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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える
2025.9.12
週休3日制は「ゆとり」じゃなくて「みんなで分担」の話かもしれない – 歩きながら考える vol.126
渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)
今日のテーマは週休3日の話が日本に限らずグローバルで出ている中、その理由を考える件について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は散歩しながら、週休3日制について考えてたことを話してみようと思います。きっかけは日経新聞の記事でオランダの働き方を読んだことなんですが、これがなかなか面白くて。週休3日って聞くと「ゆとり」とか「ワークライフバランス」みたいな話かと思うじゃないですか。でも、読んでいくうちに「あれ?これ違う話なんじゃない?」って思ったんです。ゆるく話してみようと思います。
オランダの「1.5人モデル」から見えてきたこと
オランダって、OECD加盟国の中で週の労働時間が一番短いのだそうです。平均29時間。「え、それで経済回るの?」って思いますよね。
で、記事によると、オランダには「1.5人モデル」っていうのがあったとのこと。夫がフルタイムで1.0、妻がパートで0.5、合わせて1.5人分稼ぐっていう。でも1996年に労働時間による差別を禁止する法律ができて、パートでもフルタイムと同じ時給がもらえるようになった。2000年には労働時間を自分で選べる権利も認められた。
そしたら面白いことが起きたって話みたいなんですね。つまり、オランダって男女平等の意識が高い国だから、「なんで女性だけパートなの?」ってなった、と。で、夫婦がそれぞれ0.75ずつ、つまり週4日働くっていうスタイルが出てきた。
ここで「あれ?」って思ったんです。1.5人モデルから0.75×2モデルになっても、家庭全体の労働時間は1.5のまま。全然減ってないじゃん、って。つまり、これ時短の話じゃなくて、夫婦で平等に分担しましょうっていう話なんですよね。

なんで0.75ずつ働く必要があるのか
じゃあ、なんで夫婦がそれぞれ仕事を減らす必要があるのか。ここから考えていくと、面白いことが見えてきました。
例えば両親など家族の介護。理論的にはプロに全部任せることもできます。お金さえあれば。でも現実的には、特に地方だと経済的に厳しい。それに、親のちょっとした体調の変化って、やっぱり身近にいる家族の方が気づきやすいじゃないですか。
子育てもそう。保育園に預けることはできるけど、熱が出たときのお迎えとか、習い事の送り迎えとか、結局誰かが時間を作らなきゃいけない。地域の活動もそうですよね。消防団とか町内会とか、誰かがやらないと成り立たない。
こういう仕事って、市場のサービスに完全に任せるのは難しいんですよね。コストの問題もあるし、何より身近な人がやった方がいい場合が多い。でも、そのためには時間が必要。だから週4日勤務にして、残りの日でこういう「家族や地域の仕事」をやる、っていう発想なのかなって。
これから、そういう仕事が増えていく?
歩きながら考えてたら、こういう「市場に任せにくい仕事」って、これから増えていくんじゃないかって思えてきました。
高齢化が進めば、親の介護や見守りが必要になる。環境問題への取り組みも、地域レベルでやることが増えそう。共働きが当たり前になれば、孫の世話を手伝う機会も増える。
ちょっと想像をふくらませると、長寿化と健康寿命の延長が進むと、将来は三世代同居で、70歳の両親が週1.5日ぐらい働いて、現役世代は週3日ぐらいにして、みんなで子育てと介護を分担する、みたいな形もあり得るのかなって。家族全体で「稼ぐ仕事」と「ケアの仕事」をうまく配分する、みたいな。

「なんとか回せる」を基準にする社会
で、ここがポイントだと思うんですけど、週5日フルで働ける人を「標準」にすると、どうしても無理が出てくるんですよね。社会全体での仕事の分担の在り方と合わない。
介護が必要になったら仕事辞めなきゃいけない、子どもが生まれたら誰かがキャリアを諦める、地域活動は定年後の人に任せっきり…。けど、今はどこも人手が足りないから、端的にって回らない。
でも最初から週4日を標準にしておけば、多くの人が仕事も家庭も地域も「なんとか回せる」のかもしれない。完璧じゃないけど、みんなが参加できる。オランダの0.75×2モデルって、そういう「ちょうどいい落としどころ」を見つけた結果なのかもしれません。
週休3日制って聞くと「余暇を楽しむ」みたいなイメージがあったけど、実はもっと現実的な話なのかもしれない。市場経済だけじゃカバーしきれない部分を、みんなで少しずつ時間を出し合って支える。そういう社会の仕組みづくりの話なんじゃないかなって。
日本も介護離職とか、待機児童とか、地方の担い手不足とか、いろんな課題がありますよね。これを全部市場のサービスで解決しようとしても限界がある。もしかしたら都会はギリギリそういう市場中心のやり方が出来るかもしれないけど、地方は難しそう。だったら、働き方自体を見直して、みんなが「ケアする時間」を持てる社会にした方がいいのかもしれません。
もちろん、オランダの人に聞いたら「いや、単に人生楽しみたいから週4日にしてるだけだよ!」って言われるかもしれませんけどね(笑)。でも結果として、いろんな人が無理なく参加できる社会になってるとしたら、それはそれで学ぶところがあるなって思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。みなさんは週休3日制についてどう思いますか? もし感想があったら、ぜひSNSでシェアして教えてください。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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