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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える

2026.8.12

鴨川のラグビー老人から考えた「スポーツのバリアフリー」の話 – 歩きながら考える vol.350

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、シニアのラグビーとスポーツのバリアフリーについて。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は、この間鴨川を走っていたときに見かけた光景と、今朝の新聞記事が頭の中でつながったので、その話をしてみようと思います。歩きながら、ゆるく考えてみますね。

鴨川で見た、老人二人のラグビー練習

先日、鴨川沿いを走っていたら、60代後半から70代くらいと思われる男性が二人で、ラグビーの練習をしていたんですよね。片方はどうやらラグビー経験者らしきご老人で、もう片方はおそらくそのご友人で、未経験者の方。経験者の方が、パスの仕方なんかを教えている様子でした。

これを見て、「歳を取ってからラグビーをやりたくなる気持ち、実はけっこうわかるな」と思ったんです。

ラグビーの本質的な面白さは色々な側面があるのだと思いますが、私自身がラグビーを観ていて感じるのは、「陣地をどう取っていくか、どう回復していくか」という面白さです。サッカーだと展開が早くて、せっかく陣地を回復してもすぐに押し込まれてしまう印象がありますが、ラグビーは地道に少しずつ陣地を取っていく感覚がある。

そんなことを感じながら観ているので、私自身も「学生のときにやっておけばよかったな」と思うことがあります。だから、歳を取ってから「ラグビーをやってみたい」という気持ちになっても、全然不思議ではないなと思ったわけです。

ただ、現実問題として、年を取ってからラグビーをやるのは難しいとも思うわけです。体の接触があると、すぐに怪我をしてしまう。

タックル禁止の「陣取り合戦」が五輪種目になる

で、今朝の日経新聞を読んでいたら、この問題への答えのような競技の記事が出ていました。フラッグフットボールです。8月13日からドイツで世界選手権が行われ、2028年ロサンゼルス五輪の予選を兼ねているとのこと。フラッグフットボールは、ロス五輪で初めて実施される新種目なんです。

フラッグフットボールは、1チーム5人で、4回の攻撃で相手陣内のエンドゾーンを目指す競技です。ラグビーではなくアメリカンフットボールから派生した競技なので、鴨川のご老人たちがやっていたラグビーとは系統が違うのですが、「陣地を取り合う」という骨格は共通しているように思います。そしてポイントは、タックルなどの接触プレーが禁止されていること。守備側は、ボール保持者の腰につけられた旗(フラッグ)を取ることでプレーを止めます。

つまり、陣取り合戦の面白さはそのままに、接触による怪我のリスクを取り除いた設計になっている。

さらに調べてみると、フラッグフットボールは小学校の学習指導要領解説(体育編)にも例示されていて、既に学校の授業で行われている競技なんだそうです。子どもたちが学校でやっている競技が、五輪種目になり、そして高齢者が安全に楽しめる競技でもある。子どもから高齢者まで、同じ競技を楽しめるというのは、なかなか珍しいことなのではないでしょうか。

私はこれを「スポーツのバリアフリー」と呼びたいと思います。怪我のリスクを下げるというのは、単に「弱い人向けの妥協」ではなくて、「誰もが参加できる設計」なんじゃないかと思うわけです。

スポーツが満たしてくれる、幸福の要素

なぜスポーツのバリアフリーが大切だと思うかというと、こうした活動が、幸福を構成する複数の要素を同時に満たしてくれる可能性があるからです。

自分で選んで参加して、作戦を考えてプレーする。練習すれば少しずつ上手くなる実感がある。そして、仲間ができる。心理学の自己決定理論で重視される3つの要素——「自律性」「有能感」「関係性」——が、スポーツには自然に揃っているんですよね。しかも足腰も鍛えられて、幸福のベースである健康寿命にも効いてくる。幸福の土台と中身が一度に手に入る活動というのは、そんなに多くない気がします。

「肩を並べる」関係づくりの場として

3つの要素のうち、特に「関係性」について、もう少しだけ。現代日本で私が大きな社会問題だと思う「男性の孤独」の話につながってくるからです。

趣味がゴルフのおじさんたちを見ていると、彼らはよくゴルフの話をしてますね。一緒にプレーして、その後の食事や飲み会でもその話をし続ける。共通の活動や目標を介して関係を作っていくスタイルです。

関係性の作り方に男女差があるのではないかというのは、私の実感ベースの話なのですが、似たようなことを言っている研究もあるそうです。女性の友情はフェイス・トゥ・フェイス(対面)——会話を中心に築かれる傾向がある——のに対し、男性の友情はショルダー・トゥ・ショルダー(肩を並べる関係)——何か共通の目標に向かって、一緒に作業などをやりながら絆を作っていく——と言われることがあるのだとか。

実例としては、オーストラリア発祥の「メンズシェッド」という活動があるそうです。シニア男性が集まって、木工や修理などの手作業を一緒に行う地域活動で、高齢男性の孤立を減らす取り組みとして注目されているとのこと。「話しましょう」ではなく「作りましょう」から入る。もちろん個人差も文化差も大きい話だとは思いますが、友情のあり方には一定の男女差があるのかもしれないなと、最近思うところではあります。

そう考えると、怪我をしにくくて、かつ集団で行えるスポーツが地域にあるということは、特に中高年男性にとって、関係性を作る貴重な入口になるのではないかと思うのです。

というわけで、今日は鴨川のラグビー練習から始まって、フラッグフットボール、スポーツのバリアフリー、そして幸福との関係まで、歩きながら考えてみました。みなさんは、歳を取ってからやってみたいスポーツ、ありますか?もしこの記事が面白いと思ったら、ぜひSNSでシェアして、コメントで教えてください。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

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