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プロジェクトマネジメント専門職という働き方

2019.5.14

ギグ・エコノミー時代の組織デザイン

渡邉 寧 | 株式会社かえる代表取締役

ギグ・エコノミーの中で働く

ジャズなどのライブハウスで、即興でその場限りの共演をすることを「ギグ」と言うそうです。

早いもので、私が独立してから5年が経つのですが、独立してからの私の仕事の仕方は完全に「ギグ」。プロジェクトベースで仕事をしていて、プロジェクトに最適なメンバーとその都度組んでアウトプットを出しに行きます。

内容的には自分のプロジェクトに人に入ってもらうことが半分。他人のプロジェクトに入ることが半分。プロジェクトの内容は多岐にわたり、人と組織の変革が主ではありますが、新商品上市戦略、新興国市場戦略作り、フューチャーサーチみたいなマーケティングプロジェクトもあります。

昨今「ギグ・エコノミー」というキーワードを聞くようになりました。ギグ・エコノミーとは

インターネットのプラットフォームを通じて単発の仕事を依頼したり請け負ったりする働き方の経済形態(出所 ニッセイ基礎研究所 金 明中氏のレポート

だそうで、Uberのような労働形態やクラウドワークスのようなプラットフォームを通して、単発的に仕事を受注していく働き方のことになります。

私の仕事はプロジェクトとして期間設定のある形式で、かつ一部業務をクラウドワークスやランサーズを通じて外部委託しているので、半分ギグ・エコノミーに足を突っ込んだ形態で仕事をしている状態なのかなと思います。

「ギグ」プロジェクトは理にかなっている

「ギグ」でプロジェクトを回すというのは、私は理にかなっていると思っています。企業が何らかのアウトプットを必要とするとプロジェクトが組まれるのですが、プロジェクトによって必要とされるメンバーのスキルセットが変わってきます。だから、そのプロジェクトごとに最適なメンバーを組み合わせ、座組を最適化する必要があります。

そもそも、独立する前のコンサルティングファームでの働き方が「ギグ」ですね。「ケース」と呼ばれる数か月~1年程度のプロジェクトで働くわけですが、ケースごとにメンバーは組み替えられていきます。

これを更にオープンに行っているのが今のプロジェクトの組み方。今はコンサルタントだけではなくて、デザイナー・リサーチャー・コーチ・ワークショップデザイナーといった、より幅広い職種の人とチームを組みます。

トヨタの豊田社長が終身雇用の継続は難しいとの認識を示したことが話題になっています。(出所 「終身雇用、「企業にインセンティブ必要」自工会会長」日経新聞2019年5月13日)こうした状況の中、企業にとっても「ギグ」プロジェクトを増やす方向に進むのではないかな、という予感があります。

仕事をプロジェクト単位に切り分け、都度最適なリソースを外部から調達できるのであれば、不確実な市場環境においては企業の対応力は上がります。そういう形態の業務割合を増やすことは企業にとってはコスト・成果の両面でインセンティブになるのだろうと思います。

ギグ・エコノミー拡大にはプロジェクトマネージャーが足りない

一方で、本格的に企業側がギグ・エコノミーを自社のプロジェクト運営に活用するには、ちょっとハードルがありそうだとも感じます。

それは「プロジェクトマネージャーの不足

「ものや人を運ぶ」「データ入力をしてもらう」というような成果が明確で良し悪しの評価もしやすいような仕事をギグ・エコノミーで依頼・受託する、というのであればプロジェクトマネジメントは必要ないでしょう。よってこの手の仕事は、最終的にはDAO(Decentralized Autonomous Organization)になって、マネジメントの仕事が無くなり、プラットフォームの会社さえなくなるのかもしれません。

一方で、人的関与をなくすのが難しいんじゃないかと思っているのが複合的な問題解決プロジェクト。企業のプロジェクトは何らかの問題解決の仕事なので、本来であれば、必要なスキルセットを持った人を外部から短期的に集め、終わったら解散するという「ギグ」スタイルでプロジェクトが回せれば効率的。

しかし、これを行うにはプロジェクトマネージャーの力量が必要です。

組織デザインの言葉で言うと、プロジェクトマネジメントとは分業と調整の全体設計を行ってそれを実行していくことです。問題解決プロジェクトは、不確実性が高いので、分業した後の調整の負担が非常に重くなります。更に、プロジェクトメンバーのバックグラウンドが多様になると、使っている言語や考え方、物事の進め方も多様になるので、調整業務が重くなる。

このマネジメントは結構難易度が高い。

社内であれば、権力格差があるので「とにかくやってください」で進められることもあるかもしれませんが、ギグ・エコノミーではそうした権力格差に頼ったマネジメントはプロジェクトチームの遠心力のスイッチを入れてしまいます。よってうまくいかない。

プロジェクトマネージャーは「大工」みたいなもの

プロジェクトごとにチーム組成をするプロジェクトマネージャーの役割は、たとえて言うならば家を建てる際の「大工」のようなものです。

大工さんの仕事って、実は私も建築関係のプロジェクトをやるまで知らなかったのですが、プロジェクトマネジメントなんですね。「家を建ててほしい」という注文が入ると、大工が建築のスケジュールを作り、水道業者や電気工事業者や内装工事業者など、様々な専門職を束ねて建築プロセスを進めていきます。

各専門職は、現場ごとに集められ、自分の仕事を責任をもって仕上げて次の専門職につないでいく。その取りまとめをしているのが大工なわけです。だから、大工が居ないと家は建てられない。今、日本では大工の数が年々減っており、そのため先々新築需要に対応できなくなるのではないか?と言われています。(出所「人手不足の深刻化により、飛躍的な生産性向上が求められる建設現場」野村総合研究所)

ギグ・エコノミー時代の組織デザインとプロジェクトマネジメントを考える

ギグ・エコノミー時代のプロジェクトマネージャーは、優れた大工の様に、

①専門家のネットワークに通じている
・「この仕事はこの人にお願いするとこれくらいのクオリティで仕事をしてくれる」というネットワークを日々構築している

②人に応じた関係性構築のスキルに長じている
・同一文化に属さないメンバーでプロジェクトが構成されるため、仕事の任せ方・進め方・確認や評価の仕方など、多様なマネジメント方法を使い分けることが出来る

③成果を束ねるスキルに長じている
・各メンバーのアウトプットを統合して最終的な成果物にしていく調整能力を持っている

ということが必要なのだろうな、と思います。

一方で、企業の中を見ると、そうした従来とは異なるプロジェクトマネジメントが出来る人材があまり見当たりません。

企業外部でギグ・エコノミー的なプロジェクト運営は増えそうだし、ギグ・エコノミーを企業が活用して自社プロジェクトを進めることも増えそうです。そうした時代の組織デザイン(分業と調整のデザイン)とプロジェクトマネジメントの在り方について、有効な方法論を考えることが大切になりそうだな、と思っています。また、企業にとっては、ギグ・エコノミーのようなオープンなプロジェクト環境でプロジェクトマネジメントを行える人材の採用と育成を行うことの重要度が増しそうだな、と思います。

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。 2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。株式会社かえる代表取締役。

プロフィール詳細

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