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中国人を理解する為の第一歩

異文化に対応する

2020.6.24 NEW

中国人を動かすメカニズム|近くて遠い中国文化

渡邉 寧 | 株式会社かえる 代表取締役

「アメリカと中国の間」という日本の立ち位置

中国ビジネスをされている方から、中国人との交渉が難しいというお話をしばしば伺います。決め事がコロコロ変わり、厳しい要求をしてくることも多い。アメリカ人も厳しい要求を突き付けてくることがあるが、中国人も同様に厳しい要求を突き付けてくる、というお話です。

私は、海外赴任者への異文化トレーニングの場に行くことが良くあります。トレーニング参加者の赴任先は参加者によってマチマチではあるのですが、アメリカと中国は人数が多いことが多く、それぞれの国に行く人達だけでグループワークをするためのテーブルが出来ます。

GDPで見ると、この2か国が突出しており、市場としてはもちろん、生産や研究開発の場としても赴任が集中するのは自然な流れなのだと思います。

(図1 国内総生産 USドルでの名目GDP データ元:世界銀行 グラフ:Google)

その為、中国文化についての質問は、多くの方から出てきます。

中国の発展は長期的に続いているものの、特にこの15年くらいの技術進歩・社会変化が急激過ぎて、私たちの中国理解が追いついていないように感じます。これまで、多くの日本人の関心はアメリカに向いており、中国を始めとしたアジア地域へ十分な関心を払って来なかったのかもしれません。

日本は、地理的にも、国際的な関係的にも、アメリカと中国の間に立つことが多くなることが予想される中、この2つの大国のメカニズムをよくよく理解しておくことは重要だと思います。

ホフステードの国民文化の6次元で見ると、中国は集団主義・個人主義(IDV)のスコアが20と低く、これは中国が集団主義の文化であることを示しています。

(図2 集団主義・個人主義(IDV)スコアの比較 データ元:Hofstede Insights Group)

アメリカは対照的にIDVスコアが91と高く、これはアメリカが個人主義の文化であることを示しています。日本は46なので、丁度その中間という立ち位置です。

 

中国人も個人主義者だという印象

アメリカが個人主義文化であるということは、ホフステードのモデルを学ばなくても多くの日本人が知っています。例えば、会社における雇用の文脈でいえば、仕事のJob Descriptionが明確に決められており、アメリカ人は自分の実績に基づいた待遇要望を明確にするイメージを、多くの人が持っています。日本人から見るとアメリカ人ははっきりと主張し、我が強く見えることがあり、対等に交渉する為には、事実に基づいた明確なコミュニケーションをしなくてはならないということも、多くの人が容易に理解します。

このようなアメリカの個人主義文化の説明をすると、必ず議論になる事があります。それは、「それを言うなら、中国人も我が強い。社内で昇給や昇格を強く主張してくる。だから、中国も個人主義なのではないか?」というものです。

中国ビジネスに携わってる方や、中国に駐在していた方は、時として実体験として「強い要求をしてくる中国人」に出会っている為、中国文化が個人主義なのか集団主義なのか、腹落ちした理解をすることが難しいことがあります。

 

内集団の中なのか外なのかが大問題になる

アメリカと並び大国として台頭しつつある中国は、地理的には日本に近く、見た目もアジア人で似ており、人の行き来は大変盛んではあるものの、文化的には日本とは異なります。このことは、ホフステードの6次元モデルのスコアを比較しても分かりますが、例えば社会学者の小室直樹先生は、

「中国社会の経緯は、タテの共同体(ゲマインデ Gemeinde)たる「宗族」と、ヨコの共同体たる「帮(ほう)」である。しかし、日本人、アメリカ人などの外国人にとって、これほど理解困難な概念もない。日本やアメリカには、「宗族」や「帮」に該当する共同体なんか想像もできないからである」(出所 小室直樹の中国原論)

と述べています。

アメリカの文化は、戦後様々な形で日本で紹介されてきているので、参考書籍は多く、理解する術は多く存在します。しかし、中国に関しては、日本にとっての重要度が急激に上がっているにもかかわらず、アメリカに比べて理解するのが困難な状況にあるように思います。

そんな中、小室直樹先生の書籍は膨大な知見から、中国社会の成り立ちの理論が分かり易く解説されており、中国に行かれる方には大変参考になるだろうと思います。

(「小室直樹の中国原論」小室直樹)

ホフステードの6次元モデルでは、中国文化の集団主義はIDV=20という数字によって表現されるのですが、小室先生は、この集団主義の一端を「知人→関係(クアンシー)→情誼(チンイー)→帮(パオ)」という人間関係の構造で説明します。

(図3 中国における人間関係の構造 出所 同上)

中国においては、人間関係が重要という話は各所で聞きますが、社会において人は誰しも人間結合の程度の異なる複数の集団を形成しています。その集団の内と外とで全く違う顔を見せるのが中国の集団主義の特徴だということです。

日本人も内集団を形成するのですが、中国人の帮(パオ)に相当するような密接な繋がりを持った内集団は、現代の我々の生活の中では見る事が少なく、このことが中国の集団主義の理解を難しくしています。

 

我の強い中国人の要求は、関係性づくりに失敗しているサインかも

こうした中国の集団主義の理解を前提に、再度、給与や昇格で「強い要求をしてくる中国人スタッフ」の存在を考え直すと、個人主義の自己主張の強さとは違う、集団主義における自己主張の強さが見えてきます。

つまり、もし中国でマネジメントをしていて、スタッフから給与や昇格に関して「それはないだろう・・・」と感じてしまうような要求を突き付けられたとしたら、それは、そのスタッフとあなたは同じ内集団には属していない可能性があるということです。

日本の、特に大企業に勤めている人は、「会社」が内集団になっていることがあります。しかし、現地の中国人はそのようには考えていない可能性があります。外集団である会社に対して、義理はありません。敬意や思いやりを持った態度を取る必要性は低くなるので、自分(達)の利益だけを考えて要求を出すことに躊躇は無い、ということかもしれないということです。

集団主義の文化では、人との関係性構築が仕事の成否の大きな部分を占めており、その人間関係を作るには時間がかかります。取引先等の外部だけでなく、社内や協力会社との人間関係構築にも労力をかける必要があります。これは、そこまで集団主義というわけでは無い日本文化の価値観を背景に持つ我々には簡単ではないことなのかもしれません。

餃子が関係性のバロメーター?

一方で、現地の中国人と深い関係を作っている日本人もしばしば見かけます。

前にクライアント企業で、中国に長く駐在されていた方から「家で餃子を一緒に作りませんか?」と誘われたら赴任者として一人前、と仰っている方がいました。

通常の職場の関係性で、ちょっと仲良くなってくると「餃子を一緒に食べましょう」という機会が出て来るとのこと。そこで更に関係が深くなってくると「今度、家で一緒に餃子を作って食べましょう」というお誘いが来るのだと仰ってました。

家に招く、家を訪問する、というのは関係性を一段深くする方法でもあるので、「餃子を家で・・・」という話は関係性の深まりを測る一つのバロメーターになるというお話でした。

中国をはじめとして、世界には集団主義の文化を持つ国がたくさんあります。日本人は自分たちの文化は集団主義だと思っていますが、アジアの中では、日本は最も個人主義寄りのスコアを示しています。そのため、集団主義文化で働く場合は、日頃のちょっとした言動も含めて、ここではどのような内集団の関係性が構築されているのか、というレンズで会社組織やプライベート関係を見ていくことが必要になります。

関係性を構築することは一筋縄では行かないものですが、集団主義文化においては、人との関係性がすべての基礎となるのだから、誠心誠意そこにエネルギーを投入することが必要なのだと意思決めをする必要があります。

日本文化はアメリカのような超個人主義文化と、中国のような超集団主義の丁度真ん中に位置します。この両方の文化を理解できたとしたら、それはこれからの日本の立ち位置を考える上で、大変大きなアドバンテージになると感じます。

 

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。 株式会社かえる 代表取締役

プロフィール詳細

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