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ブログ歩きながら考える

2026.6.22

AIに「飲み会、多すぎ」と叱られた話 – 歩きながら考る vol.314

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、AIが日々の習慣形成を手伝う未来について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は移動時間を使って、最近の自分の体験から考えたことをお届けします。テーマは、AIによる健康管理の伴走について。AIに生活習慣を見てもらうって、実際どんな感じなのか。私の最近のちょっと気まずい経験から、ゆるく話してみようと思います。

AIに「このままだと目標に届かない」と言われた

私、秋になるとマラソンの季節なので、今からトレーニングを積み上げないといけないんですよね。ひとまず月200キロの走り込みが必要。ただ、年の初めに膝を怪我してしまったこともあって、無理はできない。とはいえ距離を踏まないことには足はできない。そのあたりのさじ加減を、毎日AIと相談しながらやっているんです。

日々のトレーニング結果を見せて、評価してもらって、翌週のメニューを一緒に組む。そんなことをずっと続けているわけですが、この間、AIからわりとはっきり指摘されまして。「このままだと月200キロには届かないですよ」と。

理由も明確でした。飲み会が多すぎる、と。要するに、飲んだ翌日に体調が優れなくて練習を休む、というパターンが私の場合だいたい週1回くらいある。そうすると、飲み会の日はもちろん走れないし、翌日も走れない。月に8回くらいトレーニングが欠ける計算になって、それじゃあ200キロには届かない―という、ぐうの音も出ない真っ当な指摘でした。

人間のコーチに言われると角が立ちそうな話ですが、AIに数字で淡々と示されると、妙に納得してしまう。これがAIに習慣を見てもらうことのメリットでもあります。

トレードオフは、実はトレードオフじゃなかった

とはいえ、飲み会は飲み会で社交の場でもあるし、全部やめるわけにもいかない。じゃあ何を削るのか、という話になる。飲み会に行けばトレーニングが減るし、トレーニングを優先すれば飲み会が減る。一見すると、典型的なトレードオフですよね。

でも、ここがこの話のいちばん面白いところで。よく考えると、これ、実はトレードオフじゃないんです。

私の場合、翌日に響いてトレーニングを潰してしまうパターンをよく見ると、遅くまで飲んでいる日なんですよね。逆に、飲んだとしても早い時間に切り上げた日は、翌日たいして調子が悪くない。具体的には、7時とか8時で切り上げた日、特に7時で終えた日は、翌朝ほとんど影響がないんです。

これには理由があって、一つは飲む量。終わりの時間を決めると、おのずと飲む量が制限される。もう一つはアルコールの分解時間です。調べてみると、お酒を飲んでから寝るまでの時間が短いほど、翌朝にアルコールが残りやすい。なんか、睡眠中はアルコールを分解する酵素の働きが低下するとかしないとか。つまり「遅くまで飲んで、酔ったまますぐ寝る」というのは、翌朝に残すいちばんのパターンなんだろうと思うわけです。

ということは、やらないとならないことは「飲み会を減らす」ではなくて、「飲み会の時間をずらす」になる。飲み会には行ってもいい、でも7時までに切り上げよう。あるいは、飲む日はあえて昼休みや朝にランを入れておこう。そうすれば、社交もトレーニングも両方こなせる可能性が出てくる。これをAIと話していて、「確かにそうだね」と腑に落ちたんです。

二者択一だと思い込んでいたものが、時間という軸をずらすだけで両立できる。これ、健康の話に限らず、仕事と家庭とか、勉強と趣味とか、いろんな場面に通じる話だなと思います。

毎日話すから、自分のパターンが見えてくる

こういう発見ができたのは、たまたまではないんですよね。私がAIと毎朝、その日のスケジュールの話をしていて、その時に体調のはなしもしているからなんです。

昨日こうだったから今日は調子が悪い、今日は調子がいい――そういう報告を毎日続けていると、データが少しずつ蓄積されていく。そうすると、AIのほうから「あなたのパターンって、こうですよね」と提示してくれる。自分ではなんとなく感じていたけれど、はっきり言語化できていなかったこと。あるいは「こうすればうまくいくんじゃないか」というアイデア。そういうものを引き出すのに、AIとの日々の対話は本当にもってこいだなと感じています。

これは、私が研究で関心を持っている領域とも重なる話で。人がAIと継続的に対話することで、自己理解が深まっていく側面は確かにある。一方で、AIが描いた「あなたのパターン」に、いつのまにか自分を当てはめていく危うさもあるかもしれない。そのあたりの長期的な影響は、これから見ていきたいテーマです。ただ少なくとも今回に関しては、自分一人では気づけなかった解を、対話を通じて見つけられたという実感があります。

健康管理の伴走者を、誰が作るのか

ここまで散々AIの便利さを語ってきたんですが、一方で、今のところこの一連の流れをワンストップでやってくれるサービスって、見当たらないんですよね。トレーニング記録、体調、飲み会の予定、睡眠―こうしたものをまとめて見て、伴走してくれる存在。いずれ登場するはずだとは思うんですが。

ただ、これがなかなか手を出しづらい領域でもあって。仮にスタートアップがこういうサービスを作っても、結局のところ、最後はOpenAIやAnthropicのような基盤を持つプラットフォーマーが簡単に実現できてしまう。だからプラットフォーマーじゃないプレーヤーが参入しづらい空白地帯になっている気がするんです。

じゃあそのプラットフォーマーが今すぐやるかというと、これも微妙で。たとえばAnthropicのような企業は、収益の大部分が企業向け(B2B)から来ていると報じられていて、個人ユーザー向けのサービス開発の優先度は相対的に低いのかもしれません。今は仕事で使えるB to B領域の研究開発のほうが優先される段階なんだろうと思います。

でも、健康管理って、すごく大きな社会課題じゃないですか。これをAIで解けるなら、社会的なインパクトは計り知れない。だからこそ、プラットフォーマーにはぜひ、B to Bと並行して、こういう個人の暮らしに寄り添う領域も頑張ってほしいなと、いち利用者として強く思っています。AIが当たり前に健康に伴走してくれる日が、早く来てほしいですね。

というわけで、今日はAIに飲み会を叱られた話から、健康管理の伴走者は誰が作るのか、というところまで歩きながら考えてみました。この記事が少しでも面白い・役に立ったと思ったら、ぜひいいねやフォローをしてくれると励みになります。それでは、また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

プロフィール詳細

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