■仕事の意義と幸福度

あなたは自分の仕事に意義を見出しているだろうか？

日本のミドル男性に「自分と同じ職業に子供に就いて欲しいか？」と聞くと、75％の人が「いいえ」と答えるそうです。その理由は金銭的なものなのかもしれないし、子供は子供で好きなことをやれば良いというポジティブなものなのかもしれません。ただ、日頃聞かれる仕事への不満を考えるに、おそらく自分が意義を見出せていない職業を子供に勧めることはしない、という理由が大半なんだと思います。

1日8時間働くとすると、8時間睡眠で起きている時間の半分は仕事をしていることになります。それが40年続く。人生の大半を費やしている仕事に意義を見出せないとしたら、こんなに悲しいことはありません。

2013年に発表された国連の「世界幸福度報告書」では、日本の幸福度は43位だったそうです。ちなみに、上位10か国は下記の通り。東アジアは全体的に幸福度が低いのですが、他の東アジアの国々が昔よりも若干幸福度が上がっているのに対して、日本は低下傾向にあるそうです。

＜2010-2012世界幸福度ランキング上位10か国＞

1.デンマーク
2.ノルウェー
3.スイス
4.オランダ
5.スウェーデン
6.カナダ
7.フィンランド
8.オーストリア
9.アイスランド
10.オーストラリア

ハンガリー出身のアメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイはフローの概念の中で、「仕事は本質的にフロー状態を作りやすく、人生の幸福に貢献しやすい活動だ」と述べました。人生における仕事の位置づけを見直し、取り組み方を変えることは、日本人の幸福を考える上で非常に重要です。

「何のために仕事をするのか」と問われれば、最初の答えは「お金を稼ぎ生活を安定させるため」ということになるでしょう。しかし、仕事をする理由はそれだけには留まりません。マズローの欲求5段階説で言うところの「①生理的欲求」、「②安全欲求」を超えて、仕事を通じた社会での「③所属と愛」、「④承認の欲求」を満たすものでもあります。また、「⑤自己実現の欲求」にも繋がるものでもあります。

「何のために仕事をするのか」と問うことは、すなわち「どのような仕事に、あなたは金銭を超えた意義を見出すか？」ということを問うことでもあります。

■天職を見つけるための3つの質問

では、どのような仕事に就けば、人は「意義深い仕事を行っている」と感じるのでしょうか？

経営学のキャリア論で有名なMITのエドガー・シャインは、仕事の選択・棚卸をする上で答えるべき3つの質問を提示しました。その3つの質問とは、

「自分は何が得意か」
「自分はいったい何をやりたいのか」
「どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるか」

です。

シンプルな問いですが、質問されると考えこんでしまう深さを持った問いだと思います。これら3つの問いには同時に答えを出すことが重要です。どれか一つが欠けてもいけません。

人は仕事を通じて自分の能力を発揮し、発達させ、思い描く何かを実現させていきます。そしてそれが社会との繋がりを作っていく。「意義深い仕事」を探す上で考えるべきことは、「何が出来るか」だけでも「何をしたいか」だけでも「何が社会の役に立つか」だけでもありません。その３つが重なった部分に何があるのかを目を凝らして見つめることが重要です。

「何のために仕事をするのか？」そんな問いが心に浮かぶのであれば、ちょっと立ち止まって自分にとっての仕事の意義を考えなおしてみることをお勧めします。簡単には答えの出ない問いですが、確実に答えは存在します。焦らず、じっくりと、ただし深く深く考えていくことで、ある日「はっ！」と気づくタイミングが訪れます。