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今日のテーマは、AIに仕事を任せるほど大事になる「仕事の意味づけ」について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は移動時間を使って、朝読んでいた論文から考えたことを話してみようと思います。テーマは、AIと一緒に働く時代に、「自分の仕事」をどう意味づけるか、という話です。歩きながら、ゆるく考えてみます。
「これ、AIにやらせた方がよくない?」が増えてきた
最近、仕事をしていて、「これはもうAIに任せた方がいいな」と思うことが加速度的に増えていませんか。私自身もそうです。定型作業や、文書のミスのチェック、文章の下書き、コードを書く人ならコードの作成まで、これまで人間がやらざるを得なかった仕事が、どんどん「AIにやってもらえばいいじゃん」という話になってきている。
で、そうなると、ふと考え込むわけですよね。「じゃあ、自分の仕事って何なんだろう」と。どこに人の仕事の価値が残るのか。これ、けっこう多くの方が感じているんじゃないかと思います。
一方で、AIとの協働には前向きな効果も報告されています。たとえば、さっき読んでいた2026年1月に出たある論文では、働く人がAIと協働することが、ワークエンゲージメント(仕事への活力・熱意・没頭)を高めることが示されています。退屈な作業をAIに渡して、人はより価値の高い仕事に集中できる。だからAIは、むしろ仕事を面白くしてくれる――という流れですね。

でも、「不安」だけが残る人もいる
ただ、現実はそんなに単純じゃないな、とも思うんです。同じようにAIが入ってきても、正反対の反応をする人がいる。「AIに仕事を奪われるんじゃないか」「自分の居場所がなくなるんじゃないか」という不安だけが残ってしまう。そうなると、エンゲージメントも幸福感も、むしろ下がっていく。
で、さっきの論文を読んでいて、ああ、そういうことかと興味深く思ったところがあります。それは、AIとの協働がエンゲージメントを高めるとき、その効果のかなりの部分が、二つの心理状態を経由しているという話。一つは、自分の仕事に意味を感じられること(仕事の有意味感)。もう一つは、自分には新しいものを生み出せるという自信(創造的自己効力感)。AIの利用がそのまま成果になるのではなく、この二つの高さと関係していて、それがエンゲージメントと関係していた、と。
ここで言えるのは、AIを導入しさえすれば自動的にうまくいく、というわけではなさそうだ、ということです。同じようにAIを使っていても、この二つの心理状態が動く人と、動かない人がいる。その差は、いったいどこから来るのか。

AIへの任せ方を決めることは、自分の仕事を意味づけし直すこと
順番に考えてみると、差を生んでいるのは、AIという道具そのものではないはずなんですよね。だって、道具は同じなのですから。違うのは、その道具を使って、自分の仕事をどう意味づけるかという、人間の側の営みのほうではないかと思うわけです。
「この部分はもう自分の仕事じゃない、AIに任せよう。その分、自分はここに集中しよう」。この判断は、AIへの上手な仕事の振り分けであると同時に、自分の仕事を意味づけし直す行為そのものなんですよね。こうやって、働く人が自分の仕事の範囲や捉え方を能動的に変え、自分なりの意味を作っていくことを、心理学では仕事の意味づけ(ジョブ・クラフティング)と呼びます(2001年にWrzesniewskiとDuttonが提唱した考え方です)。
そう考えると、さっきの研究結果ともきれいに繋がります。AIをうまく使えている人は、いつのまにか自分の仕事を意味づけし直していて、その結果として「意味」や「手応え」が生まれたということではないだろうか。研究が「効果は意味と創造的自己効力感を経由する」と示していたのは、裏を返せば、AIそのものより、それを使って自分の仕事を意味づけし直す人間の側の営みが重要なポイントになる、ということなんだと思います。

「仕事の意味づけ」は、もう全員の必修科目かもしれない
ここまで来ると、自分の仕事を意味づけし直すことは、もう一部の意識の高い人がやる選択科目ではなく、全員の必修科目になりつつあるな、と思えてきます。AIが、ほぼすべての人の仕事に及んでくるからです。
ただ、「だからみんな自分で仕事を意味づけし直そう」と言うだけだと、ちょっと突き放した感じになりますよね。「意味づけと言われても…」と。
なので私は、これは三つの層でかみ合わせる話だと考えています。まず、組織をデザインする立場のリーダーが、「これから自分たちの仕事はこの方向に向かう」「ここはAIに任せ、人はここに力を注ぐ」という大きな方向づけを示し、社内にはっきりアナウンスする。それを受けて、グループ単位で「じゃあ自分たちのチームの仕事をどう意味づけ直すか」を話し合い、さらに個人単位で「その中で自分はどこに集中するか」を考えていく。上が枠を示してくれるからこそ、現場や個人も安心して、自分の仕事を意味づけし直せるわけです。
「意味を見つけろ」と一人に丸投げするのでも、上の決定にただ従わせるのでもなく、方向づけと、現場それぞれの工夫がかみ合う形。AIをどう使うかという議論は、突き詰めると「自分たちの仕事を、これからどう意味づけ直すか」という問いとセットなのだと思います。
というわけで、今日はAIに仕事を任せる時代の「仕事の意味づけ」について、歩きながら考えてみました。AIをうまく使うことと、自分の仕事を意味づけし直すことが、実は同じ営みかもしれない――そんな視点、いかがでしたでしょうか。
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著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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