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6次元モデル(異文化を理解するフレームワーク)ブログ個人主義(IDV)女性性・男性性(MAS)権力格差(PDI)歩きながら考える組織文化の作り方

2026.6.15

リーダーシップと組織文化を別々に考えている余裕は、もうない – 歩きながら考える vol.309

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、リーダーシップと組織文化の関係について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日も歩きながら、考えごとをシェアしようと思います。ここ3回にわたって、木崎伸也さんの『逆転監督 森保一』を手がかりに、サッカー日本代表のチーム作りとチームの文化について話してきました(①権力格差について②集団主義・個人主義について③女性性・男性性について)。

今日はそのまとめとして、この話が企業などの組織を考える上でどういう示唆を持つのか、考えてみたいと思います。

で、先に結論めいたことを言ってしまうと、リーダーシップと組織文化を別々に考えている余裕は、もうないんじゃないかと思うんです。なぜそう思うのか、順番に話していきますね。

「綱引き」が力に変わるチーム

3回を通して共通して面白いなと思ったのは、やっぱりチームの中に異なる両極の価値観が同時にあって、それが綱引きのように引っ張り合っているという点なんですよね。弦をピンと張るような、適度な緊張感がチームの中にあるのかな、と思います。

で、思うんです。この心地よい緊張感こそが、もしかしたら力に変わっていくということがあるのかもしれないなと。両極のどちらかに寄せて統一するのでも、中間で妥協するのでもなく、両方を張り詰めたまま共存させる。それが森保ジャパンというチームなのかなと感じています。

この話、実は組織文化とリーダーシップの関係について、結構大事なことを示唆しているんじゃないかと思うんですよね。

「効果的なリーダーシップ」を学べば良いリーダーになれるのか

リーダーシップって言った時に、普通はこう考えると思うんですよ。効果的なリーダーシップというものがあって、それができるようになると良いリーダーになれる、と。

実際、リーダーシップのスタイルにはいくつかパターンがありますよね。変革型リーダーシップシェアードリーダーシップサーバントリーダーシップオーセンティックリーダーシップ・・・。それぞれ一つ一つ見ると、なるほどすごくいいなと思うところがある。だからこそ、リーダーシップをどう伸ばすか、という考え方があるわけです。

でも、ですね。結局どういうリーダーシップが機能するかっていうのは、リーダー単体では決まらないんじゃないかという気がすごくするんです。

というのも、森保監督の例で見たように、選手の価値観と監督の価値観が、良い形で共存し、引っ張り合い、影響し合う。そういうダイナミクスこそが強さの秘密なのだと仮にしたら、効果的なリーダーシップというのはチーム内のダイナミクスに強く影響を受けるものであって、単独で効果をもたらすものではないかもしれないからです。そこまで言うと言いすぎかもしれないけども、少なくとも、フォロワーの価値観とリーダーシップの効果は、相互に関係するはずだと思うわけです。

つまり、文脈から切り離された「目指すべきリーダーシップ像」というのは、存在しないのかもしれない。

森保監督がやっている「共存のデザイン」

ここで森保監督の話に戻ります。

森保さんは、根本の価値観に関してはトップダウンで落とし込んでいます。「日本のために戦う。個人のキャリアだけを考えるなら、それはクラブでやってくれ」と。一方で、個々の若い選手たちは、誰であろうと自分の言うべきことはちゃんと言うという、低い権力格差個人主義的な価値観の方に慣れ親しんでいるのかもしれない。

仮にこの2つをチームの中にうまい形で共存させているのだとすると、そこには組織文化とリーダーの全体のデザインというものがあるはずなんですよね。リーダーの行動とチームの文化を、別々ではなく一体のものとして扱っているからできることだと思うんです。

だから、これからのリーダーシップの検討やトレーニングと、組織文化の検討やワークショップは、別々にやる類のものじゃないんじゃないかなと、すごく思いますね。

特に今、私はもともと製造業出身で、製造業のお客さんと色々話すので感じるんですが、中国のプレイヤーが急速に存在感で日本を凌駕しつつある状況の中で、どうやって生き延びていくのかを考えると、組織文化をどう変えるのかってすごく大事な話になってくる。リーダーシップ育成と組織文化醸成を別々にやってる余裕は、もうないんじゃないかと思うんです。

価値観は変わらない。では、どこまで変われるのか

ただし、ここで一つ大事な制約条件があります。人の価値観なんて、そんなに変わるもんじゃないということです。

だから「理想の組織文化を描いて、そこに向けて人を変える」という発想ではなくて、メンバーはどういう価値観を持っているのか、リーダーはどういう価値観を持っているのか、その中で変われる余地はどこまであるのか。できることを最大限に出し切った時にどこまでいけるのか。そういうことを丁寧に考えていくデザインが、今必要なんじゃないかなという気がしています。

ホフステードの次元は、もともと社会レベルの集団の価値観を表すものとして考えられてきました。とはいえ価値観ですから、個人の価値観というものもある。だから、同じ次元、同じ軸の上で、組織文化のデザインリーダーシップ行動のあり方を同時に考える。そんなことをやっていきたいなと思っています。

というわけで、今日は森保ジャパンのまとめとして、リーダーシップと組織文化は切り離せないという話を、歩きながら考えてみました。

この記事が少しでも面白い・役に立ったと思ったら、ぜひいいねやフォローをしてくれると励みになります。最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

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