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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ歩きながら考える

2026.8.4

会社の「空気」はどこから変えるのか? – 歩きながら考える vol.344

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、組織の「空気」はどうやって作られるのかについて。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日も歩きながら、最近考えていることを話してみようと思います。テーマは組織文化。というのも、いま関わっている地域の幸福度調査で「街の空気」を扱おうとしていて、そこから会社の「組織文化」について改めて考えることになったんですよね。

「街の空気」は変えられるのか

いま進めている地域の幸福度調査では、今年、個人レベルだけでなく、学区や町といった集団レベルの分析を行う予定でいます。今年から回答者と地区を紐づけてデータを取る予定なので、これをもとに地域と個人の関係を統計的に分けて分析する、マルチレベル分析という手法を使う予定です。

私が本当に興味を持っているのは、その先の話です。行政の施策が、地域を経由して個人の幸福にどう影響するのか。そして、短期ではなかなか変化は出ないと思うのですが、中長期で見たときに「街の空気」は変わるのか、変わらないのか。「空気」というつかみどころのないものが、働きかけによって動くのかを見てみたいわけです。

で、私は同時に、会社組織のプロジェクトもやっています。行政で「街の空気」を考えながら、会社で「組織の空気」を考える。この二つを行き来しているうちに、組織文化を改めて捉え直すことになりました。

組織文化とは、言葉ではなく「空気」のデザイン

組織文化の取り組みというと、理念やパーパス、行動指針といった「言葉を作ること」がまずありますね。もちろん、言葉を作ること自体にも意味はあります。でも、本当に大切なのは、どのような行動が繰り返され、承認され、報われていくのかをメンバーが学習した結果として生まれる「空気」をデザインすることだと思うわけです。

これが決定的に重要だと考えるのは、日本では特に「空気を読んで周囲に合わせる動き」が強いと考えられるからです。背景には二つの関連する文化心理学の研究があります。

一つは、文化心理学でいう相互協調的自己観。周囲との関係の中で自分の振る舞いを調整する傾向が、日本では比較的強いということです。

もう一つは、ロスバウムらのプライマリー・コントロールとセカンダリー・コントロールの研究の系譜です。セカンダリー・コントロールとは、環境を変えるのではなく、環境に合わせて自分を変えること。その後の日米比較研究では、日本ではこちらの調整が相対的に重視されると論じられています。

環境に合わせて自分が変わる感覚が一般的な社会では、メンバーが「合わせにいく先」である空気の質が、そのまま組織の質になる。だからこそ日本の組織では、「空気のデザイン」が組織の効果性にとって圧倒的に大事だと思うわけです。

空気を動かす二つの構造

ただ、「空気をデザインする」と言われても、捉えどころがないじゃないですか。具体的にどうすればいいのかも、そもそも実現できるのかも、よく分からない。

では、この難題にどう向き合うか。私は、まず二つの構造に絞って考えるのが実践的だと思っています。

一つ目は、リーダーが「規範の守護者」になること。リーダーは、何を褒めるのか、どの発言を取り上げるのか、何に対して苦言を呈するのか。こうした日常の選択や反応に一貫性を持たせることが極めて重要です。そしてその一貫性は、言葉で定義された組織文化、つまり目指すべきビジョンやバリューと完全に一致している必要があります。リーダーの反応の積み重ねこそが、組織の規範を作っていくからです。

二つ目は、多数派がどのような規範で行動しているか。これはリーダーの動きとは別の変数として捉える必要があります。目指す文化と整合的な行動をする人が多数派を占めていれば、新しく入ってきた人は、その背中を見て自然と行動様式を学んでいきます。

これ、例えば、会議での発言のあり方なんかを見ていると良くわかります。一般的な日本の組織では、会議で積極的に発言することは決して悪いことではないものの、発言したからといって何か良いことがあるとも思えない。だから結果として、多くの人が黙ってしまう。一方、外資系コンサルティングファームなどでは全く真逆の規範があって、その場で個人として付加価値を出さなければ評価が下がり、出せばプラスに働く。どちらも、誰かに「そうしなさい」と言葉で強制されたわけではなく、周囲の多数派の行動を見て学習した結果なんですよね。

「空気」という曖昧なものを動かしたいときは、まずこの「リーダー」と「多数派」という二つの構造に絞って、現状をサクッと分析してみる。これが最も実践的なアプローチだと思っています。

どんな空気を目指すのかを決める

もう一つ大事なのが、そもそも「どんな空気を目指すのか」という価値観レベルの選択です。ここで補助線として役立つのが、多次元モデルであるホフステード・モデルです。例えば権力格差という次元を使えば、リーダーが意思決定してメンバーが従う体制か、権限委譲してメンバーが専門性を発揮する体制か、という問いが立てられる。どちらが良い悪いではなく、自分たちがどんな組織を作りたいのかを意識的に選ぶための座標軸になります。

私たちホフステード・インサイト・ジャパンでも、実際にこのアプローチで組織文化のプロジェクトに取り組んでいて、この面白さを国内でもっと広げていきたいと思っているところです。ご興味のある方は、ぜひ一緒に考えましょう。

というわけで、今日は「街の空気」から始まって、組織の空気のデザインまで、歩きながら考えてみました。みなさんの職場の「空気」は、誰のどんな行動から作られていそうでしょうか?この記事が面白いと思ったら、ぜひ「スキ」やフォローをお願いします。最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

プロフィール詳細

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