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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える
2025.8.7
無人コンビニが当たり前になる日:2025参院選が示した日本の選択 – 歩きながら考える vol.101
渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)
今日のテーマは、無人コンビニの衝撃から考える日本の労働市場の未来について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は駅から家に向かって歩きながら、ちょっと衝撃的なニュースについて考えています。8月3日の日経MJの記事で、九州地盤のディスカウント店「トライアル」が、ほぼ無人で運営する小型スーパー「トライアルGO」を首都圏に展開するって話を読んだんですけど、これがなかなか示唆に富んでいて。歩きながら、この話から見える日本の未来について、ゆるく考えてみようと思います。
コンビニ店員がいなくなる日
まず最初に、トライアルGOの運営方法に驚いたんですよね。通常のコンビニって、3人体制で1日の営業を回すそうなんですが、トライアルGOは平均1人以下。いや、ほぼ無人ってことですよね。
店内にはカメラがたくさん設置されていて、売り場の状況を遠隔で管理。欠品があれば、周辺の店舗から効率的に商品を補充する。会計はセルフレジで、値下げも自動化されているそうです。九州ではすでに約50店舗展開していて、今年中に首都圏にも進出するって話なんです。
で、ふと思ったんですけど、私たちの子どもの世代は「昔、コンビニには店員さんがいたんだよ」なんて話をする時代が来るのかもしれないなって。今じゃ当たり前の「いらっしゃいませ」の声が、懐かしい思い出になる日が来るのかもしれません。

2025年参院選が示した分岐点
この無人化の流れの背景には、深刻な人手不足があるわけですが、2025年7月20日の参議院選挙が、日本の大きな分岐点だったんじゃないかと思うんです。
厚生労働省の最新データによると、2024年10月末時点で外国人労働者数は約230万人。年間約25万人のペースで増加していて、在留外国人数は約377万人と、日本の総人口の約3%に達しています。
この状況で2025年7月の参院選で外国人受け入れが大きな争点となりました。「日本人ファースト」を標榜した参政党が14議席と躍進。これは、これ以上の外国人受け入れ拡大は政治的にかなり難しくなったことを示したのではないかと思います。日本は島国で、歴史的に見ても異なる文化背景を持つ人々との共生経験が少ない。この状況を急に変えるのは、正直難しいのではないでしょうか。
経済界は引き続き、人手不足から外国人労働力の受け入れを要望していますが、特に一般的な仕事での労働力としての外国人受け入れは、政治的なリスクになるので、職種を厳選したり人数を制限せざるを得ないかもしれません。
そうなると、企業としては「人がいないなら、人を使わない仕組みを作るしかない」という方向に舵を切らざるを得ない。外国人労働力に頼れないなら、省人化テクノロジーに投資するのが賢明な選択でしょう。トライアルGOみたいな取り組みが、一気に加速していくと思います。

省人化の速度は業界で三段階に
歩きながらさらに考えてみると、この省人化の波は業界によって進み方が全然違いそうだなって思います。大きく3つのグループに分けられるんじゃないでしょうか。
第1グループ:省人化が先行して進みそうな業界
・小売(無人店舗)
・工場(ロボット化)
これらの業界では、作業の標準化がしやすいかもしれません。マネジメントの判断でテクノロジーを使うと決めたら急速にノウハウが蓄積され人間の代替が進んでいくのではないかと思います。
第2グループ:人手に頼りつつ部分的省人化する業界
・教育
・農業
・運送
教育は、人と人との関わりが重要な部分と、実はAI教職員で事足りる部分が混在しています。農業も、収穫作業など人手が必要な部分と、管理や監視など自動化できる部分がありそうです。
運送業界は特に興味深くて、技術的には自動運転で将来的には省人化が見込まれます。深刻なドライバー不足を考えると、これを機に政府や自動車メーカーの対応も変わってくるかもしれません。そのため官民一体で自動化を推し進める方向で世の中が動く可能性があるのではないかと思います。
第3グループ:人手がどうしても必要な業界
・介護
・保育
介護や保育は、身体的なケアや精神的な支えがサービスのコアにあるため、自動化は最も遅くなるのかもしれません。どんなにロボット技術が進化しても、「人の温もり」の代替は難しいかもしれず、ここは最後まで人手が必要な領域として残るのではないかと思います。

まとめ:日本が世界の省人化実装をリードする時代へ
というわけで、今日はトライアルGOの無人店舗から始まって、日本の労働市場の未来について歩きながら考えてみました。
2025年7月20日の参議院選挙は、日本が「外国人労働力」か「省人化テクノロジー」かを選ぶ分岐点だったと、後から振り返れば言えるんじゃないでしょうか。政治的に外国人受け入れ拡大が難しくなったことが見えている今、省人化テクノロジーへの投資を加速させるのが賢明な選択だと思います。
実は、これって日本にとってチャンスかもしれません。世界的にAIやロボットの開発は進んでいますし、中国なんかは将来の人口減を見越して人型ロボットへの投資を加速させています。でも、実際の現場でのアプリケーション実装が最も進むのは、人手不足が深刻で、かつその実現に必要な技術力のベースを持つ日本なんじゃないかと思っています。
必要は発明の母と言いますが、深刻な人手不足こそが、日本を世界一の省人化技術実装国にするかもしれません。日本の現場で鍛えられた、ハードとソフトを、グローバルに輸出していくことが出来れば、参議院選挙で外国人排斥の動きが出たことにも、何かポジティブな意味づけが出来るかもしれません。
もしこの記事を読んで「うちの業界はどうなるんだろう」とか「こんな技術があったらいいな」って思った方がいたら、ぜひSNSでシェアして、コメントで教えてください。日本発の省人化イノベーションについて、みんなで考えていけたらいいなと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。家に着いたので、今日はこの辺で。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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