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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える
2025.9.23
京都ブランドは誰のもの?京都が抱えるインバウンドのジレンマ – 歩きながら考える vol.132
渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)
今日のテーマは京都に住んでると、「あれ、地元の人はインバウンドの旅行者に対してモヤモヤしたもの感じてる?」と思う件について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は京都の街を歩きながら、ちょっと気になっていることを話してみようと思います。
最近、日経MJで「訪日客に『カツ』人気」っていう記事を読んだんですけど、京都勝牛は海外客比率が7割だとか、なだ万が祇園でとんかつ専門店を開業したとか。で、そこから京都のインバウンド需要と地元経済について、ちょっと考えちゃったんですよね。
僕が京都の中心部に引っ越してきたのはコロナの時だったんですけど、今の状況はもう、コロナの時とは偉い違いですよ。歩いている人の3割くらいは外国人観光客かなって感じ。近所のスーパー「フレスコ」でも3分の1弱くらいは外国人が朝食用のパンとか果物とか買ってますし。バスは混んでて乗りにくいこともあるし。
で、ふと思うんですけど、これだけ観光客が来ているのに、地元の人はもしかしてあんまりインバウンドの旅行者を歓迎してないのかな?と思うふしがちょいちょいあるんですよね、はい。

京都ブランドで商売する人たち
で、さっきの日経MJの記事に戻るんですけど、ちょっと気づいたことがあって。
京都勝牛を運営するゴリップは京都の会社ですね。ただ、2024年11月にサンマルクホールディングス(岡山)の傘下に入ったようです。なだ万はONODERAグループで、これは東京・千代田の企業ですね。
なんかね、振り返ってみると、京都の土地やブランドを活用してビジネスをしている企業とかホテルとか、必ずしも京都の企業じゃないんですよね。もしかしたら、域外の企業が多いかもしれない。
京都外の企業による京都ビジネス、確かに雇用は生まれて地域経済にはプラスなんですけど、地方税は本社と按分されちゃうので、京都地元の企業と比べると税収への貢献は限定的かもしれないですね。
このあたりの経済的な恩恵の構造が、もしかして地元の人が歓迎してないかも?という感覚に繋がっているんですよね。僕の直感の話なんですけど。
地元の店の本音
居酒屋の話をしますとね、僕がよく行く地元の店っていうのは、もともと馴染みのお客さんと良い関係性でやっていこうっていうお店が多くて。
そういうとこって、ちょっと入りにくかったりするんです。お店は素敵なんですよ。ただ、店の前に看板出しているわけじゃないし、ガラス張りで中が見えるようにしているわけでもない。
インバウンドの人が多い店を見てると、路面店で、ガラス張りで照明が明るめ。中の席が見やすい。で、英語表記をちょっと書いておく。そういうところだと海外の人なんかも安心して入れるんだと思うんです。
地元の店はね、結構入りづらい雰囲気があって。海外の方は香水がきついことがあって、お店の人が常連のお客さんを気にして気を使っちゃったりとか、対応に時間がかかったりとか。で、その割に居酒屋みたいなところでのお金の使い方の習慣が違って、お酒一杯で仲間内で盛り上がるパブ的な使い方で、食べ物あんまり注文しないから単価が上がらないとか、そういうケースもあるみたいで。
だったら、もうインバウンドのお客さんを呼び込むのは止めて、地元の常連さんと末長くやっていきたいっていう、そういう感じなんですね。
要は、確かにインバウンドの旅行客は多いけど、その経済的な恩恵を直接実感できる人って、結構限られてしまっているんじゃないかなーって思うんですよね。とすると、外の人に対してあまり良い印象を持たないのは、まあ自然かもしれません。
実際に近所の飲み屋行くと、若い人も年配の人も結構排外主義っぽい話を聞くことが多いんです。京都の名前を使ってビジネスをすることに対して、あんまりいい感触はないんじゃないかなって。
これが極端になると、かなり強い排外主義に繋がるんじゃないかなって、すごく心配になるんです、はい。

ヨーロッパ帰りの先生から聞いた話
でもね、これってもったいない話だと思うんですよ。
これだけ外から人が来てくれる場所なんだから、うまく地元の人々に利益を還元する仕組みがあれば、全然違う印象をインバウンドの人たちに対して持つと思うんですよ。
うちの研究院の、ヨーロッパに行っていた先生が言っててなるほどなーと思った話があって。バルセロナでは、乗り物の料金を一般料金はちょっと高めにして、地元の人が使うパスはその分安くするとか、そういう政策の工夫をしているみたいなんですよ。
観光客から薄く広く負担してもらって、それが地元に還元されているっていうことを実感できる仕組み。住んでいる人が「ああ、外から人が来ることで自分たちの生活が改善されている」と理解できれば、対応も変わってくるかもしれないじゃないですか。
京都だと、お寺や神社の拝観料は相当上がったんじゃないかと思うんですが、宗教法人なので税収としては貢献しにくいですね。このあたりは、昔一悶着あったようです。

見える化で変わるかも?
こういう理屈で人って排外主義になっていくかもしれないと思うんです。
自分たちの生活圏に入ってきて、そこのブランドとか公共財を使って商売をしているのに、そのことが自分たちに還元されない。こういう仕組みを放置してしまうと、排外主義に繋がるかもしれない。
これは政策的に何かをした方がいいし、そのことを地元の人々にわかりやすくすることが重要なんじゃないでしょうか。
例えば、京都の宿泊税の使い道を積極的に市民に示すとか。「この税収で市バスの本数が増えました」とか「この公園の整備ができました」みたいに、観光客が来ることで生活が良くなっているということを見える化する。バルセロナの交通料金みたいに、観光客と地元民で差をつけるっていう方法もあるかもしれません。
京都は日本の中でも特にブランド力が高いから目につきますけど、他の観光地でも同じことが言えると思うんですよ。鎌倉とか、金沢とか、日光とか。インバウンドで潤っているように見えて、実は地元にはそんなにお金が落ちていない、なんてことがあるかもしれません。
観光収益が地元にきちんと還元される仕組みづくりと、その見える化って大事だと思いますね。そうじゃないと、表面的には観光客で賑わっているように見えても、地元の人々の心は離れていってしまう。それって、長期的に見たら観光地としての魅力も失われていくんじゃないでしょうか。
というわけで、今日は京都のインバウンド景気の裏側について、歩きながら考えてみました。観光客が増えることは悪いことじゃない。でも、その恩恵を地元の人たちが実感できる仕組みがないと、かえって分断を生んでしまう。この問題、みなさんの地域ではどうですか?
もしこの記事を読んで「うちの地域も同じだな」とか「こんな解決策があるんじゃない?」って思った方がいたら、ぜひSNSでシェアして、コメントで教えてください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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