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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える
2025.9.10
中国の軍事パレードから考える、日本の防衛と民主主義の話 – 歩きながら考える vol.124
渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)
今日のテーマは軍備と安全保障の質と効率を担保するためには、市民が勉強するしかないんじゃないかと思う件について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は移動時間を使って、ちょっと重たいけど大事な話をしようと思います。9月6日の朝日新聞で、中国が9月3日に北京で行った抗日戦争勝利80年の軍事パレードで出てきた兵器に関する記事を読んだんですけど、そこから色々考えちゃったんですよね。今日はその話を、歩きながらゆるく考えてみます。
中国の新型ミサイル「DF-61」に衝撃を受けた話
まず最初に、今回の軍事パレードで公開された兵器の話から。
新型の大陸間弾道ミサイル「東風(DF)61」っていうのが出てきたんですけど、これがまたすごくて。核弾頭を10発ぐらい搭載できるらしいんです。射程は約1万2000キロで、北京からワシントンD.C.まで届くという。
で、これ見て思ったのが、「ボタン一つで世界が終わる」っていう、なんて言うんですかね、映画みたいな話が現実になってるんだなって。
さらに驚いたのが、ドローンの種類の多さ。航空機型で少なくとも6種類、水中型も複数、陸上型では犬型ロボットや小型戦車型まで出てきたそうです。まるでSF映画の世界ですよね。
中国は「中国製造2025」っていう国家戦略で製造業を相当鍛えてきたんですけど、その成果が軍事面でも現れているということなんでしょうね。

ドローン主体の戦争が開戦のハードルを下げる?
で、ここからがちょっと考えさせられる話なんですけど。
中国がこれだけドローンとかロボット兵器を開発してるのって、実は「人が死ぬ戦争はやりたくない」からなんじゃないかと思うんです。
現代って、個人主義が進んで人の命の価値が非常に重くなってますよね。戦場で自国の兵士が死ぬっていうのは、世論的に耐えられない。それは欧米だけじゃなくて、たぶん中国も同じで。自分の家族とか子供が戦争で死ぬってなったら、それは政権に対する極めて強い逆風になる。
だから、ドローンとかロボットで戦争する。今のウクライナ戦争でも大量のドローンが使われてますけど、将来はもっとすごいことになりそうです。人間の海兵隊が上陸する前に、犬型ロボットの大群が大挙して攻めてくるみたいな。
でも、これって皮肉な話ですよね。人が死なないなら、政治的判断のコストが下がる。世論の反発も少ない。そうなると、戦争を始める意思決定に躊躇しなくなるかもしれない。つまり、人命を大切にするがゆえに、かえって戦争のハードルが下がるという逆説的な状況が生まれるんじゃないかって。
これ、めちゃくちゃ怖い話だと思いません?

GDP比5%の軍事費なんて、日本には無理な話
さて、ここからが本題なんですけど。
アメリカは今、NATOの同盟国にGDP比5%の防衛費を要求してて、アジアの同盟国にも同じ水準を求めてるんです。実際、2025年6月にNATOは2035年までにGDP比5%という新目標で合意しました。
で、日本もその圧力を受けてるわけですけど、正直言って無理じゃないですか?
中国の軍事費って、GDP比で1.5%程度だって言うんですよ。でも、GDPの規模が巨大だから、それでも世界第2位の軍事費になってる。
日本がGDP比5%にしたら、どっからお金出すのって話になりますよね。高齢化で社会保障費は増える一方だし、災害対策だって必要。そんな中で軍事費を3倍以上にするなんて、社会保障の観点から耐えられないと思うんです。
しかも、ここが重要なんですけど、日本がGDP比を増やしたら、中国だって「じゃあうちも」って増やしそうじゃないですか?だって、まだ1.67%しか使ってないわけですから。中国が2%、3%と上げていったら、結局イタチごっこになって、日本はさらに苦しくなる。これ、どうするんですかって話ですよ。
じゃあ、どうするか。物量で張り合うんじゃなくて、質と効率で勝負するしかない。少数精鋭でも「迂闊には手を出せない」っていう抑止力を持つ。これしかないんじゃないかと。
有権者が軍事リテラシーを持つことの重要性
で、ここが今日一番言いたかったことなんですけど。
軍備の「質と効率」を上げるには、実は有権者の関心と知識が不可欠なんじゃないかって思うんです。
政府が本気で防衛の質と効率を上げようとするインセンティブって、結局は有権者がどれだけそのことに興味を持って、批判的な目を向けているかによるんですよね。
今の日本って、戦後80年間、軍事のことをあまり考えなくて済んできた。でも、軍事を理解せずに、感情的に賛成か反対かを言うだけでは、本当の意味での平和は守れない。
例えば、「なぜこの装備が必要なのか」「この技術は費用対効果が適切か」「もっと効率的な抑止の方法はないか」みたいな、具体的で技術的な議論ができる市民が増えれば、政府も説明責任を果たさざるを得なくなる。結果として、限られた予算でも質の高い防衛力を構築できるんじゃないでしょうか。
これって、新しい形の民主主義かもしれません。感情論じゃなくて、理性的で技術的な議論をする。それが、「あんまりいい時代じゃない」今だからこそ、必要なんだと思います。
まとめ:戦後80年の節目に考える
というわけで、今日は中国の軍事パレードから始まって、日本の防衛と民主主義の話まで考えてみました。
重たい話になっちゃいましたけど、戦後80年という節目の年だからこそ、こういうことも考えていかないといけないんじゃないかなと。物量で軍拡競争するんじゃなくて、質と効率で抑止力を持つ。そのためには、私たち市民が軍事リテラシーを身につけて、建設的な批判と議論をしていく必要がある。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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