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今日のテーマは、就活でのAI面接について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は移動時間を使って、ちょっと気になっていることを話してみようと思います。今朝の日経新聞で、就活でAI面接を使う企業が今年激増しているっていう記事を読んだんですよね。以前、AIが新人の仕事を奪う未来について書いたことがありましたが、採用面接そのもののAI化がかなり進んできている。ちょうど面白いポイントがあったので、歩きながら考えてみます。
学生の約8割が「AI面接で受験意欲が下がる」
まず記事の内容から。対話型のAIが学生に「困難な出来事にどう対処したか」みたいな質問をして、回答に応じて追加質問して、採点していく。航空・金融・飲食の大手企業や自治体まで、今年3月時点で導入が1,000社を超えたそうです。NTTドコモやキリンホールディングスも既に使い始めている。
ただ、これに対して学生側は相当ネガティブみたいなんですよね。マイナビが2026年卒の1,385人に行った調査によると、AI面接は「受験意欲が下がる」と答えた学生が77.5%。理由として多かったのは「人に評価してほしいから(41.2%)」「AI(機械)に判断されたくないから(38.2%)」だったとのこと。
で、これ読んでて、僕はちょっと引っかかったんですよ。というのも、僕自身は今、真逆の感覚を持っているからなんですよね。

僕はむしろAIに評価されたい
何の話かっていうと、研究論文の査読のこと。
研究者は論文を書いて学術誌に投稿するんですが、正直言って、少なくとも最初のエディター判断はAIにやってほしいんですよ。
なんでかっていうと、人間が査読するとクオリティが安定しないからです。このご時世、論文の投稿数が爆発的に増えていて、一人の査読者が1日にそんな何本も真剣に読めるわけがない。集中力にも限界がある。自分の論文が、本当に正当に読まれたんだろうか、ちゃんと向き合ってもらえたんだろうか、っていう懸念が、人間に評価されるとどうしても残ります。「これ、読んでないだろ」みたいなコメントで却下の返信が来ることもしばしば。
でも、AIにはその懸念がない。疲れないし、気分にも左右されない。全員を同じ注意深さで見てくれる。
で、ここで気づくわけです。学生と僕、同じ「評価される側」なのに、感覚が真逆。じゃあ、これってどう整理すればいいんだろう、と。
「人に評価してほしい」という期待の内側にあるもの
考えてみると、学生の「人に評価してほしい」という気持ちの裏には、「人間ならちゃんと見てくれる」という前提があるんじゃないかと思うんですよ。
就活って、多くの人にとって人生で初めての本格的な評価体験なのかもしれないですよね。紙の試験で点数が出るんじゃなくて、その場のやりとりで受かるか落ちるかが決まる。しかも、やたらとたくさんの面接を受けることになる。初めての経験だから、「ちゃんと見てもらいたい」という期待を持つのは自然なこと。紙の試験だったらその前提を疑う人はあんまり居ないですね。
一方、僕はこの歳になると、人から評価されたり酷評されたりする経験もそれなりに溜まってきている。論文の査読もそうだし、仕事の提案が通らなかったり、プレゼンの反応がイマイチだったり。ものすごく良い評価も、こちらが驚くくらい辛い評価も、両方経験する。で、経験のばらつきが大きくなってくると、「人からの評価って、けっこう当たり外れがあるよな」という感覚になってくるんですよね。「まあ、相性もあるしな」くらいの距離感。そうなってくると、人の評価に対してあんまり過剰な期待をしなくなる。
で、これが面白いなと思うのは、企業側の課題の一つもまさにここなんですよ。日経の記事でキリンホールディングスの人財戦略部の方が「面接担当者に研修をしても、人によって質問が違い、好き嫌いが出てしまうのが課題だった」って言っているんですね。つまり、企業は「人間の評価者の限界」を実感として知っているから、AIに切り替えようとしている。

AIは「極端な当たり外れ」を減らす
じゃあ、AI面接はどう考えるべきか。
僕は基本的にAI面接には賛成派なんです。理由は二つあって、一つは今話した面接官側の話、もう一つは学生側の話。順に話します。
まず面接官側。人を評価するって、実はすごく高度なスキルで、ちゃんとトレーニングを受けていないと難しい仕事だと思うんですよね。でも現実には、「この人が面接官?」みたいなケースが、どの会社でもある程度発生してしまう。評価スキルが十分に育っていない人が面接官として出てきて、的外れな質問をしたり、自分の好みだけで判断したり。学生からすると、面接官ガチャで人生が左右されるような状態になっている。
AIを使うと、こういう極端に当たり外れの大きいケースが最小化されるんですよ。すべての面接官をAIにすれば当然ゼロになるし、一次面接だけAIにする設計でも、「明らかにやばい面接」を受けさせられるリスクは大きく下がる。これは学生にとってもメリットがあるはずなんです。
もう一つの理由:学生側のAI使用をフラットにできる
で、二つ目が学生側の理由。これが今の時代、実は大事なポイントだと思うんですよね。
さっきのマイナビ調査をもう少し見ると、2026年卒の学生の82.7%がAIの利用経験があり、就職活動でも66.6%がAIを使っている。最多の用途はエントリーシートの推敲で68.8%。つまり、大半の学生がエントリーシートをAIで磨いているわけです。
そうすると、事前に準備したものを提出させて評価する方式って、もう「本人の力」と「AIの力」が切り分けられないですよね。出てきたアウトプットは、本人とAIの合作になっている。しかも、AIをどこまで使いこなしているかは学生によってバラバラだから、評価している対象そのものがブレている。Aさんは本人の実力に近いものを出していて、Bさんはほぼ全部AIが書いている、なんてことが平気で起こる。これ、評価として成立してないですよね。
そして、これからの時代は「生身の評価」がすごく大事になる。AIを使うのは当たり前で、どういう人がどのようにAIを使うかが、仕事のアウトプットに影響してくるので、「どういう人」なのかというところをちゃんと見たい。その場で、AIの助けなしに、どう考えて、どう答えるか。それを全員に同じ条件で見るには、口頭試問をやるしかない。でも、全員に対して人間が口頭試問をやるのは人件費的に無理。だからAIを使う。筋が通っている話です。

学生が嫌がっているのは、AIそのものじゃないのかもしれない
で、最初の話にもう一度戻ると、学生の77.5%がAI面接で意欲を下げている。人間評価への期待値の話をしましたが、ほかにも理由はありそうです。
具体的には企業がなぜAI面接を使うのか、その理由によって、学生の受け取り方は変わるんじゃないかと。
ただのコスト削減目的でAIを使っているなら、学生の「丁寧に扱われていない」という感覚は、実は正しい読みなんですよ。評価者を揃えたり育てたりするのは大変で、そこを削るために投げている、というだけの話なら、学生は企業側の意図をちゃんと読み取っている。
一方、「面接官ガチャをなくしたい」「生身の実力を評価したい」「全員に平等な口頭試問の機会を作る」という明確なビジョンがあってAIを使っているなら、それは学生にとってもメリットがある話になる。同じAI面接でも、背景にある意図によって意味が変わる。
学生の意欲を下げているのは、実はAIそのものじゃなくて、「なぜAIを使うのか」の説明を省略する企業の姿勢なのかもしれない。そんなことを考えながら、歩いていました。
まとめ
というわけで、今日は「AI面接って学生が嫌がっているけど、僕はむしろAIに評価されたい」という話から、歩きながら考えてみました。評価する側とされる側、そしてその間にある期待のズレって、なかなか興味深いテーマだなと思います。
もし、この話について何か思うところがあったら、ぜひSNSで感想を聞かせてください。この記事が少しでも面白い・役に立ったと思ったら、ぜひいいねやフォローをしてくれると励みになります。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!
著者プロフィール
渡邉 寧YASUSHI WATANABE
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い。 経歴と研究実績はこちら。
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