょう? 皆さんも、試してみたら面白そうじゃないですか?

AIのバイアス、リアルな問題と未来の課題
この文化的バイアス、AIが日常生活の中に今よりもっと入ってきた際には、問題になり得る話だと思います。たとえば、ChatGPTが「割り勘がベスト!」というアドバイスを出してきたとして、それが集団主義の文化だった場合は現実とのズレが出る可能性があります。国際的なビジネスや多文化なチームでAI使うとき、こういうバイアスが誤解を招くリスクもあると思います。
ChatGPTは「あなたは素晴らしい!」と、相当ポジティブなアプローチでコミュニケーションを取ってきますが、あれは多分、アメリカの個人主義の影響が色濃く出ていると思います。
まとめ:AIは文化の鏡、さてどう使う?
というわけで、AIと文化の話を歩きながら考えてみました。「おごる・おごられる」の違いから、ホフステードの理論、面子の話、AIのバイアスが引き起こすリアルな問題まで、興味テーマだと思います。
この話、「へー、面白い!」って思ったら、SNSでシェアしてくれると嬉しいです。僕も、AIと文化の研究、ブログで進捗シェアしていきます!
カフェに着いたんで、今日はこの辺で。最後まで読んでくれて、ありがとうございます! また次回の「歩きながら考える」で会いましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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