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2018.8.5

血糖値コントロールは健康になる「面白いゲーム」だった!

渡邉 寧 | 株式会社かえる代表取締役

生活習慣の見直しは難しい

健康の為とは言え、食生活を改善するのは非常に難しいですね。

飲み会の後に脂っこいラーメンを食べたら体に悪い。トンカツや丼ものは体に悪い。三食をコンビニ弁当やファーストフードで済ますのは体に悪い。味の濃い食べ物は体に悪いとわかっているけれどついつい食べてしまう。不規則な食事や食べすぎも体に悪いことは分かってはいるんだけれども、忙しかったり、ちょっと油断するとついついそうした食事になってしまう。

中年になってくると、健康診断でほぼ必ず医者から言われる生活習慣の改善。改善した方が自分にとっていいことはわかっているんだけれども、「そうですね~。考えないといけないですね~」などと返事をしながら、 実際には何も行動をしない。

きちんとした食生活をすれば自分のためになることはわかっているんだけれど、なかなかそれができない生活習慣の改善。

生活習慣の改善は、何故にここまで難しいのでしょうか。

生活習慣の見直しは「クソゲー」

ゲームデザイナーのジェイン・マクゴニガルは「現実世界はどうしてゲームのように面白くないのか?」 という問いを立てました。そして、面白いゲームのデザインを分析し、その枠組みを現実世界に適用することで、人々の行動を変える研究と実践を行っています。

 

ジェインは全てのゲームには共通する4つの特徴があると述べました。4つの特徴とは「ゴール」「ルール」「フィードバックシステム」「自発的な参加」です。 ゲームが面白くなるためには、この4つの要素が欠けることなく存在し、かつそれらの要素がプレイヤーを熱中させるように綿密にデザインされている必要があります。

例えば、歴史上稀に見る面白くないゲーム(=クソゲー)として知られるものに、1982年にATARI2600というゲーム機用に発売された「E.T.」 があります。スティーブン・スピルバーグの映画 E.T.のゲームということで多額の開発費をかけて作られたそうですが、あまりにもゲームが面白くないので全く売れず、売れ残った大量のカセットの在庫がニューメキシコの砂漠に埋められたという都市伝説がまことしやかに言われるゲームです。

E.T.がなぜ面白くないかというと、ゲームデザインにおける「ゴール」と「ルール」が明確でないからです。

ゲームを始めると、E.T.が空から降りてきます。しかし、そもそもここはどこで、どうしてここに降りてきたのかが分かりません。また、何をすれば良いのかも全く分かりません。移動すると穴に落ちたり、アイテムらしきものを入手したりするのですが、どうすればゲームをクリアできるのかがわかりません。プレイヤーは途方に暮れつつ、しばらく色々試すのですが、どうしてもゴールとルールが分からないので、怒りを感じながらゲームをやめてしまいます。

「ゴール」「ルール」「フィードバックシステム」「自発的な参加」という四つの要素が揃っていないと、途端にゲームはつまらないものになります

生活習慣の改善を「ゲーム」に見立てて考えた場合、多くの人が生活習慣の改善を行わない理由が見えてきます。要は、生活習慣の改善は「ゲームとして面白くない」のです。なぜなら、面白いゲームに必要な4つの要素を満たしていないからです。

医者からのアドバイスに従って生活習慣を変える場合、「ゴール」と「ルール」は明確です。健康診断における数値の改善が明確なゴールで、食事を変えたり運動を始めたりすることでその数値を変化させます。自分で工夫して生活を変えて数値を変えるのがルールです。結果は次回の健康診断において明らかになります。また「自発的な参加」という要素も担保されています。生活習慣の改善を始めるというスタートは、自分で切る必要があり、強制的な行為ではありません。

4要素のうち3つはあるのですが、このゲームに致命的に欠けているのが「フィードバックシステム」です。

生活習慣の改善にはまず食事を変える必要があります。食べるものや食べ方を変えないとならない。問題は毎食の食事の内容や食べる順番を変えたところで、その結果が食後すぐにわからないということです。

以前と同じような食事を取ったとしても、食事の内容と仕方を変えたとしても、食後すぐには効果がわかりません。もちろん食後に眠くなりにくくなる、体が軽いような感じがする等の多少の体調の変化はありますが、多くの人にとってはその微妙な差は自覚できないことが多い。また体重や体脂肪量の変化は一食ですぐに違いが現れるものではありません。過去数日の食事量・水分量によって体重は大きく変動し、1回の食事のフィードバックがすぐには返ってきません

生活習慣を改善するゲームは、ゴールとルールは明確だけれども、自分の取り組みが成功しているのか失敗しているのかのフィードバックに難があります。食事の度ごとにフィードバックを受けられるわけではないので、モチベーションを保つのが非常に難しいゲームであると言えます。

血糖値コントロールは生活習慣見直しの大きなきっかけになる

2016年に NHK が血糖値スパイクに関する特集番組を放送しました。

それ以来血糖値スパイクに関する情報や特集が巷でよく目にされるようになりました。血糖値スパイクとは「食事を食べたすぐ後の短時間にだけ人知れず血糖値が急上昇しやがてまた正常値に戻る現象」です。血糖値スパイクは、通常の健康診断では見つからないことも多い現象ですが、知らずに放置すると体内の血管が傷つけられます。 その結果、知らないうちに脳梗塞や心筋梗塞などによる突然死のリスクが高まり、また、がんや認知症を引き起こす原因にもなっていると言われています。

日本人の3大疾病は「悪性新生物(がん)」「心疾患」「脳血管疾患」です。「心疾患」と「脳血管疾患」は血管にまつわる疾病で、死亡率で見ると人口全体の約25%がこの2つの疾患により死亡しています。 (平成28年人口動態統計(確定数)厚生労働省 より)

また血糖値スパイクは放置すると糖尿病につながります。日本の糖尿病患者数は2016年に初めて1000万人を超えました。(厚生労働省の国民健康・栄養調査2017より) 糖尿病は悪化すると様々な合併症を引き起こし、動脈硬化はもちろん、末梢血管の虚血による足潰瘍や、慢性腎臓病、網膜症といった深刻な病気につながります。

血糖値をコントロールすることは、血管の健康を守り、多くの疾病リスクを下げ、健康寿命を延ばす上で重要な、生活習慣改善の要素です。

しかし、ここにもまた問題があります。何を食べれば血糖値が上がりにくいのか、どれくらい運動をすれば血糖値が上がりにくくなるのか。そうした情報は巷で多く提供されていますが、自分で実践したとして、その結果をすぐに知ることが出来ないのです。長期的には目に見える差として出てくるけれど、短期的にはその結果は分からない。

血糖値コントロールは生活習慣改善の重要な要素なのですが、やはりゲームの観点からみると「つまらないゲーム」となってしまいます。

フリースタイルリブレというゲームチェンジャー

この状況を一変させたのが米アボット社の「フリースタイルリブレ」です。

これまで血糖値を自分で測るためには針を刺して血液を取り、それを分析デバイスで分析する必要がありました。 フリースタイルリブレも同様に針を刺して血糖値を測るのですが、針が専用のパッドについており、このパッドは1回貼ると2週間の間、24時間血糖値を記録し続けてくれます。

腕の裏にパッドを貼るのですが、腕裏は痛点がないらしく、パッドを貼る際にはほとんど痛みを感じません。予想以上に針が長かったので私も、「これは痛いのではないか」と躊躇しましたが、貼ってみると実際には痛みはほぼゼロでした。

これまで即時に知ることができなかった自分の血糖値をその場で測れることの意味は非常に大きなものがありました。これはまさに、即時の「フィードバックシステム」だと感じました

食後、血糖値は上がり始めますが、「糖尿病治療ガイド(日本糖尿病学会)」によると、75 gのブドウ糖を摂取した2時間後に、血糖値が200mg/dLを超えると糖尿病型と診断されます。また200mg/dLまではいかなくても140mg/dLを超えると境界型と呼ばれ糖尿病予備軍と考えられます。

食後血糖値の測定は現在の健康診断の診断項目には入っていないことが多いと思います。よって、空腹時の血糖値が上がってきていることが健康診断で分かった時に、初めてブドウ糖負荷試験という食後血糖値の推移を測定する検査を行います。動脈硬化は進行性の病気なので、早めに発見して生活習慣を速やかに改善する必要があります。しかし現在の健康診断の仕組みでは、動脈硬化が進んだ段階で初めて要検査となり生活習慣の改善を図ることしか出来ません。血糖値スパイクを抱える人は推計で日本に1,400万人居ると言われているにも関わらず、こんな検査のやり方で良いのだろうかと思います。

フリースタイルリブレを使うことによって早期に血糖値スパイクを発見することができます。さらに、食生活を改善する際に何を食べると血糖値が140mg/dLを超えるのか自分の体で一つ一つ確かめることができます。

私の場合、食後30分から血糖値は変化をし始めます。血糖値コントロールに決定的に欠けていたフィードバックシステムがフリースタイルリブレを使うことによって補完されます。これは、生活習慣病の改善というゲームがゲームの4要素を満たし、一気に面白いゲームへと変化し得ることを意味します。

私の血糖値

下のグラフは私の血糖値の変化のグラフです。

この日はフリースタイルリブレを使い始めて二日目で、朝食にオートミールを60g食べました。午前中から仕事があったので朝食を食べた後すぐに移動したのですが、移動中に自分の血糖値を測ってびっくりしました。なんと血糖値が200mg/dLを超えていました。糖尿病治療ガイドによれば食後血糖値が200mg/dLを超えているのは糖尿病型と判断されます。血液検査でも尿検査でも通常の健康診断・人間ドックでは一度も糖尿病の可能性を指摘されたことがありません。

大変驚いたのでお昼はサラダ中心にして、まずサラダを食べ、タンパク質補給のためにプロテインバーを食べました。 このプロテインバーには、炭水化物は15gしか含まれていなかったので問題はないだろうと思ったのですが、昼食でもやはり血糖値が140mg/dLを超え170mg/dLまで上がりました。

フリースタイルリブレは一つのパッドで2週間血糖値を測ります。その後、様々な食事改善を行い、現在は血糖値は140mg/dL以下でコントロールされています。

学び①食事とは時間をかけて行う行為。早食いはダメ

フリースタイルリブレを使い、自分の体で血糖値の変化を見ていく中で、一つ気づいたことがあります。それは食事はゆっくりと時間をかけてとる必要があるということ。

私は忙しいと、ついつい食事を20分位ですませてしまします。一人で食事をしている時はなおさらで、仕事が忙しいので特に昼食は短ければ短いほど良いという考え方になりがちです。しかし、20分で食事をする場合、巷で言われる「野菜やおかずから食べる」といった食べる順番の工夫をどんなにしたところで、炭水化物を摂取した場合、私の血糖値は140を確実に超えます

一方で家族や友人と90分以上の長い時間かけて食事をしている場合は、結構な量の炭水化物や糖質をとっても血糖値は140を超えません。ビールはグラス一杯で糖質10gを含むため空腹時にビールを飲むと私の血糖値はスパイクします。しかし時間をかけた食事の中でビールを飲む分には血糖値に大きな影響はありません。また、食後に糖質たっぷりのムースをデザートで食べたことがありますがこちらも血糖値に大きな変化はありませんでした。

血糖値の上がり方は人によって違うのでもちろん一概には言えませんが、本来食事というものはゆっくりと時間をかけて取るべきものだと思うのです。そして一人でゆっくりと食事をするというのはなかなか難しいものがあるので、気心知れた人たちと一緒に食卓を囲んで、時間かけて話をしながら食事をする

自分の体で食事と血糖値の関係を見る中で、人間にとってはそれが最も健康的な食事の方法なのではないかと感じました。

学び②食べるものを意識して選べば血糖値は100%コントロールできる

2週間の血糖値コントロール「ゲーム」を経て、身にしみて気づいたことがもう一つあります。それは、「自分は自分の血糖値を100%コントロールできる」ということです。

私の場合は空きっ腹に糖質を入れると確実に血糖値スパイクを起こします。糖質の量はあまり問題ではなく、10g程度のごく少量でも私の血糖値は140を超えます。炭水化物の種類はあまり問題ではありません。オートミールや全粒粉、玄米といったいわゆる低 GI 食品であっても、空きっ腹に食べれば確実に血糖値スパイクを起こします。世の中で言われる「野菜やおかずから食べれば血糖値は上がらない」という食べ方の工夫も、「一口目に野菜二口目にご飯」というレベルでは私にはほとんど意味がありません。

一方で食事時間を長めにとり、キャベツやブロッコリーのような低糖質の野菜から食べ始め、後半に炭水化物糖の糖質を含む食物を摂取した場合、私の血糖値は140を超えません。この食事時間が上で書いたように大変重要で、90分くらいの時間をかけて食べている場合は血糖値は完全にコントロールされます。

逆に言うと、時間がない中での食事で済まさなければならない時は、私の場合は、完全に糖質を抜いてタンパク質中心の食事にする必要があります。 このことに気づいてから私はお昼ご飯の定食のご飯は完全に無しにしてもらうようにしました。代わりに納豆などのタンパク質の小鉢を1品追加するようにしています。(↓白米を抜いて小鉢を増やした例)

身体のコントロールは心のコントロールに繋がる

ジェイン・マクゴニガルは、優れたゲームにおけるプレイヤーの振る舞いを見て、プレイヤーがほとんどの時間を失敗に費やしていることに気づきました。プレイ時間の80%程度は失敗している時間にもかかわらず、プレイヤーはその失敗を楽しんでいます

ジェイン・マクゴニガルは、「幸せな未来は「ゲーム」が創る」の中で、

正しい形での失敗のフィードバックは報酬

であると述べ、

ゴールが魅力的で、フィードバックが十分に意欲をそそるものである時、私たちはゲームの限界にー創造的に誠意を持って熱心にー長い時間挑戦し続ける

と述べています。

フリースタイルリブレを使った血糖値コントロールは楽しいゲームです。デバイスのディスプレイに表示されるリアルタイムの自分の血糖値を140以下に抑えることを目指し食べ物や食べ方を色々と変えます。

実験の中で140を超えてしまうことも多いのですが、その失敗は有益な知識となります。 自分の体がどのようにできていて、何をすると何が起こるのかを知る。その一つ一つの知識は、その後の自分の健康的な生活習慣を構築する上で大変大事な情報です。

そして何よりも大事なことは、生活習慣を変える努力は必ずポジティブな結果として帰ってくるということです。努力をすれば報われる。この事実を身をもって体験することはその後の人生をよりよくしていく上で大変有効なきっかけとなります。

ジェイン・マクゴニガルは、

非常に多くの研究で、学生も企業重役もスポーツ選手も、「私には物事を変える能力がある」とか「私の運命の行く末を導くのは私自身だ」という信念を持てる人の方が成功していると一貫して示されている

と述べています。

自分の体を自分の意思でコントロールできるという経験は、 自分の人生に対する楽観的な心理状態を作ります。心のコントロールは 非常に難しい側面が多いのですが、体のコントロールは心のコントロールに比べると難易度が低いといえます。 物理的な法則に従って体はできているので、知識と法則の運用をしっかりと行えば体は確実に変化します。

ゲームの分野で、あまりにも難しいゲームのことを「無理ゲー」と呼びます。人間誰しも無理ゲーを長時間行うモチベーションを維持することは困難です。体のコントロールという難易度の低いゲームから始め、心のコントロールに向かっていく。それが人生という名のゲームをモチベーション高く楽しむための秘訣なのではないかと思います。

たかだか血糖値コントロールの話ですが、豊かな人生を送る一つのきっかけになるのではないかと思います。

 

*最近はフリースタイルリブレがAmazonで買えるようになっていました。①読み取り機と②センサー(2週間使い捨て)の2つを購入する必要があります。私はAmazonで自分で買ってみましたが、医療機器ですので、気になる方はまず医師にご相談されるのが良いかと思います。

①読み取り機

②センサー

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。 2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。株式会社かえる代表取締役。

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