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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ個人主義(IDV)歩きながら考える

2025.9.4

通信制高校が10人に1人の時代に考える、「みんな一緒」の終わりの始まり – 歩きながら考える vol.120

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、通信制高校を選択する生徒が10%になっているという事実から考える学校の在り方について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は散歩しながら、ちょっと気になってることを話そうと思います。先日、日経新聞で見かけた記事から、色々考えちゃったんですよね。歩きながら、ゆるく話してみます。

高校生の10人に1人が通信制という衝撃

日経新聞(2025年8月27日)によると、文部科学省の調査で通信制高校の生徒が30万5221人。全高校生の約10人に1人が通信制なんだそうです。この5年で1.5倍に増えたそうです。

これ、めっちゃ衝撃的じゃないですか?

私が高校生の頃、通信制って「特殊な事情がある人が行くところ」みたいなイメージでした。でも今や10人に1人。もう特殊じゃないんですよね。

背景には不登校の増加があるそうです。小中学校で30日以上欠席した子どもは23年度に34万人で、11年連続増加。コロナ禍の影響もあるでしょうが、実際のところ理由はよくわかりません。

ただ、これは完全に私の推測ですが、世の中が個人主義化する中で、「朝から夕方まで、決まった教科を、みんなと一緒に」という従来型の学校生活に意味を見出せない子どもや親が増えてるんじゃないかなって。

日本の学級経営が作ってきた「見えない文化」

ここからちょっと複雑な話をします。

私は教育学の専門家じゃないので門外漢なんですが、日本の学級システムって国際的に見てユニークらしいんです。同じメンバーで1年間、全教科を基本的に同じ教室でやる。これ、研究者も注目してるって聞きました。

で、個人的な経験から考えると。

正直、小学校の学級での学びで学力が上がったかっていうと、感想としては微妙なんですよね。計算や読み書きは公文の方が役立ったし、高学年になったら塾の方が基礎学力の向上に効いてました。完全に個人の感想ですけど。

じゃあ学級形式に何の意味があったか。

それは「朝、決まった時間に登校して、決まった教科を、周りに迷惑をかけずに過ごす」というトレーニングだったと思えてしかたないんです。自分の意見を主張するより、周りに配慮する。友達の気持ちを察する。空気を読みながら生活する。

この態度、学校での生活の中で強化された気がします。

そして、この初等教育で身につけた基本的な態度は、その後もずっと続きます。会社でも、地域でも、基本的には「周囲と調和して、いざこざを起こさず、迷惑をかけない」。

これが日本の公共の安全性や清潔さに結びついてるんじゃないか。そんな気がします。

集団主義と個人主義のトレードオフ

そう考えると、学級中心の学びは、確かに安心・安全で平和な社会を作る効果があるんだろうと思います。

でも同時に、トレードオフもある。それが個人主義的な学びの追求です。

今の論点は、このバランスをどう取るか。どこまで従来型の教育が必要で、どこから個人主義ベースに切り替えるか。その線引きをどう見極めるか、ということじゃないかと思います。

付和雷同的に生きるだけでなく、ユニークな個人のアイデアを出したり、間違っていると思うことに対しては間違っていると言う。自分が興味を持てること、いくらでも時間を投下して習熟していけることを選択していくということは、それはそれで価値のあることで、それに適した教育システムがちゃんと担保されていることは社会にとって必要なことだと思います。

「10歳」が分かれ道?価値観の転換点

そこで一つの提案です。

小学4年生ぐらいまでは学級経営で集団行動を学ぶ。そこから先、小学校高学年か中学から選択制にガラッと切り替える。こんな方式はどうでしょうか。

なぜ10歳かというと、価値観の話なんです。

価値観って、固まった後に変えるのは難しい。でも年齢が低いほど、違う価値観への適応がしやすいと言われています。

集団主義と個人主義の中間、相互協調性と相互独立性の中間を目指すなら、10歳ぐらいがちょうどいいんじゃないか。そう思うんです。

今、通信制高校が10人に1人。でも正直、高校から「集団行動」重視の教育システム以外を選択できるというのではちょっと遅いように思います。もう少し早い段階で、より個人主義的側面が担保された教育システムがあると良いのではないかと思います。

気の合わない人とも付き合う力。自分の個性を伸ばす自由。どちらも大切です。その「いいとこ取り」ができる新しいシステムが生まれたらいいなって思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

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