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ブログ歩きながら考える

2026.4.21

リーダーシップに『文化の正解』はあるのか? – 歩きながら考える vol.274

渡邉 寧 | 京都大学博士(人間・環境学)

今日のテーマは、就活でのAI面接について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは。今日は移動時間を使って、最近取り組んでいるリーダーシッププログラムの話をしてみようと思います。以前から異文化対応のマネジメントのプログラムはやってきたんですが、今回は「リーダーシップのあり方自体が文化によって変わってくる」という切り口でプログラムを作り直していて、これがなかなか面白いんですよ。歩きながら考えてみます。

『良いリーダー』には文化を超えた共通項がある

まず最初に、「文化が違えばリーダーシップは変わるのか?同じなのか?」という問いの話から。

これを考える上で参考になるのが、ロバート・J・ハウスという研究者が1991年に立ち上げたGLOBE(Global Leadership and Organizational Behavior Effectiveness)っていう有名な研究プロジェクトです。ハウスは異文化環境におけるリーダーシップを研究しつつ、ホフステードとは異なる文化次元モデルを作り研究をした人です。

で、この研究では112のリーダー属性・行動を、6つのグローバル・リーダーシップ次元に集約して分析しています。そして興味深いのが、このうち「カリスマ/価値ベース型」「チーム志向型」の2つは、例外はあるものの、文化横断的に有効で特に効果が高いとされてます。

つまり、「良いリーダー」の抽象的なイメージには、文化を超えた共通項が確かにあるということになりますね。ビジョンを示す、情熱を持つ、チームをまとめる——こういう要素は、国や文化が違ってもだいたい「いいリーダーだよね」と認識される。この意味で、リーダーシップに『文化の正解』はある、と言えるわけです。

でも、同じ『歴史を語る』が、アメリカと中国では全然違うかも

ただ、ここからが本題で。例えば「カリスマ的リーダーシップが文化横断的に有効」と言われても、具体的にどう振る舞えばいいのかは分からないんですよね。

ここで参考になるのが、カリスマ的リーダーシップが具体的にどんな行動として発現するのかを示した研究で、これは別の研究者とハウスたちが1993年に発表した古典的な論文です。ここでは、カリスマ的リーダーの発言や行動を6つの要素にまとめていて、カリスマ的リーダーシップの解像度がぐっと上がって、具体的に何をすればいいかがより明確に考えられるようになるんですよ。で、その6つの要素の1つに「歴史への言及」というものがあるんですね。

で、ここで面白いのが、「歴史を語る」という具体的な行動レベルに降りてくると、文化によって発動の仕方が全然違うんじゃないかということ。

例えば、ホフステードの文化次元で見ると、アメリカは短期志向で個人主義ですよね。だから、「我が社の50年の歴史が…」みたいな話をしても、「自分とは関係ないな」と感じられて響かないかもしれない。むしろ、「先期、我々はこういう実績を上げた。だから今期も必ず達成できる」みたいに、直近過去の成功体験をリーダーが語った方が聞いている方としては響く可能性があるわけです。

一方で、中国は長期志向で集団主義。そうなると、「我々の工場は50年前、何もない漁村に作られた。先輩たちの工夫と努力で、今や世界に部品を輸出する工場になった。我々はこの流れを受け継ぎ、50年後の後輩たちが誇れるものを作っていくのだ」みたいな、過去から未来までの長い時間軸を貫くスピーチの方が、メンバーの一体感や使命感を呼び起こすかもしれない。

同じ「歴史を語る」というカリスマ的行動でも、アメリカ版と中国版では発動の仕方が全く違う可能性が有るわけです。さらに言えば、同じ文化の中でも、業界や組織、相手によって無数のバリエーションがあり得る。つまり、次元レベルで「共通」と出たからといって、具体的な行動レベルで見ると「だいぶ違う」ということがあり得る。ここが面白いポイントなんですよね。

じゃあ、どう考えればいいのか

「文化ごとに無数のパターンがあるから、結局ケースバイケース」で終わってしまうのかというと、そうでもないと思ってるんですよ。

僕が今プログラムで考えているのは、普遍的なフレームワークでリーダーシップの骨子を押さえた上で、それを文化次元に照らして具体的な発言やスピーチのレベルまで想像してみる、というアプローチです。

たとえば「カリスマ/価値観ベースのリーダーシップを発揮するには、歴史に言及し、集団としてのアイデンティティを呼び起こし、遠い未来のビジョンを示し、メンバーに高い期待を表明する必要がある」というところまでは、理論から骨組みが作れる。その上で、「長期志向の文化ではどういう時間軸で語るか」「個人主義の文化ではどこに主語を置くか」みたいな問いを立てて、実際のスピーチやフィードバックのレベルまで書き出してみる。

このシナリオとして書き出す作業が、実はすごく意味があるなと思っていて。「中国チームに対して自分はどうスピーチするか」を具体的に書いてみると、自分の普段のやり方がいかに自文化に根ざしていたかが見えてくるんですよね。普遍的な理論と文化次元を組み合わせるだけじゃなくて、そこから先の「具体化」を自分でやってみる。この一手間があるかないかで、グローバル環境での振る舞いの幅がかなり変わってくるんじゃないかと思っています。

だから、最初の問いに戻ると——リーダーシップに『文化の正解』はある。ただし、正解は一つとは限らない。そして、その正解を探す考え方の筋道は、ちゃんと引ける。これが僕の答えです。

まとめ

というわけで、今日は「リーダーシップに文化の正解はあるのか」というテーマで歩きながら考えてみました。普遍と個別のあいだをどう行き来するかって、リーダーシップだけじゃなくて色んな場面で使える思考法じゃないかなと思います。今作っているプログラムは一般の企業向けにも展開していこうと思っているので、進捗はまたちょいちょいアップデートしていきます。

この記事が少しでも面白い・役に立ったと思ったら、ぜひいいねやフォローをしてくれると励みになります。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

著者プロフィール

渡邉 寧YASUSHI WATANABE

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら

プロフィール詳細

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