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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える
2025.11.10
AI軍隊時代に人間は何をするのか:実戦データが決める未来の戦争 – 歩きながら考える vol.164
渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)
今日のテーマは、AI時代の戦争について思うこと。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日も移動時間を使って、ちょっと考えごとをシェアしようと思います。
最近、民間企業でAIによるリストラのニュースをよく見るじゃないですか。「AIが人間の仕事を代替するから、人員削減します」みたいなやつ。で、ふと思ったんですよね。軍隊もAI化が進んだら、人間って何するんだろうって。
100万機のドローン購入って、どういうこと?
きっかけは2025年11月8日の日経新聞の記事でした。アメリカの陸軍が今後2〜3年でドローンを100万機購入するっていう。今まで年間5万機程度だったのが、一気に20倍ですよ。なんかすごい数だなって。
で、背景にあるのはウクライナ戦争なんですけど、記事によるとウクライナとロシアはそれぞれ年間400万機ぐらいのドローンを生産していて、中国はその2倍以上の生産能力があるとのこと。この数字見て、あ、戦場って今後すごく変わっていくんだなって実感しました。

民間と同じ:一人のマネージャーとAIチーム
民間企業でのAI活用って、実態を見ていると基本的な構造が見えてくるんですよね。プロジェクト全体を管理できる人が一人いて、AIがメンバーの代わりに作業をする。一人で複数のプロジェクトを回せるようになる、みたいな感じ。
で、軍隊も多分同じような構造になっていくんだと思うんですよね。実際に戦闘するのは犬型とか人型とかヘリ型のドローンで、人間はその最終決定をする役割になる。
これには理由があって、国際法上、AIが意図せず人を殺めた場合の責任って誰が取るんだっていう問題が議論されてるからですね。だから、最終的な意思決定には人間が関与しなければならない。この構造は当面続くのだろうと思います。
ただ、人間がやることって、ものすごく減っていくと思うんですよ。状況判断も戦術選択もAIの方が速いわけで、人間が計画立てるっていうことも減ってくる。そうなると、人間は実質的に「最終承認ボタンを押すだけ」みたいになっていくんじゃないかなと。
AI対AI戦争で決め手になるのは何か
こうなってくると、結局AI軍隊対AI軍隊っていう構図になりますよね。で、そこのAIの性能差がそのまま戦闘能力の差になる。
じゃあ、AIの性能を決めるものって何かっていうと、学習データの質と量なんだろうと思うわけです。囲碁AIだって数百万局のデータで学習したから強くなったわけで、軍事AIも大量の実戦データがないと本当に「使える」ものにはならないんじゃないかと思うんです。
で、ここで問題なのは、戦闘データ、つまり実戦データって、そう簡単に集められるものじゃないんですよね。
今、実戦データを持ってるのって誰かって考えると、例えば、ロシアは今のウクライナで実戦を重ねてる。アメリカも直接的・間接的にウクライナに関与してデータを蓄積しているんだろうと思われます。北朝鮮もウクライナ戦争に参加しましたね。
こういう国々が、AI時代の軍事では有利な立場にいるんじゃないかと思うわけです。

中国は?:46年間の空白
で、ここがすごく興味深いなと思ったんですけど。
兵器の生産力で言えば、中国ってかなり強いと思いますね。年間800万機以上のドローン生産能力があるとされています。物量で言えば圧倒的なんですよね。
ところが、実戦データっていう点では、中国って実はあんまり戦争しない国なんですよ。
最後に本格的な戦争をしたのが1979年の中越戦争。それ以降、46年間、本格的な国家間戦争の経験は無い。
物量もある、技術もある、でも実戦データがない。
おそらく中国も、どこかで実戦データを集める必要があるって認識してるんじゃないでしょうか。何らかの形で各地の紛争に介入していく、みたいなことを考えてるんじゃないかなっていう気がすごくするんですよね。
中国製の兵器が紛争地域で使われるようになると、米・中・露あたりのAI軍事力格差がまた大きく変わるように思います。
日本はどうする?純国産は厳しい現実
じゃあ、日本はどうするのか。
現実的には、アメリカ等の他国と一緒にやっていくしかないんだろうなという気がします。AI中心の軍備力を日本が開発するというのはちょっと想像ができないですね。データ共有、技術協力、共同開発。もちろんリスクもありますよ。アメリカの政策が変わったらどうするのかとか。でも、他に選択肢が見えないというのが現実じゃないですかね。なかなか厳しい。
まとめ
というわけで、今日はAI時代の軍隊について歩きながら考えてみました。
人間の役割は激減していくけど、最終決定だけは残る。AI軍隊の性能を決めるのは実戦データで、その行方がどうなるのかというのは注目しておく必要があるのかな、と思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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